作成日
:2019.08.06
2022.07.04 13:48
ポーランドを拠点とする海外FX・CFDブローカーであるX‐Trade Brokers(XTB)が運営するX Open Hub(本社:Level 34, One Canada Square, Canary Wharf, E14 5AA, London, United Kingdom
)は、規制環境が目まぐるしく変化し、ブローカーの間でコスト削減や新たなテクノロジーの活用機運が高まりを見せる中、低価格で機能性の高いリクイディティ関連ソリューションの提供を強化している。2018年8月に、欧州証券市場監督局(European Securities and Markets Authority, ESMA)がリテールFX・CFDブローカーを対象とするレバレッジ制限などの新規制策を導入して以降、ブローカー各社は規制対応に伴うコンプライアンス体制の整備に追われている。また、規制強化により売上高が大幅に減少する中、多くのブローカーがオフショア市場へのシフトや店舗の閉鎖を余儀なくされており、足元までの数四半期の業績報告を勘案すると、その状況は悪化していると推察される。さらに、ハイリスクを求める投資家が取引制限の影響を受けないEU圏外のオフショアブローカーを選好していることも、EUを拠点とするブローカーにとっては収益性の低下に繋がっている状況だ。
このような厳しい市場環境下において多数のブローカーが運営コストの削減を試みているが、新たなテクノロジーの活用の機運も高まってきている。例えば、クラウドベースのソリューションを用いて固定費の削減を図るほか、AIを活用して競争力を維持しつつ運営効率の大幅な改善を実現させている。また、FXブローカーは自社に最適なCRMを導入する必要性が高まっており、ML(Machine Learning、機械学習)テクノロジーを活用したり、IT部門の変革を遂行するブローカーも出てきている。さらに、市場の先行きに不透明感が漂う中で多くのブローカーがレベニューシェアリング(利益分配)モデルの採用を模索する一方、想定外の損失を被る可能性のあるBブック取引(顧客の注文を市場へ流すのではなく、FXブローカー内で取引を相殺する方式)の採用をやめる傾向にある。
X Open Hubは新規の機関投資家を対象として、スプレッド縮小のインセンティブを付帯した先進的なリクイディティ関連ソリューションを提供しており、Meta Trader 4サーバーを用いたインフラ体系と比較しても大幅に低価格であるという。同サービスは、全ての主要銀行やリクイディティプロバイダー(流動性供給業者)にアクセスすることで、ミリ秒以下の非常に低いレイテンシー(遅延時間)を実現させるほか、クラウドベースのインフラを活用することにより、ハードウェアやソフトウェアのインストールを必要とせず、機能統合や拡張が容易にできるため、STPやECNモデルを採用する金融機関にとっては、大幅なスプレッドの縮小や手数料の削減が期待できるという。加えて、同社は企業提携を通じた自社製品・サービスの提供も強化しており、2019年1月にX Open HubはTekhnobankとパートナー契約を締結し、店頭FX関連サービスの提供を行っている。顧客ニーズにマッチした先進的なテクノロジーソリューションを提供することで、X Open Hubにとっては更なる業績拡大が期待できそうだ。
release date 2019.08.06
監督当局によって矢継ぎ早に打ち出される規制強化策により、コンプライアンス体制の整備に追われ、業績不振に陥るブローカーが確認されている。7月にGAINは2019年度第2四半期業績を発表したが、第1四半期に続き軟調な決算内容で着地した。足元、GAINには自社に対する買収観測も浮上しており、株主還元を強化する守りの経営を強いられている状況だ。一方で、規制対応に伴うコスト削減やコンプライアンス体制の再構築だけでなく、フィンテック企業などとの戦略的提携を通じ、顧客の取引環境の改善や新市場の開拓を図るなど攻めの経営に転じるブローカーも出てきている。最近では、Alior BankがTradAirと提携しグローバルベースでFX執行能力の向上を模索するほか、CFIがFXCubicと提携し、低レイテンシーのコネクティビティサービスの提供を試みている。閉塞感漂うFX業界においては企業自らが変革する姿勢が求められており、先進的なテクノロジーを活用した画期的なソリューションを提供するブローカーの動向に注目したい。
作成日
:2019.08.06
最終更新
:2022.07.04
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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