作成日
:2019.10.22
2021.08.31 15:29
大手仮想通貨取引所Bitfinex【以下、ビットフィネックスと称す】の親会社であるiFinex Inc.【以下、iFinexと称す】が、パートナー企業のCrypto Capitalに信託した8億8,000万ドルもの資金を回収するために、カリフォルニア州の地方裁判所に証拠開示申請を行ったことが明らかになった。
具体的にこの証拠開示申請では、TCA Bancorpの元役員であるRondell "Rhon" Clyde Monroe氏を召喚し、同氏の供述書およびCrypto Capitalとのやり取りを示した文書を取得することが目的とされている。これまでiFinexは別の裁判で同社の資金が政府当局によって凍結されたと主張してきたが、今回の申請の中ではTCA BancorpおよびMonroe氏がその行方に関する重要な手がかりを握っているとの見解を示した。iFinexは英国領のヴァージン諸島に拠点を置く外国法人だが、この証拠開示申請が認められれば、同社の裁判でこれらの要求が有効になるという。
このiFinexの問題は、昨年4月にポーランドおよびポルトガル政府がマネーロンダリング対策(AML)における調査の一環としてCrypto Capitalが保有する銀行口座を凍結したことに端を発しており、ビットフィネックスは同社から合計5億ドルの資金にアクセスできなくなったとの通知を受けている。Crypto Capitalは地元組織の協力を得て資金凍結を解除するように両政府との交渉を継続していると報告したが、その後、ビットフィネックスが詳細な情報を提供するよう圧力をかけた際、Monroe氏の署名が入った照会状で3億400万ドルの資金はCrypto Capitalではなく、TCA Bancorpが保有していることを明らかにした。これまでビットフィネックスはCrypto Capitalと良好な関係を保っていたため、照会状を受け取るまで同社の企てに気づかなかったという。
現在、ビットフィネックスは、損失を補填するために同じくiFinexが運営するテザー(Tether)の準備金から8億5,000万ドルの借入を行なったことが問題視されており、ニューヨーク州司法長官(The New York Attorney General)【以下、NYAGと称す】の追及を受けている。ビットフィネックスがニューヨーク州当局に調査権限がないことを主張し、今年7月に最高裁はNYAGのテザー調査を一時差止する判断を下したが、最終的にその訴えは退けられた。今回の件がこの一連の事件にどう関与しているかはわかっていないが、今後もその展開を見守っていきたい。
release date 2019.10.22
iFinexはステーブルコインの利用を拡大する方針を打ち出しており、昨年12月、その動きに合わせてビットフィネックスが4つのステーブルコインを上場するなど、仮想通貨市場全体で高まる需要に対応する構えを見せている。その一方、テザー社は人民元連動のステーブルコイン発行を計画し、香港をはじめとするオフショアに留まる同通貨の流れを活性化しようと試みているようだ。取引所側も、ステーブルコインは、ブロックチェーン技術を普及させるための機会として、実用性を高く評価しており、その利用には積極的だ。しかしながら、最近ではテザーの等価性を担保する準備金をめぐる懸念がいよいよ顕著化してきており、iFinexは仮想通貨市場での信用を失いつつある。今回の件に関してもiFinexおよびビットフィネックスは、パートナー企業の策略で資金管理上の問題が発生したと主張しているが、その真相は明らかではない。以前からiFinexには黒い噂が付き纏っているだけに、仮想通貨コミュニティの疑念は根深いが、今度も同社の動向に注目していきたい。
作成日
:2019.10.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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