作成日
:2019.12.17
2021.08.31 15:29
ステーブルコインを手がけるTether Limited【以下、テザー社と称す】は、ビットコイン(Bitcoin)プロトコルを基礎とする仮想通貨プラットフォームであるOmniの開発を支援し、新しいバージョンのクライアントソフトをリリースしたことを発表した。
この新しいバージョンのソフトウェアはOmni Core 0.7.0と呼ばれ、トランザクションに対するインデックス作成の高速化および分散型取引所(DEX)の構築など、主要なアップデートが施されているという。Omni Core 0.7.0の分散型取引所は将来的なOmniwalletのインターフェイス更新で完全なものとなり、ブロックチェーン上でビットコインやOmni Layerにて発行されるトークンの取引が可能になるようだ。
米ドルと連動するステーブルコインのテザー(Tether)は、複数のブロックチェーンで運用されているが、テザー社のCTOであるPaolo Ardoino氏はその中でもセキュリティ性能に優れたOmniが重要な位置付けにあると評価している。現在、各ブロックチェーン上でのテザーの流通量はOmniが15億5,000万ドル、イーサリアム(Ethereum)が22億ドル、トロン(Tron)が9億1,600万ドル、イオス(EOS)が525万ドル、リキッド(Liquid)が156万ドルを記録する状況だ。
今年7月、テザー社とその姉妹会社のBitfinex【以下、ビットフィネックスと称す】は、テザーの準備金から6億2,500万ドルもの資金を不当に流用したとして、ニューヨーク州司法長官(The New York Attorney General)【以下、NYAGと称す】による立入検査の対象となった。テザー社およびビットフィネックスは、米最高裁にNYAGのテザー調査を差止するよう求めており、これに対して同機関のLetitia James長官はひねくれた対応だと批判している。最近、テザー社は人民元連動のステーブルコイン発行を計画し、更なる事業拡大を図っているようだが、テザーの準備金をめぐる疑念を払拭することはできるのか、今後も同社の動向に注目していきたい。
release date 2019.12.17
世界最大のステーブルコインとして知られるテザーは、これまでOmniのブロックチェーン上で発行されたものが主流となっていたが、2019年中旬にERC-20のトークン規格を採用するイーサリアム版が登場している。イーサリアム版のテザーは汎用性が高く、多数の仮想通貨取引所や分散型アプリケーション(DApps)などに受け入れられており、同仮想通貨の流通量を倍増させる主な要因になったという。結果的にそれがブロックチェーンを圧迫し、イーサリアムのスケーラビリティ問題を強調する形となったものの、テザーが広く仮想通貨市場に流通したことがもたらす恩恵も少なくないと考えられる。Omniやイーサリアムに続き、テザー社はトロンとも提携しており、他のプラットフォームとも協業を進めているだけに、今後も仮想通貨市場におけるテザーの影響力が増していく可能性もあると言えるだろう。
作成日
:2019.12.17
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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