作成日
:2019.05.02
2021.08.31 15:26
米IT大手のIBM(本社:1 New orchard Road Armonk, New York 10504-1722 United States
)と米大手情報サービスのトムソンロイターが、金融機関の規制対応に関する業務負担を軽減させるべく、新たなレグテック(フィンテックを活用して規制対応に関する課題解決を図る技術)ソリューションを提供することが明らかとなった。両社が協働して提供する新レグテックソリューションは、IBMが開発したAI(Augmented Intelligence, 拡張知能)であるワトソン(Watson)を実装したIBM Cloudを通じて膨大な量に上る情報から金融サービス関連の規制データをリアルタイムに提供するサービスとのことである。このソリューションには、IBMが2016年に買収したリスク管理やコンプライアンス関連のコンサルティングファームであるプロモントリーファイナンシャルグループが有する豊富なドメイン知識も存分に活用されているという。
グローバルベースで目まぐるしく変化する規制環境の中、金融機関は日々数百の規制関連の情報を収集し、2020年までに新たに3億種類の規制に対応しなければならないと言われている。また、リスク管理やコンプライアンスの専門スタッフが膨大な数の規制変更点などを正確に且つ精緻に理解すると共に、規制の適用範囲及び影響を踏まえた規制対応の優先順位をつける業務には、多くの人手と時間を要しているのが現状である。そのような市場環境下において、金融機関各社は次々に押し寄せる規制に対し迅速な対応を求められており、一元管理がなされていないデータを効率的に活用するAIシステムへの需要が高まっている状況だ。IBMとトムソンロイターが提供するレグテックソリューションは、金融機関の確たるニーズを満たすべくリスク管理やコンプライアンス業務のデジタル化を図り、グローバルベースで900超の規制機関が公表する規制関連データと2,500種類にも上る法規制関連資料を一元管理するという。
新レグテックソリューションの提供を開始するに際し、IBMワトソンフィナンシャルサービスのゼネラルマネージャーを務めるAlistair Rennie氏とトムソンロイターのコーポレート部門パートナーシップ・アライアンスヘッドであるChris Carlstead氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
今回トムソンロイターと協働で開発したレグテックソリューションは、複雑な規制への対応が求められる金融機関のお客様に対し、新たな高付加価値をもたらすと考えております。
Alistair rennie, GM of IBM Watson Financial Services - IBMより引用
我が社が長年蓄積してきたグローバルベースの規制関連情報とIBMが有する優れたAI技術を融合させることで、リスク管理やコンプライアンスの専門スタッフが抱える日々の業務負担を劇的に軽減させることができるでしょう。
Chris Charlstead, head, partnerships and alliances, corporate segment, Thomson Reuters - IBMより引用
グローバルベースで効率的・効果的な規制対応が求められる中、足元ではCappitechが新執行分析ツールをリリースするなどレグテック関連のビジネスチャンスが大きく広がっていることが伺える。今回IBMとトムソンロイターが協働で開発したレグテックソリューションは、多くの金融機関が対応に苦慮しているリスク管理やコンプライアンス部門の大幅な業務効率化を図ることができることから、顧客が同ソリューションを積極的に活用することが期待できそうだ。
release date 2019.05.02
レグテック(RegTech)とは、規制を意味するレギュレーション(Regulation)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語であり、テクノロジーによって金融規制に関する課題を克服することを意味している。レグテックが注目されるようになった背景にはリーマンショック後の規制強化と、それに対応するための金融機関でのコンプライアンス関連コストの増大があると言われている。最近では銀行に限らず、ブローカーでもレグテックの活用が求められるなど、幅広い金融機関で普及しつつあるようだ。今回、新レグテックソリューションの提供開始を発表したIBMは世界初のATMを開発、量産したことで知られており、テクノロジーを通して金融機関の業務を自動化、効率化させる分野においてパイオニア的存在である。IBMのレグテック市場への参入は非常に大きなインパクトを持って受け止められており、同社の持つ高い技術と長年蓄積されたノウハウによりレグテックの普及が加速することは確実とみられている。新ソリューションにより、ブローカーを始めとした金融機関の業務コストが削減され、サービス品質が更に向上し、市場が活性化されることに期待したい。
作成日
:2019.05.02
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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