作成日
:2019.09.19
2021.08.31 15:29
米大手銀行のWells Fargo(本社:420 Montgomery Street, San Francisco, CA 94104, USA
)【以下、ウェルズ・ファーゴと称す】は、社内決済向けに開発された独自仮想通貨であるWells Fargo Digital Cashの試験運用を実施する計画があると発表した。ウェルズ・ファーゴの発表によると、この独自仮想通貨は米ドルに連動したステーブルコインであり、同行の国内外全ての支店における決済処理に利用されるという。ウェルズ・ファーゴは来年を目処に決済プロセスの試験運用を実施する予定だが、既に米国とカナダ間での国際決済テストには着手しているようだ。ウェルズ・ファーゴはブロックチェーン関連のスタートアップ企業であるR3と提携し、Corda Entepriseと呼ばれる企業向けプラットフォーム上に分散型ネットワークを構築している。
ウェルズ・ファーゴでイノベーショングループの責任者を務めるLisa Frazier氏は、同行の独自仮想通貨に関して次のようにコメントしている。
世界的に銀行サービスのデジタル化が進んだ場合、国際取引に関する規制を緩和するよう求める声が大きくなると考えられます。現代のテクノロジーを持ってすればそれが現実のものとなる可能性は高いと言えるでしょう。DLT(分散型台帳技術)は様々なユースケースで利用可能であり、我社はこのテクノロジーを銀行サービスでスケーラブルに活用するために力を注いでいます。ウェルズ・ファーゴはWells Fargo Digital Cashを利用してグローバル市場でリアルタイムファイナンシングを実現する可能性を秘めているのです。
Lisa Frazier, Head of Innovation Group - Wells Fargoより引用
銀行業界ではブロックチェーンとの技術統合がトレンドとなっており、米投資銀行のJPモルガンチェースも企業間決済向けの独自仮想通貨を開発すると発表し、JPMコイン(JPM Coin)という名称のステーブルコインを発行している。これに加えてJPモルガンチェースはプライベートブロックチェーンのQuorumを立ち上げ、300社を超える金融機関との協業を成功しているが、ウェルズ・ファーゴやその他大手銀行はこの動きに追従するのか、今後も各企業の動向に注目していきたい。
release date 2019.09.19
最近では法定通貨を裏付けとするステーブルコインが仮想通貨の最も有効なユースケースだとの認識が高まっており、銀行や決済業者などから安価な送金手段として徐々に利用され始めているようだ。また、今年9月には中国人民銀行によるステーブルコイン開発が加速していることが報道されたことに加え、マーシャル諸島政府が仮想通貨プロジェクトを立ち上げを発表するなど、国家規模の試みが活発になってきている現状が明らかになった。これを受けて欧州中央銀行はステーブルコイン規制に関する報告書を公開し、ステーブルコインにはガバナンスやコンプライアンス意識の欠如による危険が潜んでいると警告した。事実、過去には世界最大のステーブルコインであるテザー(Tether)で、準備金の監査をめぐるトラブルが発生しており、一時的にその価値が乱高下した経緯がある。ウェルズ・ファーゴのWells Fargo Digital Cashは、社内決済向けである点で安全だとも言えるかもしれないが、果たして有効なソリューションとなり得るのか、今後も同社の取り組みを見守っていきたい。
作成日
:2019.09.19
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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