Select Language

ESMA、信用格付機関と取引情報蓄積機関に関するフォローアップレポートを公表

ESMA、信用格付機関と取引情報蓄積機関に関するフォローアップレポートを公表

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2021.08.31 15:29
ESMA、信用格付機関と取引情報蓄積機関に関するフォローアップレポートを公表

update 2021.08.31 15:29

両機関に対し、コストの記録やモニタリングなどの改善を要請

欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は、信用格付機関(Credit Rating Agency)【以下、CRAと称す】と取引情報蓄積機関(Trade Repository)【以下、TRと称す】の手数料に関するフォローアップレポートを公表した。[1]

同レポートにおいて、ESMAはCRAに対し、手数料体系構築プロセスの透明性を高めると共に、裁量余地がなく実際のコストに基づくスキームの確立を求めている。また、CRAはサービス提供に係るコストに見合った手数料を提示するために、コストの記録及びモニタリングを実践しなければならないという。その際、CRAはカテゴリー別で詳細にコストのモニタリングを行うと共に、定量化できないコストも手数料設定プロセスにおいて考慮すべきであるとのことだ。更にESMAは、CRA各社のウェブサイトのアクセス向上と、規制目的の制限なくユーザビリティの改善を図ることに加え、格付情報の公表の管理を徹底する必要があると指摘している。

また、ESMAはTRに対し、欧州市場インフラ規則(European Market Infrastructure Regulation, EMIR)とESMAが求める基準を満たした手数料体系の構築を求めている。TRがコストに基づく手数料を提示するため綿密に手数料上限をチェックすると共に、定期的に文書によるコストのモニタリングを行うとのことだ。更に、ESMAはCRAとTRに対し、エンドツーエンドの手数料設定とコストモニタリングプロセスの監督フレームワークの構築と、コンプライアンスや内部監査などを通じた積極的な監督機能の実践を求めている。

一方でESMAは、両機関による透明性ある手数料体系の構築に向けた改善例も公表している。CRAの既存及び見込み顧客に対する、手数料の透明性確保やディスクロージャー面での施策を挙げ、CRA関連規制を遵守した手数料体系の改定とウェブサイトでの公表、より詳細な手数料表及び体系の簡素化や標準化、手数料見積もりツールやオンライン手数料計算機能などの提供、スタッフの教育などで改善が見られるという。また、コストモニタリングや手数料設定に関しては、規制を遵守し統制のとれた手数料プロセスを実践するうえでのポリシーや手続きの確立に加え、ガバナンスの強化、コストに基づく明瞭な手数料表の提示がなされているとのことだ。更にCRAへのアクセスやユーザビリティについては、CRA各社がウェブサイトを内部もしくは規制レポーティング目的で利用する一方で、CRA関連の情報サービス会社からサービス提供を受ける顧客に対しては、規制レポーティングの際に情報の使用料を課していないと指摘している。

また、TRは全てのサービスに関連した手数料表の提示や料金改定の事前通知、顧客フィードバックなどを通じて透明性のある手数料体系を適用しているという。加えてESMAは、TRが作業量に応じて手数料を定めた固定型手数料上限スキームや、アセットクラスもしくはサービスにより手数料が変わる変動型手数料上限スキームに改訂すると共に、手数料設定プロセスを監督する専任スタッフの設置などが実践されていると指摘している。

レポートの公表に際し、ESMAの局長を務めるSteven Maijoor氏は以下のようにコメントしている。

CRAとTRは、透明性ある手数料の提示や設定及びコストモニタリングプロセスにおいて改善が見受けられます。しかしながら、コストの記録やモニタリング、コストに基づく手数料の提示などの面で更なる改善が求められているほか、CRAに対しては、アクセスとユーザビリティの向上を期待しています。我々は投資家保護と安定的で秩序ある欧州市場の構築に寄与すべく、両機関の課題解決に向けた法令遵守の取り組みを一貫して行うために、進捗状況を監督していく考えであります。

Steven Maijoor, Chair of ESMA - ESMAより引用

なおESMAはフォローアップレポートを補うべく、両機関の手数料に係る顧客の要望や更なる改善箇所に関するファクトシートも公表している。

今後に関してESMAは、CRAとTRが規制を遵守した形で、手数料体系とその評価システムを運用しているか否かモニタリングするほか、CRAへのアクセス及びユーザビリティの向上に向けた監督業務を遂行していく見通しだ。

release date 2019.12.24

出典元:

