Select Language

米SEC、ブローカー向け利益相反関連の新規制案を可決

米SEC、ブローカー向け利益相反関連の新規制案を可決

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.01.27 13:25
米SEC、ブローカー向け利益相反関連の新規制案を可決

update 2022.01.27 13:25

顧客の最善の利益を追求する行動を義務化

米国証券取引委員会(US Securities and Exchange Commission)【以下、SECと称す】は、ブローカーが顧客の利益保護を図ることを目的とした、利益相反関連の新規制案を可決した。[1]

今回SECが決議した新ルールにおいては、ブローカーや投資顧問業者が個人投資家に対し、証券取引の推奨及び投資戦略の提供といった投資アドバイザリーサービスを提供する際、利益相反の可能性を伝える必要があり、顧客の最善の利益に基づく行動が求められるとのことだ。従来、ブローカーにとっての主要業務は顧客からの注文を執行することであったが、取引の自動化が進むに連れて、現在は投資アドバイザリーによって収益を稼ぐビジネスモデルに転換している。そこで今回、SECが利益相反ルールに関連した新案を可決したことにより、投資アドバイザリー業務を推進するブローカーに対し利益相反関係の開示を求める新たな業界基準を構築すると共に、顧客の利益を優先する流れが明確なものになった。そして、過去数十年間に亘り改善が求められていた商品性の改良に加え、ブローカーによる透明性あるサービス提供がなされることが期待される一方、個人投資家にとっては投資ニーズや投資環境に応じて金融機関と最適な関係性を構築することができるようになる模様だ。

利益相反に関連した新案を可決したことに際し、SECの委員長を務めるJay Clayton氏は以下のようにコメントしている。

今回の規則制定により、ブローカー及び投資顧問業者は利益相反を開示する法的義務を負うことになります。一方で個人投資家にとっては、多岐に亘る金融商品・サービスを合理的なコストで投資することが可能になるでしょう。また利益相反ルールに関しては、我々が20年間近く何度も議題に挙げ協議を重ねてきたテーマでもあります。

Jay Clayton, SEC Chairman - Finance Magnatesより引用

一方で、民主党委員のRobert Jackson Jr氏が新ルールに関しては効果が不十分な規制策の寄せ集めと批判的な態度を示している。また一部の消費者運動家も、新規制案は投資家保護として不十分であり、最善の利益の定義が不明確であるとも指摘しており、ブローカーと顧客の利益相反問題に関しては、依然議論を巻き起こす可能性が残っているといえよう。

なお米国のFX市場動向に目を向けると、米国リテールFX市場は拡大局面に入る兆しを示しており、IG GroupがFX取引サービスを展開する米国法人を設立するなど、ブローカー動向も活発になりつつある状況だ。そして今回、ブローカー向けの利益相反に関する新案が可決したことをきっかけに、ブローカー各社が顧客本位のサービス提供を徹底させることで、米国FX市場全体が一層活性化することを期待したい。

release date 2019.06.06

出典元:

ニュースコメント

緩やかな新規制ルールにブローカーも歓迎の様子

全世界におけるFXブローカーの数は1200社を超えるとも言われており、ブローカーの超過当競争が行われる中、各社は取引手数料の引き下げ合戦を行うなど、業界を取り巻く市場環境は決して良好とは言えない状況が続いている。こうした背景から、これまでのビジネスモデルでは利益を生み出すことができなくなったブローカーの投資アドバイザリーサービスによる利益確保へのシフトが進んでいる。ブローカーとしても効率よく利益を確保するべく、高手数料の商品や銘柄を優先的にトレーダーへ紹介するケースが頻発するなど、ブローカーとトレーダーの間での利益相違について以前より問題視されてきた。今回の新規制ルールの導入によりブローカーはトレーダーに対して予め利益相違が生じる可能性について説明する義務が生じ、トレーダー保護が図られることが期待されている。世界的な金融規制強化の流れの中で、ASICが全ブローカーに取引データの提出を要請した結果、IFGMが海外顧客口座を閉鎖する結果となるなど、強力な規制ルールの発表により市場に混乱をきたす例も見られる中、今回の新規制ルールは実質的にSECが金融業界に譲歩した結果であると見られている。適切な規制が施行され、FX市場がさらに活性化されていくことに期待したい。


Date

作成日

2019.06.06

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

PayPayを使って海外FXとの入出金が可能に?Binance JapanとPayPayが提携を発表

Binance JapanとPayPayが業務提携を発表し、PayPayマネーを使った仮想通貨購入サービスの提供などが検討されています。本記事では、Binance JapanとPayPayの提携内容や、PayPayを使った海外FXとの入出金フローなどを解説します。
update2025.10.17 19:00

メタマスク等の利用が規制対象に?金融庁がDEXの規制を議論

暗号資産WGでの議論を発端に、SNS上で「DEX利用が非合法化されるのでは?」といった投稿が話題になっています。本記事では、金融庁で議論されたDEX規制の現状や、SNSで広まる情報の真偽、海外FXユーザーへの影響などを解説します。
update2025.10.28 19:00

Wiseでの海外FX入出金をおすすめできない理由とは?アカウント閉鎖の可能性も

海外FXユーザーの間で、Wiseを利用した送金が話題になっています。しかし、Wiseでの入出金はリスクが高いためおすすめできません。この記事ではその理由を説明します。
update2025.09.08 19:00

XMTradingの入出金で銀行口座凍結?海外FX禁止の銀行に注意

SNS上では「XMTradingの出金で銀行口座が凍結された」とする投稿が一部で見受けられます。銀行によっては海外FXとの取引を禁止しているため注意が必要です。本記事では凍結リスクが高い銀行や仮想通貨送金の注意点を説明します。
update2025.09.03 19:00

Exnessで10月に2度もサーバーダウン!?SL設定のユーザーは損失補填

海外FX業者のExnessで、10月に2度のサーバーダウンが発生しています。一連のトラブルが原因で、損失を被ったユーザーも少なくないようです。本記事では、報告されている不具合やExnessが実施した補償などについて説明します。
update2025.10.30 19:30

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30

XMはゴールド(XAUUSD)のスプレッドも広い?ボーナス取引で実質お得

XMTradingのゴールド(XAUUSD)はスプレッドこそ狭くないものの、スワップフリー口座や豪華ボーナス、約定スピードの速さで十分に利用の検討余地があると言えます。当記事ではXMTradingでゴールド取引が向いている・向いていないトレーダーを他社と比較しながら解説していきます。
update2025.10.22 19:00

SwiftTraderが資金難?SNSで出金トラブル報告が増加

2025年以降、SwiftTraderで出金拒否・遅延の報告がSNSで相次いでいます。本記事では報告されている出金トラブルのほか、GEMFOREXとの類似点やSwiftTraderをおすすめしない理由を説明します。
update2025.10.16 19:30

Peska(ペスカ)は本当に安全?評判は悪くないが入出金リスクに注意

PeskaはFX業者とのコラボキャンペーンなどをきっかけに、急速にユーザーを増やしているオンラインウォレットです。しかし、新興サービスのため利用すべきか迷うという人も少なくありません。この記事ではPeskaの安全性や評判、オンラインウォレット業界が抱えるリスクなどを説明します。
update2025.09.29 19:30

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル