作成日
:2019.06.04
2022.01.27 13:28
韓国の規制当局である金融委員会(Financial Services Commission)【以下、FSCと称す】は、長きに亘り低迷する同国のデリバティブ市場の活性化を図るべく、店頭デリバティブ取引に関連した規制緩和策の導入を発表した。
今回FSCは、韓国の個人投資家にとってデリバティブ取引を手掛ける際に最も高いハードルになっていた最低預入金を、先物やオプションの購入時には従来の3,000万韓国ウォン(25,300ドル)から1,000万ウォン(8,500ドル)へと減額する緩和措置を講じた。減額された最低預入金は、2018年にデジタル資産へと投じられた平均投資金額である6,000ドルをやや上回る水準である。一方で、先物やオプションの売却時には購入時の倍に当たる2,000万ウォン(17,000ドル)の最低預入金が必要になるという。また今回のデリバティブ規制緩和策は機関投資家にとってもメリットがあり、2019年第3四半期より、クレジットリミット(与信限度額の上限)超過金額分の満額預け入れや、信用リスク限度額の10%に当たる追証を差し入れる必要がなくなる見通しだ。
更にFSCでは、2019年第3四半期初頭に複数のマーケットメイキング(値付け)業務に関連した規制を更新すると共に、流動性が低い商品を取り扱うマーケットメイカーへのインセンティブを強化する意向である。また、2019年第4四半期には新たなデリバティブ商品の開発及び上場を促すべく、証券会社の裁量を高めていく方針でもあり、これらの一連の緩和策を講じることで、伝統的な金融資産の取引が行いやすい環境を整備する見通しだ。
今回FSCが規制緩和策を導入した背景として、店頭デリバティブ取引高の低迷が挙げられる。デリバティブ取引高は2011年にピークをつけたものの、投機的取引を縮小させ長期投資を手掛ける健全なデリバティブ市場の形成を図るべく導入された厳格な規制策の影響を受け、取引量が急激に落ち込む結果になっていた。そして、FSCも高額な最低預入金が個人投資家にとって取引を手掛ける際の足かせになると共に、厳格な必要証拠金規制が機関投資家の市場参加を妨げる要因になったとの認識を示しており、低迷が続くデリバティブ市場の活性化を図るべく今回の規制緩和策の導入に繋がったとみられる。
なお、外国人投資家のデリバティブ市場占有率は、2011年の25.7%から2018年には50.4%まで拡大している。一方で、同期間における機関投資家が占める割合は48.7%から36.1%へ、個人投資家に至っては25.6%から13.5%へ半減したことを勘案するに、FSCが採用した厳格な規制策が如何に韓国の投資家に大きな影響を及ぼしたか伺い知れるであろう。
他方で、韓国はビットコイン(Bitcoin)を始めとした仮想通貨取引が盛んな市場の一つでもあるものの、取引がピークに達した2017年第1四半期には、韓国政府が投機的な仮想通貨取引は教育上大きな問題を引き起こしているとの懸念を示していた。またFSCの委員長を務めるChoi Jong-ku氏は、韓国の金融機関にフィンテック企業との協業を積極的に推し進めることを期待しており、仮想通貨取引分野においても多くの課題が残されている状況といえよう。
今回、FSCが伝統的な金融資産を取引する際の参入障壁を低くしたことで、個人投資家の取引意欲が大きく改善すると見込まれており、規制緩和に乗じてブローカー各社が如何なる画期的なサービス展開を図るか注目される。
release date 2019.06.04
韓国のデリバティブ市場は1996年に国内主要企業で構成されるKOSPI200先物が現在の韓国取引所【以下、KRXと称す】に上場したことが起源となっている。1998年には外国人による投資規制が完全に撤廃され、先進的なオンライン証券システムが普及したことにより、KRXは2010年の世界デリバティブ取引高ランキングにおいて第一位となるなど、比較的後発な市場であったにも関わらず、飛躍的な拡大を遂げてきた。順調に取引高を拡大してきたKRXではあるが、個人投資家保護の観点から2011年に株価指数オプションの取引単位が引き上げられた結果、取引高が減少し、2014年の世界デリバティブ取引高ランキングでは12位となるなど、現在は取引高の低迷が続く状況となっている。デリバティブ取引高は各国の国際金融センターとしての評価に密接に関連していることから、近年では香港やシンガポールの取引所がこぞってデリバティブ事業の強化を図るため様々な取り組みを講じている中、KRXとしても規制強化により減少した取引高を取り戻すことを意識した政策へと動き出した模様だ。今回の規制緩和の発表により市場が活性化され、ブローカー、トレーダー双方にとって明るい展望となることに期待したい。
作成日
:2019.06.04
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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