作成日
:2019.06.21
2021.08.31 15:26
Facebook, Inc.(本社:1 Hacker Way, Menlo Park, California 94025
)【以下、Facebookと称す】が独自仮想通貨となるステーブルコインのリブラ(Libra)を公開したことを受けて、米国当局が同プロジェクトの調査を目的に公聴会を開催すると今月20日に発表した。上院議会の委員会であるBanking, Housing, and Urban Affairsは、「Facebook(フェイスブック)の仮想通貨とプライバシーに関する検証」と題して公聴会の実施を予告しており、Facebookの開発する仮想通貨リブラが抱える潜在的な問題や危険性を精査することを伝えている。Facebookは、仮想通貨ウォレットCalibraのローンチ計画も先日発表しており、23.8億人の月間アクティブユーザー数を誇る同社の仮想通貨プロジェクトは、社会全体に影響を与えることが予想されるため、今回の公聴会には研究者や企業の代表者、政府関係者、著名な人物など、幅広い人材が招聘される可能性があるようだ。
また、下院議会でも公聴会が計画されており、民主党のMaxine Waters氏と共和党のPatrick McHenry氏がFacebookに財政委員会の審問前に対応するよう求めているという。Waters氏は、カリフォルニア出身でリベラル派の政治家だが、議会がプライバシーや経済的な安全性を確認するまでFacebookにリブラの開発を控えることを要請している。
Facebookの仮想通貨プロジェクトへの対応に関してWaters氏は、以下のように述べた。
Facebookは、仮想通貨プロジェクトの立ち上げを通じ、ユーザーの生活にまで影響力を拡大しています。過去の経緯から考えると、議会や規制当局が安全性を検証する機会が得られるまで、Facebookに仮想通貨開発の中断を求めるべきだと言えるでしょう。
Maxine Waters, Member of The House of Representatives - CNBCより引用
先日、Facebookがスイスにリブラの運営企業を立ち上げたことが報道されており、同社の仮想通貨プロジェクトは、米当局の権限が及ぶ範疇外での進展を見せている。このことが米国を中心とした国際的な政治論争を加速させると囁かれているが、米当局や各国政府は今後どのような対応を見せるのか、更なる展開に注目していきたい。
release date 2019.06.21
2017年の仮想通貨ブーム以降、米国政府は仮想通貨市場への警戒を強めており、安全性が確認されていない仮想通貨プロジェクトや仮想通貨関連企業を排除する動きを見せているようだ。昨年も米国議会は、米ドルと連動したステーブルコインのテザー(Tether)を発行するテザー社を招聘して公聴会を開催した。不透明な監査スキームや取引銀行とのトラブルによって、テザー社は準備金の運用に関する信用問題を抱えており、仮想通貨市場だけでなく、米国経済や為替市場などにも影響を与える危険性をはらんでいた。結果的にテザー社が処罰を受けることや業務停止に迫られることは無かったが、米当局が仮想通貨市場への監視を強化していることが浮き彫りとなった。これまでFacebookは、本業のSNS事業でユーザーの個人情報を私益のために利用した経緯があり、唯でさえ当局から睨まれている状況の中、リブラのローンチを実現できるのか今後の取り組みに期待したい。
作成日
:2019.06.21
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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