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G20、仮想通貨の規制強化を含む共同声明を採択

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update 2022.01.27 13:22
G20、仮想通貨の規制強化を含む共同声明を採択

update 2022.01.27 13:22

厳格なKYC・AMLルールを採用する方針

日本が初めて議長を務めた主要20か国財務大臣・中央銀行総裁会議【以下、G20と称す】にて採択された共同声明では、仮想通貨分野において本人確認(KYC)とマネーロンダリング及びテロ資金供与対策(CFT)として厳格な新規制策を採用することで合意した。[1]昨年7月開催のG20で要請された仮想通貨規制案は、金融活動作業部会(Financial Action Task Force)【以下、FATFと称す】が1年間かけて作り上げ、6月27日から開催されるG20大阪サミットにて国際的な統一基準を採択される見通しだ。

G20は共同声明内で、仮想通貨の基礎をもたらした技術革新は、金融システム及び広範な経済領域に多大なメリットをもたらし得るとする一方で、現在までのところグローバル金融の安定性に脅威を与えるものではないとの認識を示した。また消費者や投資家保護、AML及びCFTを含む様々なリスクに対する警戒を続けていく意向である。加えて、強靭なサイバーセキュリティシステムの構築を目指すと共に、サイバー犯罪への対応及び復旧に向けた効果的な取組みを提示する金融安定理事会(Financial Stability Board)【以下、FSBと称す】の活動に進捗が見られることを歓迎している。なおFSBは、仮想通貨分野におけるサイバー攻撃の拡大へ効果的な対応策を模索する役割を担っている。その他にもG20は、各国の仮想通貨規制における潜在的なギャップの是正に対応する監督当局をサポートするために、全ての関連機関が実施している作業結果の受け入れに対し積極的な姿勢を示すと共に、FSB及び関連機関に対し仮想通貨のリスクを監視し必要に応じて多国間が協力して追加的な対応を図るよう要請した。

また、仮想通貨の不正検出に定評のあるChainalysis【以下、チェイナリシスと称す】の政策部門ヘッドを務めるJesse Spiro氏は、多くの仮想通貨取引所が他の取引所や個々人の仮想通貨ウォレットなどに関する情報を求める際、FATFの提示する規制基準を満たすには技術的な障害があると指摘している。加えて、AML対策として的確なKYCプロセスと厳格なデューデリジェンス、取引のモニタリング、不正が疑われる取引の積極的なレポーティングを含め、共通の基準を設ける必要性を訴えている。現状においては、ほとんど全ての仮想通貨取引所がKYCルールを採り入れているが、FATFが求める厳しい規制基準に対応する企業は1社もないという。また、取引当事者を特定し、その情報を保管するためには、銀行間で送金情報をやり取りするように、仮想通貨取引所及び仮想通貨関連サービスを提供する業者が相互に、資金の受け渡しの際には顧客情報を共有する必要があるとの声も上がっている。仮想通貨取引の匿名性の維持とKYC、AML及びCFT対策強化のどちらを優先させるかが常に議論の的になるが、仮想通貨業界が更なる発展を遂げるにはこの問題に真正面から向き合わなければならないといえるであろう。

匿名仮想通貨Beamの開発会社であるBeam Development LimitedのCEOを務めるAlexander Zaidelson氏は、今日プライベートでは現金取引をレポーティングしない一方でビジネスでは取引情報を求めているように、仮想通貨分野においても匿名性とコンプライアンスのバランスをとる必要があると指摘している。また、仮想通貨ウォレットの有無を確認するために全てのPCや携帯電話をチェックすることやインターネットを遮断することは不可能であり、規制当局は開発業者と協働し、仮想通貨が既存の金融エコシステムの一部になる方策を模索すべきだとも提言している。6月末に開催されるG20大阪サミットにて、仮想通貨の国際的規制措置を巡りどのような統一枠組みが示されるか注目される。

release date 2019.06.11

出典元:

ニュースコメント

仮想通貨の本質が否定される可能性も

ビットコインなどの分散型仮想通貨は、P2Pと電子認証の技術を応用してこれまでとは全く異なる価値流通の仕組みを作り出している。主要通貨に代表されるこれまでの通貨が中央銀行によって発行されてきた事に対して、分散型仮想通貨は発行主体の存在しない分散的な構造でありながら、私人の間での支払を完了させる価値認証システムとしてあたかも現金のように流通する事を可能としている。発行主体が存在しない事により、法律による規制を受けにくいことから、取引時にKYCに代表される本人確認手続きが不要である場合もあるなど、匿名性が高く自由な取引環境が大きな特徴となっているが、これまでも日本の国税庁が仮想通貨取引の拡大に対応する方針を発表するなど、仮想通貨取引の実態を把握し、規制を行う流れが世界的に強まっている。法律や監督当局による規制の強化は自由な取引環境が最大の特徴となってきた仮想通貨の本質を揺るがしかねず、自由な取引環境がなくなることにより、仮想通貨自体の価値が下落する可能性が懸念されることから、今後の各国監督当局の動きを注視していく必要があるだろう。


Date

作成日

2019.06.11

Update

最終更新

2022.01.27

Zero(ゼロ)

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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