作成日
:2019.11.14
2021.08.31 15:29
仮想通貨を利用した金融サービスを提供するCrypto.comは、同社のWebインターフェイスおよびAPI、モバイルアプリケーションからアクセス可能な新しい仮想通貨取引所を開設したことを今月14日に発表した。
これまでCrypto.comは仮想通貨の利用を促進するために事業を拡大し、Visaのクレジットカード決済に対応したモバイルウォレットや仮想通貨レンディング、仮想通貨決済サービス、自動取引プラットフォーム、資金調達プラットフォーム、ステーキングサービスなどを展開してきたが、今回このエコシステムに、仮想通貨取引サービスを新しく加えることを決定した。Crypto.comの取引所は同社が抱える100万人のユーザーベースをターゲットとしており、ビットコイン(Bitcoin)、イーサリアム(Ethereum)、リップル(Ripple)、ライトコイン(Litecoin)、ステラ(Stellar)、テザー(Tether)、MCOの通貨ペアに対応しているという。加えて、Crypto.comはビットコインやテザーと並ぶ基軸通貨として独自仮想通貨のCROを採用し、これを利用するユーザーには最大100%の取引手数料割引や年利20%の金利収入など、様々なインセンティブを付与することを公表している。このCrypto.comの取引所は、Vortex Liquid Engineに支えられた高い流動性と安価な手数料を実現すると同時に、ISO認証取得やカストディ企業のLedger Vaultと協業することで堅固なセキュリティシステムを構築しているようだ。
Crypto.comのCEOであるKris Marszalek氏は、この取引所のローンチに関して次のようにコメントしている。
取引所の立ち上げは、エコシステムを完成させるために必要なステップでした。現在、多くのユーザーが仮想通貨の購入および保管、運用を目的に我社のサービスを利用していますが、より良い取引環境を求める方は別の選択肢を探すことになるでしょう。エコシステム内でサービスを完結できる企業はユーザーを留めることが可能なため、将来的に成長すると予想しています。しかし、それを実現するには常に2つのことを考えなければなりません。1つ目はユーザーエクスペリエンスの設計で、2つ目は金銭的なインセンティブを与える方法です。我社がトップ10の取引所となることは難しいかもしれませんが、機関投資家および個人投資家に良いサービスを提供し続けたいと思っています。
Kris Marszalek, CEO of Crypto.com - Finance Magnatesより引用
この取引所のローンチとは別に、Crypto.comはシンガポールで決済ゲートウェイを提供するXfersと協業し、シンガポールドルと仮想通貨の取引サービスを構築することに加え、同法定通貨を裏付けとするステーブルコインのXSGDをモバイル決済ソリューションであるCrypto.com Payに追加することを公表した。Xfersはシンガポールとインドネシアに1,000万人以上のアクティブユーザーを抱えており、Marszalek氏はこのパートナーシップが同地域におけるCrypto.comの有用性を高めると言及している。シンガポールではMASがJPモルガンチェースと国際送金システムを構築するなど、仮想通貨関連の動きが活発になっているだけに、今後もCrypto.comの取り組みには注目していきたい。
release date 2019.11.14
2017年に発生した仮想通貨バブルを境に、世界中で数多くの取引所が誕生した。しかしピーク時と比較してビットコイン価格は大幅に後退し、取引高が落ち込んでいる現在、業界では企業の存続をかけた戦いが激化しているようだ。世界的な大手取引所であるバイナンスやコインベースは、潤沢なリソースを背景に事業の多角化を試みることで収益性の確保を図っており、ソリューション開発や政府系プロジェクト、新興国市場の開拓などにまで手広く事業を展開している。例えば、バイナンスは仮想通貨分野でウクライナ政府を支援することを発表し、ほぼ未開の同国市場で先行者利益を得ようと動き出しているという。一方、今年3月には韓国のビッサムがリストラを計画していることが報道されるなど、中には逼迫した状況に陥っている大手取引所も存在することが明らかになった。仮想通貨市場の競争は厳しさを増していくことが予想されているが、Crypto.comをはじめとする新興取引所は生き残ることができるのか、今後もその展開を見守っていきたい。
作成日
:2019.11.14
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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