作成日
:2020.01.29
2021.08.31 15:33
イングランド銀行(Bank of England)のFinancial Market Infrastructure Directorateでエグゼクティブディレクターを務めるChristina Segal-Knowles氏は、同行の金融政策委員会(Financial Policy Committee)【以下、FPCと称す】がステーブルコインによる決済を規制すべきだと発表したことに対し、今月23日のスピーチでそれに賛同する意向を示した。
昨年末にイングランド銀行は、ステーブルコインを利用した決済システムに既存の規制基準を適用することを決定しており、当局が送金や決済などのトランザクションを監視するための体制を整えようとしているという。イングランド銀行は、クレジットカード決済やオンラインバンキングサービスなどの規制された金融インフラ外でステーブルコインが利用される可能性があることを懸念し、このような判断を下したようだ。
Segal-Knowles氏は、このことに関してカフェでの支払いを例に次のようにコメントしている。
将来的に携帯電話をタップするだけで、ステーブルコインを介してカフェでの支払いが可能となれば、私はその方法を決済手段として利用するでしょう。しかしながら、それは銀行やクレジットカード、デビットカードに依存しない決済手段が普及することを意味しています。もし、ステーブルコインを決済に利用する場合は、他の方法と同様に規制する必要があるのです。どのテクノロジーを利用しているかは無関係であり、同じリスクには同じ規制を適用すべきでしょう。このイノベーションを後退させないためには、歩調を合わせた規制環境の構築が求められます。
Christina Segal-Knowles, Executive Director at Financial Market Infrastructure Directorate - Bank of Englandより引用
昨年12月に公開したレポートでFCPは、規制や運用基準が確立されていない決済システムは、企業の経済活動に支障をきたすだけでなく、実体経済に対してリスクをもたらす可能性があると警告している。また、そのレポートの中でFCPは、ステーブルコインを利用した決済システムおよび運用企業に従来の基準で同等の規制を適用することに加え、その仮想通貨が安定した価値を維持し、法定通貨に償還することが約束されている必要があると説明した。Segal-Knowles氏はFacebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)のようなステーブルコインが急速に普及すると予想しており、英国はこのイノベーションを受け入れるべきだと言及しているが、最終的に当局はどのような規制を構築するのか、今後も同国での動きに注目していきたい。
release date 2020.01.29
昨年、英国ではFCAがリブラの詳細情報を求めるなど、当局は世界的なステーブルコインのローンチが現実味を帯びてきたことへの危機感を露わにしていたが、2020年に入って仮想通貨市場に対するアプローチが変化しつつあるようだ。先日、イングランド銀行のMark Carney総裁は、仮想通貨規制に向けてWEFが国際コンソーシアムを結成したことに賛同し、仮想通貨の受け入れに前向きな姿勢を示している。これに足並みを揃えるかのように、ECBは独自仮想通貨の開発活動拡大を検討しており、欧州全域での本格的な仮想通貨の普及を見越した取り組みが活発になってきている様子がうかがえる。今年は中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)を含めて仮想通貨市場に大きな動きがあると予想されるが、英国政府がその実態に即した規制を設けることに期待したい。
作成日
:2020.01.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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