作成日
:2019.07.11
2021.08.31 15:26
今月8日に公開された第11次開発計画(The Eleventh Development Plan)によると、トルコ政府が中央銀行による仮想通貨の発行を軸に、国内経済の再興を図る案を議会で検討していることが明らかになった。
第11次開発計画は2019年から2023年までの期間を対象とし、トルコ経済を復興させるための指針となることが期待されているが、その中には、中央銀行主導の仮想通貨以外にも、ブロックチェーン技術を積極的に活用していく案も盛り込まれているという。例えば、輸送や関税分野では、法的および技術的な支援を行うプラットフォームの構築、公共サービスの分野では人工知能やIoTの基盤としてブロックチェーンを利用することなどが提案されている。
この計画の中で中央銀行が主導する仮想通貨に関しての詳細は開示されていないものの、トルコ政府には2018年頃からTurkcoinと呼ばれる仮想通貨を開発する案が存在していたという。当時の報告によると、このアイデアはトルコの民族主義者行動党(Nationalist Movement Party)の副党首で元産業大臣でもあるAhmet Kenan Tanrikulu氏が提案したものだというが、今回の件もその流れを受け継いで検討が進められている可能性があるといえよう。
他の提案としては、実験的な規制特区の解放、電子マネー取引協会の設立、フィンテック機関の立ち上げなど、直接的には仮想通貨に関係はないが、国内の金融市場に変化を促す内容が含まれているようだ。一部報道によると、トルコのRecep Tayyip Erdogan大統領は、今週中にも中央銀行が経済を支援する策を打つことを公言している。
このことに関する同行のアクションに期待しつつ今後の状況を注視していきたい。release date 2019.07.11
トルコでは歴史的な通貨安が進行しており、現在、トルコリラの政策金利は24%に達し、今年5月のインフレ率は前年比で18.7%にまで上昇している。米国の大手投資銀行であるJPモルガン・チェースが売りを推奨したことも重なって、ここ最近のトルコリラは対米ドルの為替レートが最安値を更新し続けている状況だ。GDPが年々増加しているトルコでは、ある程度のインフレが発生することは自然なことだが、問題はトルコ政府が「双子の赤字」と称される経常収支と財政収支のマイナスを抱えていることだと言えよう。仮想通貨分野に注力することで経済を刺激する公算もトルコ政府にはあるものの、本質的には立ち行かない財政状況が改善することはない。2019年6月には大手仮想通貨取引所Huobiのトルコ市場進出も報道され国内での仮想通貨に対する注目度は高まっているといえよう。しかし、今回のトルコの動きが、通貨危機を逃れる目的で国営の仮想通貨であるペトロを発行したベネズエラに類似しているとの見方もできる。米国ではすでにドナルド・トランプ大統領が、米国民のペトロの取引を禁止するなど、ベネズエラの国際的信用は失いつつあり、このような流れの中で舵を切ったトルコ政府も同じ運命を辿っていくのか、今後の展開を見守っていきたい。
作成日
:2019.07.11
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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