作成日
:2019.12.17
2022.01.24 17:27
欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority, ESMA)と欧州銀行監督機構(European Banking Authority, EBA)及び欧州保険年金監督機構(European Insurance and Occupational Pensions Authority, EIOPA)の3つの欧州監督当局(European Supervisory Authorities)【以下、ESAと称す】は12月16日、欧州で初となるAML(アンチマネーロンダリング)とCFT(テロ資金供与対策)専門の監督カレッジの設置や、各国当局間の効果的な協働及び情報共有を行うための共同ガイドラインを公表した。
昨今、金融犯罪がボーダレス化するなか、AML及びCFT関連事案において、複数の国をまたいで事業展開する金融機関のコンプライアンス担当監督者がEU各国当局と効果的にコミュニケーションをとれていないため、長期間にわたり深刻なコンプライアンス不備が生じていると、ESAは指摘している。そこで欧州当局は、クロスボーダーでサービスを提供する金融機関の拠点となる該当国のコンプライアンス担当監督者が、適切で効果的なAML及びCFT関連の監督を行うべく、公式に協働する体制を構築するためのガイドラインを策定したとのことだ。
これらのガイドラインは、AML及びCFT関連の監督カレッジの創設や運営を統括するルールを規定しており、3か国以上で事業を行う金融機関の事案に対応する際に同カレッジの設置を求めている。監督カレッジは、該当の金融機関を担当するコンプライアンス監督者だけでなく、プルーデンシャル規制に対応する監督者や第3国のAML及びCFT関連の監督者などで構成されることになるという。これにより、全ての監督者が該当する金融機関の包括的な情報へのアクセスが可能となるほか、その情報をもとにしたリスク査定や監督業務を行うことができるようになるとのことだ。また、監督カレッジは協調対応を含むコモンアプローチの採用を承認する見通しである。なお、ガイドラインには、AML及びCFT関連の監督カレッジの設置基準に該当しない場合における協調監督体制の構築についても言及している。
増加する金融犯罪の阻止に向けて、欧州各国当局がどこまで連携して強固な汎欧州監督体制を構築できるか、今後の動向を見守る必要がありそうだ。
release date 2019.12.17
監督カレッジは、クロスボーダーで金融取引サービスを提供する金融機関に対し、該当の金融機関が拠点とする国の監督当局だけでなく、関係する複数の国の当局が一体となって監督を行うための仕組みである。今回、ESAが提案した監督カレッジは、AMLとCFTに特化したものといえるであろう。日本では、金融庁が世界中にネットワークを張り巡らせている三大メガバンク等に関して監督カレッジを設置している。また、世界的に金融犯罪が多発するなか韓国議会が仮想通貨関連法案を可決するなど、足元では各国ベースでも規制を強化する動きが目立っている。更に、企業レベルにおいても、JPモルガンチェースが新決済ネットワークをリリースする予定であるほか、MetaQuotesがMT5とSumsubのKYC機能を統合するなど、多岐にわたる規制に対応すると共に、AMLやKYCプロセスの効率化を図るソリューションを提供する金融サービスプロバイダーが増加傾向にある。官民が一体となって効果的なコンプライアンス体制を構築し、いち早く安心・安全な取引環境を整備されることを期待したい。
作成日
:2019.12.17
最終更新
:2022.01.24
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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