作成日
:2019.03.05
2021.08.31 15:27
独自のブロックチェーン開発を進めるトロン財団は、2019年度の第2四半期までにTRC20のテザー(Tether)を発行することを念頭に置いて、Tether Limited【以下、テザー社と称す】とパートナーシップを結んだことを明らかにした。
トロン(TRON)ネットワークでは、イーサリアム(Ethereum)のERC20と類似する独自トークン規格が定められており、TRC20やTRC10と呼ばれる各規格に沿った仮想通貨の発行が可能になるとのことだ。今回、開発が進められることになったTRC20のテザーは、本家テザーと同様に米ドルに対するペグ通貨としての特性を持ち、トロンのプラットフォーム上で利用できる安定した決済手段となることが予想される。これにより、トロンのユーザーへ信頼と安定を提供することができると、トロン財団のCEOおよび創設者であるJustin Sun氏は発言している。
一方、テザー社のCEOであるJean-Louis van der Velde氏は、トロン財団とのパートナーシップについて以下のようにコメントしている。
トロン財団とのパートナーシップを発表できることを喜ばしく思います。このパートナーシップは、仮想通貨分野における我社のコミットメントをより強固なものにするでしょう。
Jean-Louis van der Velde, CEO of Tether - Tetherより引用
中国の起業家であるJustin Sun氏によって立ち上げられたトロンは、「分散型の自由なインターネット」を実現するためのプロジェクトとして開発が進んでいる。トロンのプラットフォーム上では、誰でもオリジナルコンテンツを自由に公開および収益化することが可能となっており、従来のインターネットと比べて、より透明性の高い収益モデルが構築できるとのことだ。この特徴的なプラットフォームを強化するために、トロン財団は、ファイル共有サービスのBitTorrentを1億2,600万ドルもの資金を投じて昨年7月に買収した。その他にも、トロン財団は積極的な提携を進めており、昨年、中国の大手インターネット企業であるBaiduと大規模クラウドサービスの構築を目的にパートナーシップを結んでいる。
一方、テザー社は昨年、米商品先物取引委員会(Commodities and Futures Commission)にJean-Louis van der Velde氏が、CEOを兼任する大手仮想通貨取引所Bitfinexとの関係性を疑われて以来、黒い噂がつきまとっている。最近では、テザーが準備金に対する調査文書を公開するも有効性がないとされ、準備金不足が疑われていることに加え、テキサス大学のある教授による調査報告で、ビットコイン(Bitcoin)の価格操作を主導した嫌疑がかかっているという。
トロンのネイティブトークン(各ブロックチェーンプロトコルにおける主要な仮想通貨)であるTRXは、現在、12億5,000万ドルの時価総額を記録している。一部コミュニティでは、テザー社との協業に関して否定的な意見も上がっているようだが、トロン財団は、この大胆な試みを成功へと導くことはできるのだろうか。
release date 2019.03.05
今回トロンが、なにかと問題を抱えているテザー社とのパートナーシップ提携という驚きの戦略で注目を集めたが、トロンの積極的な開発計画は進んでおり、先月末には、Odyssey V3.5と呼ばれる大規模なアップデートを完了している。CEOであるSun氏の報告によると、このバージョンアップでは、ブロックチェーンの処理能力が大幅に改善され、従来の50%以上のパフォーマンスが出せるようになっているという。その他には、マルチシグと呼ばれる分割した秘密鍵を利用するセキュリティ機能の実装やdApps(分散型アプリケーション)プラットフォームとしての環境改善なども行われている。もともと、イーサリアムベースのプラットフォームとして開発が進められてきたトロンだが、2018年7月に独立したメインネット環境に移行したことをきっかけに、より独自性の強い開発へと舵を切っているようだ。今年1月に開催されたイベントでは、今後は、dApps関連サービスの構築に注力することを発表しており、コミュニティの期待も高まっているようだ。
作成日
:2019.03.05
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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