作成日
:2019.03.28
2021.08.31 15:26
英国のスタートアップ企業であるTrustology(本社:181 Queen Victoria Street, London, EC4V 4EG, UK
)は、iPhoneで操作可能な仮想通貨ストレージ、TrustVaultのリリースを発表した。発表によると、TrustVaultは、ハードウェアセキュリティモジュール(HSM)と高度な承認プロセスを組み合わせることで、機関レベルのセキュリティを実現している他、ウォレットの秘密鍵をスマートフォンに保持しないことから、デバイスの紛失時にも容易に資産のリカバリーが可能となっているという。初期段階では、英国のApple UKによるApp StoreでのみTrustVaultのダウンロードが可能となり、対象の仮想通貨もイーサリアム(Ethereum)だけに限定されるが、今後は段階的にビットコイン(Bitcoin)やイーサリアムベースのERC-20(イーサリアムブロックチェーンのトークン規格)トークンなどに対応を広げていくとのことだ。
自社の製品に関して、TrustologyのCEOであるAlex Batlin氏は、以下のようにコメントしている。
携帯電話の手軽さを活かしていますが、重要なのは、TrustVaultのアカウントです。もし電話に着眼点をおけば、単なるモバイルアプリケーションに過ぎません。それは、シンプルに見えるかもしれないが、アプリケーションを通して提供されるサービスにこそ真価があるのです。
Alex Batlin, CEO of Trustology - CoinDeskより引用
また、Batlin氏は、Trustologyがアンドロイド向けのアプリケーション開発を進めていることについて言及しており、Titan Mチップと呼ばれるiPhoneより安全性が高いセキュリティチップを搭載した機種のみに対応する方針を明らかにしている。最近、多くの企業がスマートフォン上で動作する仮想通貨ストレージを開発しており、例えば韓国のサムスンは、フラッグシップモデルのGalaxy S10に仮想通貨ウォレットを搭載した他、対する台湾のHTCは、ブロックチェーンスマホと呼ばれるExodusを市場投入し、DApps(分散型アプリケーション)や仮想通貨ストレージにも対応している。
バークレイズやBNY Mellon、RBSの元技術者によって立ち上げられたTrustologyは、昨年、シードフェイズの投資ラウンドで800万ドルもの資金を調達しており、期待のスタートアップとなっている様だが、今回発表した新しい事業を成功へと導くことはできるのだろうか。
release date 2019.03.28
Trustologyは、英国では有望なベンチャー企業として有名になりつつあり、ベンチャーキャピタル向けの情報を発信するFinTechCityでは、FinTech50 Hot10に選出されている。Trustologyの他には、ロンドンを拠点にブロックチェーンを活用したオープンイノベーションを仕掛けるPillarや、スイスでセキュリティトークン取引所を構築するSmart Valorなどが、仮想通貨関連企業としてノミネートされている。金融業が発展している欧州地域では、このようなベンチャー企業の台頭が著しく、仮想通貨分野をリードする英国やスイスを中心に、東欧諸国やリヒテンシュタイン、ロシアなどが続く形で、新興市場が活発に動いているようだ。一方、フランス議会が匿名通貨の利用禁止を提案し、スイス政府が仮想通貨の規制案を可決するなど、欧州の主要国では、不穏な動きも見られるが、Trustologyを初めとする欧州の仮想通貨関連スタートアップは、この環境の変化にどの様に対応していくのか、今後もその動向に注目していきたい。
作成日
:2019.03.28
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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