作成日
:2019.05.31
2021.08.31 15:26
仮想通貨のイーサリアムクラシック(Ethereum Classic)は、システム全体のアップグレードを実施することについてコミュニティの合意を得られなかったことから、次期ハードフォークであるアトランティス(Atlantis)の計画に遅れが生じる可能性があることが明らかになった。
今年2月以来、イーサリアムクラシックの開発者チームは、このハードフォークに向けて10個のEIP(Ethereum Improvement Proposal)を検討してきたが、未だその内容についての議論が続いている状態だという。9月中旬のハードフォーク実施を見据えていることから、今月30日に開催された開発者間の電話会議では、具体的にどのEIPを盛り込むのかを決定することが期待されていた。しかしながら、今回は意見の共有が主となり、ハードフォークに関する詳細は流動的な状態のままとなっている。
コミュニティは、スマートコントラクトに関する改善案であるEIP 170をアトランティスに含めることに懸念を示しているようだ。このEIP 170が有効化されると、1回のトランザクションで実行できるスマートコントラクトのデータサイズを制限することになり、将来的に複雑性が高い用途に対応できなくなる可能性がある。イーサリアムの創立者であるVitalik Buterin氏は、これがブロックチェーンに対する特定の攻撃を防ぐために必要な措置だと説明したものの、コミュニティでは議論に発展している模様だ。これに対してイーサリアム開発者のAnthony Lusardi氏は、これらの取り決めがブロックの検証というよりも、トランザクションの検証に関するため、不可逆的なハードフォークではなく、ソフトフォークで対応すべきだとコメントしている。
イーサリアムクラシックは、2016年にイーサリアム(Ethereum)から分岐し、独自開発を進めたことで、今では10億ドル近い時価総額を誇る仮想通貨プロジェクトにまで成長した。最近では、イーサリアムのブロックチェーンとの互換性を高めることに注力しており、アトランティスでも、既にイーサリアムで有効化されているEIPを実装する試みが検討されている。Ethereum Classic CooperativeのエグゼクティブディレクターであるBob Summerwill氏によると、イーサリアムクラシックがイーサリアムのプロトコルに対応した場合、分散型アプリケーション(dApp)の移行がはるかに容易になるという。
イーサリアム開発者は、EIP 170に関してこれから1、2週間ほどでデータサイズを制限することで生じる問題を議論し、同時にハードフォークを進めるための案も検討する方針を発表しているが、最終的に遅延を回避することができるのか、今後の展開にも注目していきたい。
release date 2019.05.31
イーサリアムクラシックは、イーサリアムと比較してより非中央集権型の運営を実現することを目指しており、自立分散型組織(Decentralized Autonomous Organization, DAO)がガバナンスや様々な意思決定を行なっている。イーサリアムクラシックの自立分散型組織では、特定の中央管理者を排除し、コミュニティメンバーによる投票が絶対的な決定権を持つため、それぞれがルールや規範を守ることが何よりも重要だという。当初からイーサリアムクラシックは、今回のようにコンセンサスが形成できず、開発が進まなくなることが懸念されていたが、それでもコミュニティは透明性や公平性、特定の権力者に依存しない自由など、仮想通貨が本来持つ理念を尊重しているようだ。自立分散型組織のシステムは、国や企業、地域、主要通貨に代表されるこれまでの通貨などのあり方を変える存在だと言われており、イーサリアムクラシックはそれをまさに体現しており、今後もその有効性を示す例として躍進することが期待されている。コミュニティメンバーの意思が反映される形で実施されるソフトフォーク、ハードフォークではあるが、イーサリアムクラシックの今後の姿を形作るイベントであることから世界的な注目が集まっており、市場ではイーサリアムクラシックの価格が上昇するなどポジティブな反応を示している。引き続きコミュニティの動向に注視していきたい。
作成日
:2019.05.31
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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