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コインベース、仮想通貨取引所向けの保険会社設立を模索

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update 2021.08.31 15:26
コインベース、仮想通貨取引所向けの保険会社設立を模索

update 2021.08.31 15:26

大手保険会社のAonとキャプティブ子会社を立ち上げか

米国最大の仮想通貨取引所であるCoinbase, Inc.(本社:548 Market St #23008 San Francisco, CA94104[1])【以下、コインベースと称す】は、英国を拠点とする大手保険会社のAonと提携し、仮想通貨取引所をターゲットとした保険会社の設立を模索していることが明らかになった。[2]

これまで仮想通貨業界では、取引所を狙ったハッキングやその他リスクをカバーする保険が十分に提供されておらず、仮想通貨関連企業は投資家保護の面で課題を抱えていたという。このような仮想通貨市場の状況に対してAonは理解を示しており、今年4月にはコインベースのホットウォレットに2億5,500万ドルの補償を提供するなど、同社との関係を構築しており今回パートナーとして選定されている。

仮想通貨業界でも自己保険は一般的になっているが、コインベースはキャプティブ子会社を設立することで、自社の保険サービスの管理業務などを委任する意向のようだ。キャプティブ子会社は独立した保険基金を有すると同時に、それを厳格な監査基準に沿った方法で管理する役割も担っており、親会社にとってはより安全に保険サービスを実現する手段ともなり得る。コインベースとAonの両社とも、具体的な計画については明らかにしていないものの、今年初めにAonは仮想通貨業界初のキャプティブ子会社を立ち上げたと言及した。

今年2月、BitGoが1億ドルを補償する保険の提供を開始したことも話題になったが、現在、提供されている仮想通貨を対象とした保険の多くは、非常に高価な価格設定となっており、これまで仮想通貨関連企業は自己保険に頼らざるを得ない状況にあったという。実際に、スイスの保険会社がハッキングにも対応した仮想通貨保険を提供しているが、自己保険だけではZaifのハッキング事件のような、巨額なハッキング被害の際には十分な補償を受けることができず、仮想通貨業界ではキャプティブ子会社のスキームを利用した保険サービスの有効性が議論され始めている。コインベースの取り組みに関して、大手取引所のHuobi(フォビ)Globalで欧州および北米地域の営業部長を務めるJosh Goodbody氏は、市場にとっても有益で非常に興味深いとの感想を述べた。

この動きとは別にNexus MutualやEtheriscなどの企業は、仮想通貨に関連する損害が発生した際に利用する資金をグループとしてプールする仕組みを考案したが、ほとんど実現不可能であることから強い批判を受けている模様だ。また、コインベースの保険会社設立に対しても批判の声が上がっており、例えば大手取引所であるKraken(クラーケン)でCEOを務めるJesse Powell氏は、キャプティブ子会社を設立するメリットがないと述べ、親会社と子会社間で資金を移動させているだけで実際に投資家保護の強化につながるかはわからないと言及している。加えて、Powell氏は、コインベースの保険基金が一般的な保険会社と同じカテゴリーに当てはまらず、監査方法が不明確であるとの問題点も指摘した。

コインベースによる保険会社の設立は、仮想通貨業界にとって大きな前進となることは間違いないが、同社はこれらの課題をどのように乗り越えていくのか、今後の動向にも注目していきたい。

release date 2019.07.11

出典元:

ニュースコメント

ブロックチェーン技術の統合が進む保険業界

様々な企業が仮想通貨やブロックチェーン技術の統合を試みているが、最近では、保険業界が新しい形のプラットフォーム構築を目指し、積極的な開発が推し進められているようだ。先月にも大手保険会社のメットライフがライフチェーンと呼ばれるイーサリアム(Ethereum)ベースのプラットフォームを導入することを伝えており、スマートコントラクトなどを利用した契約の自動化で効率的な保険サービスを実現すると発表している。また、メットライフは昨年既に糖尿病患者向けのサービスでブロックチェーンの導入を実施するなど、本格的にブロックチェーンの可能性を模索している姿勢がうかがえる。従来の保険サービスでは、情報管理の不透明さや契約の不履行などが問題となっているだけに、情報改ざんが難しいブロックチェーンの不可逆性が有効になると予想されるが、このダイナミックな変化を保険業界は受け入れることができるのか、今後の展開に期待したい。


Date

作成日

2019.07.11

Update

最終更新

2021.08.31

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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