作成日
:2020.01.10
2021.08.31 15:33
欧州中央銀行(European Central Bank)【以下、ECBと称す】のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、フランスのビジネス紙が企画したインタビューで、ECBが中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】の開発活動を拡大することを検討していると言及した。
ラガルド総裁は、CBDCが金融業界や各国の金融政策に大きな影響をもたらす可能性があると述べた上で、企業や個人がCBDCを国際送金に利用するメリットと、その実現可能性を引き続き検証していくべきだとの方針を示している。これに加えて、ラガルド総裁は中央銀行のイニシアチブが民間企業のソリューション開発を妨げたり、迅速かつ効率的な決済システムの導入を阻止すべきではないとの考えを伝えた。先月、ECBは仮想通貨タスクフォースを結成し、ユーロ圏内の中央銀行と連携して、CBDC発行の費用対効果を推し量ろうとしているという。
昨年6月にFacebookがリブラに関する詳細を公開して以降、中国人民銀行(People's Bank of China)がデジタル人民元の発行に向けた取り組みを加速させるなど、世界的にCBDCに対する注目が高まっている状況である。今の所、ほとんどの中央銀行が仮想通貨とCBDC、法定通貨の関係性が排他的かつ敵対的であると認識しており、イングランド銀行(Bank of England)のMark Carney総裁は、複数の法定通貨に裏付けられたCBDCが米ドルに取って代わる存在になり得ると発言している。一方、IMF(国際通貨基金)のチーフエコノミストであるGita Gopinath氏は、CBDCを含む仮想通貨は鍵となるインフラが整備されておらず、普及に向けたサポートが欠けていると主張している。
金融インフラという観点からラガルド総裁は、仮想通貨が従来の金融システムが抱える問題の改善策になり得ると述べたものの、それには新たなリスクも伴う可能性があると警告している。ラガルド総裁は、Facebookのリブラ(Libra)が市場を独占した場合、同社が不当な優位性を得ることができるとの懸念を表明しているが、ECBはどのような動きに出るのか、今後もその取り組みに注目していきたい。
release date 2020.01.10
近年、欧州ではGAFAと呼ばれる米IT大手4社をターゲットとした規制が進んでおり、個人情報保護法の強化やGAFA課税が導入されるなど、欧州市場の独占を阻止するような動きが活発になっている。当初、仮想通貨に対して敵対的だった欧州諸国も、Facebookによるリブラのローンチに備え、例えば、スウェーデン国立銀行はアクセンチュアと協業し、イークローナ(e-Krona)と呼ばれる独自仮想通貨の発行を模索している状況だ。また、ECB理事も仮想通貨普及に前向きな発言を行なっており、現金が利用されなくなったとしても、中央銀行主導の金融システムは継続するとの見解を示した。世界的なステーブルコインの登場がすぐそこまで迫っているため、この流れを回避することはほぼ不可能な段階まできているが、最終的に、ECBおよび欧州各国の政府はどのような判断を下すのか、今後も欧州市場の動向を見守っていきたい。
作成日
:2020.01.10
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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