ニュースコメント

健全で強固な欧州金融市場の構築を目指すESMA

ESMAは厳格な監督フレームワークを構築し、透明性が高く強固な欧州金融市場の形成に向け、様々な規制策を講じている。今回CRAとTRに対し、よりシンプルで明瞭な価格体系の構築を求めるほか、ESMAを始めとするESAがAML及びCFT関連のガイドラインを公表し、欧州初のコンプライアンス専門監督カレッジの創設などを提案している。また、ESMAはエクイティ性商品に統合テープの導入を推奨していることに加え、ESMAはECに第三国CCPの監督スキームを提案するなど、矢継ぎ早に新たな規制策案を打ち出している状況だ。これらのことから、権限強化を図るESMAが欧州全域にわたる統一監督スキームの構築に向け、海外FXブローカー各社への影響を強めていると推察される。他方で、サクソバンク証券がTorstoneと提携しクラウドベースの規制対応レポーティングの実践を試みているように、目まぐるしく変化する規制環境下への対応を図る海外FXブローカーとレグテック企業による提携動向にも注目したい。


Date

作成日

2019.12.24

Update

最終更新

2021.08.31

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨SOLVの将来性は?ビットコインのステーキングプロトコルSolv Protocolを解説

仮想通貨(暗号資産)SOLVは、ビットコイン(BTC)のステーキングプロトコル「Solv Protocol」のネイティブトークンです。当記事では、仮想通貨SOLVの特徴やSNSでの評判、将来性、トークンの使い道などを解説します。
update2025.01.10 19:30

GMOコインからBybitに送金してみた!送金手数料や最低送金額なども解説

Myforex編集部では、GMOコインからBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.12.24 19:30

bitbankからBybitに送金してみた!トラベルルールの対応状況も解説

Myforex編集部では、bitbank(ビットバンク)からBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.11.28 19:00

【無料ツールも】MT4/MT5で複数チャートを同期スクロールし、分析を劇的に変える方法!

MT4/MT5ではインディケータを使うことで複数チャートを同期してスクロールできます。この記事ではMT4/MT5の複数チャートを同期してスクロールできるインディケータについて、実際に使ってみた感想も交えながら紹介していきます。
update2024.11.07 19:00

コインチェックからBybitに送金してみた!送金手数料や反映時間についても解説

コインチェック(Coincheck)からBybitに仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験やSNSでの口コミなども交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.11.29 19:00

Bybitからbitbankに送金してみた!送金手数料やトラベルルールについて解説

Myforex編集部では、Bybit(バイビット)からbitbank(ビットバンク)に仮想通貨(暗号資産)を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験をもとに、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.12.27 19:00

初心者でも安心!MT4ストラテジーテスターの使い方完全ガイド ~EA活用とバックテストで一歩先のトレードへ~

MT4でEAを使って自動売買をするならストラテジーテスターにより利益が出るかテストが必要です。本記事では、ストラテジーテスターの実践的な使い方や疑問を感じやすいポイントを解説します。
update2025.01.10 19:00

MT4/MT5でも日本時間を簡単に表示できる!日本との時差については図解で理解しておこう

MT4/MT5では通常、表示される時間が日本時間から6時間ほどずれています。頭の中で「表示される時間 + 6時間」などと計算すれば、日本時間に変換可能です。しかし慣れないうちは少し不便なので、日本時間を表示させる外部ツールも活用されています。
update2024.11.27 19:30

SONYのレイヤー2「Soneium」がIP侵害を理由にミームコインをブラックリスト化

ソニーグループによるイーサリアムレイヤー2のSoneium(ソニューム)が、メインネットローンチの同日に、IP侵害のあるミームコインをブラックリスト化し、SNSで話題となっています。本記事では、Soneiumの概要やブラックリスト化の内容、SNSでのユーザーの声などを解説します。
update2025.01.17 19:00

仮想通貨USUALの将来性は?RWA活用のステーブルコインプロトコルを解説

仮想通貨USUALは、ステーブルコインプロトコル「Usual」のガバナンストークンです。Usualは、BlackRockなどからRWA(現実資産)を集約してステーブルコインを発行し、その収益をコミュニティに再分配するプロトコルとして注目を集めています。
update2024.11.20 20:00
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル