作成日
:2020.01.17
2021.08.31 15:29
1月15日、米中両国が貿易交渉を巡る第一段階の合意
に達したものの、グローバル投資家は、依然として貿易問題に関して懸念を抱いている模様だ。HSBCグローバル・アセット・マネジメントのグローバルチーフストラテジストであるJoseph Little氏は、貿易問題に絡む国際間の緊張は完全には解消されていないという。米国と他の世界貿易機関(World Trade Organization, WTO)加盟国が対立し、貿易環境が安定的でないことから、投資家にとってはリスク要因になっているとのことである。
貿易だけでなく、政治、経済、環境などを巡る行先の不透明感は、様々な金融商品の収益性を限定的なものとしている模様だ。Little氏は、今後グローバル経済が一体となって成長し、証券市場が高い収益性を上げることに確信を持つのは難しいという。2020年の米国株式市場は、6%から7%の成長を見込んでいる。アセットアロケーションを担う同氏は、PER(株価収益率)などの株式取引動向を重視しておらず、足元の収益機会に注目しているとのことだ。仮に債券を主体とするポートフォリオで、4%から5%を超える収益を上げられるのであれば、現在のマクロ環境や投資環境を鑑みると、さほど悪くない投資機会だという。
米国以外に目を向けると、Little氏は製造や貿易指標のいくつかに改善が見られることから、米国の多国籍企業に恩恵があると指摘している。特に、中国や韓国、台湾、日本といった東アジアに投資機会があると見込んでおり、同エリアへ出張した際、投資家は警戒感を持っているものの、相対的なバリュエーションはかなり割安に見えるという。一方で、過去2年間高い収益性を誇った債券に関しては、多くの債券関連商品のバリュエーションが毀損していることから、慎重な姿勢を示している。足元のインフレ指標が示す通り、物価の上昇圧力は強まっておらず、インフレリスクは市場で大きな懸念材料になっていないとのことだ。投資家にとって、今後物価が上昇し、国債金利が高まる状況下において、如何に対応するかが課題だとコメントしている。尚、Little氏はコモディティに関して、金がヘッジ目的として懐疑的だとする一方で、スポット価格が先物価格よりも高くなる逆日歩の状態である原油に関しては、バリュエーション面のサポートとグローバル経済への高い感応度から、強気の姿勢を示している。米中貿易交渉に進展が見られたものの、依然として米国とグローバル各国との貿易摩擦は、完全には解消されていないことから、引き続き貿易面の軋轢からFX市場のボラティリティが高まる場面が見られそうだ。
release date 2020.01.17
グローバル経済において、相対的に高い成長が期待されている東アジア市場では、多くの海外FXブローカーがサービス強化を図っている。たとえば、野村證券の中国合弁はライセンスを取得し、同国でブローカレッジサービスを始めとする包括的な金融サービスを提供していく意向だ。中国に関しては、上海・ロンドンストックコネクトが開始されたことで、英中両国間のクロスボーダー投資も活性化している状況だ。また、Admiral MarketsがMT5上で日本株取引を開始するなど、日本市場をターゲットにしたサービス展開を図る海外FXブローカーも散見されている。グローバル顧客獲得競争が熾烈を極めるなか、各海外FXブローカーは、多様な顧客ニーズを包括的に満たすべく、マルチアセットクラスの商品ラインナップ体制の構築を推し進めている。このような市場環境下において、投資家需要があり、尚且つ高い収益性を期待できる東アジア市場をターゲットとした商品拡充や新たなソリューションの提供が続くと予想される。
作成日
:2020.01.17
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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