作成日
:2019.07.16
2021.08.31 15:30
ニューヨーク州金融サービス局(The New York State Department of Financial Services)【以下、NYDFSと称す】は、機関投資家向けの仮想通貨取引所であるSeed CX Ltd【以下、Seed CXと称す】の子会社に同州で仮想通貨関連事業を行うためのビットライセンス(BitLicense)を付与することを発表した。
今回、NYDFSはSeed CXの子会社であるSeed Digital Commodities Marketに対し、仮想通貨取引所のZero Hashに送金事業者としての活動を許可した。これにより同州では、ビットライセンスを付与した企業が20社に上るという。現在、Zero Hashは仮想通貨と法定通貨のスポット取引における決済サービスを提供し、今後数か月以内にレポやフォワード、その他のサービスにも対応する予定だ。これらのサービスは既に従来のブローカーやFX ECN(電子取引ネットワーク)、その他金融機関には提供されており、Zero HashはMoney Services BusinessおよびFXディーラーとしてFinCENに登録されていることに加え、30を超える州で送金事業者としての資格も取得している。
このライセンス取得に関してSeed CXの共同創設者兼CEOであるEdward Woodford氏は、次のようにコメントした。
我社は、仮想通貨関連事業のライセンス保有者として、ニューヨーク州内の企業への取引および決済サービスの提供を拡大し、機関投資家向けのプラットフォーム上において技術や運用面でのサポート、さらには当局が要求する法令遵守にも対応したいと思っております。
Edward Woodford, Co-Founder and CEO of Seed CX - NYDFS より引用
ビットライセンスを維持するためには、様々な報告義務を果たし、マネーロンダリング対策(AML)やサイバーセキュリティ、投資家保護基準も満たす必要があり、ニューヨーク州の規制は米国の中でも最も厳しい部類に位置付けられている。米当局は仮想通貨の問題に対して積極的に取り組んできたが、規制機関と州議会の対立も見られ、ニューヨーク州が仮想通貨関連企業にライセンスの取得を義務付ける唯一の州となっているようだ。連邦政府は仮想通貨規制に関して各州の判断に依存している状況だが、当局はどのような方針を示すのか、今後の動きに注目していきたい。
release date 2019.07.16
今年2月に、米国西部のワイオミング州で仮想通貨の所有権を認める法案が議会で可決されたことに加え、他州に先駆けてブロックチェーンや仮想通貨を既存の金融サービスに組み込むための法整備が着々と進んでいるという。また、続く3月にはコロラド州でデジタルトークン法が成立し、独自の資産クラスとして仮想通貨が合法化されており、州内での仮想通貨関連企業の動きが加速している。一方、連邦政府はFacebook(フェイスブック)の仮想通貨プロジェクトであるリブラ(Libra)の発表を受け、上院および下院がリブラに対する公聴会を予定するなど、押し寄せる仮想通貨の波に危機感を募らせているようだ。特にドナルド・トランプ大統領はリブラに対し否定的な意見を示しており、マネーロンダリングや麻薬取引、脱税などの犯罪行為に仮想通貨が利用される可能性を危惧することをTwitter(ツイッター)で発言している。米国の仮想通貨市場はシリコンバレーやウォール街を中心に発展を遂げているが、定まらない国の方針が足枷になっているのも事実であり、仮想通貨関連企業はジレンマを感じていることだろう。対立する各州と米政府の動きが、今後の仮想通貨市場にどのように影響していくか注意深く見守っていきたい。
作成日
:2019.07.16
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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