作成日
:2019.03.26
2021.08.31 15:26
中国の仮想通貨マイニング企業であるBitmain Technologies Ltd(本社:Building 25, North Olympic Science & Technology Park, Baosheng South Road, Haidian District, Beijing, China 100029
)【以下、Bitmainと称す】は、香港証券取引所【以下、HKEXと称す】への上場申請を行なっていたが、その有効期限が今月26日に失効したことが明らかになった。昨年9月の報道では、30億ドルの資金調達と150億ドル以上の時価総額を達成することを念頭に、BitmainがHKEXへの上場申請を進めていることが伝えられていた。これが現実のものとなれば、Bitmainは、主要な証券取引所にリスティングされた初めての仮想通貨企業となるはずであったが、申請から6ヶ月以内に上場委員会(Listing Committee)からの回答がなかったため、今回の申請は規定により失効と見なされたという。
ここ6ヶ月間、ビットコインを始めとする仮想通貨価格の低迷やマイニングマシンの売上減少など、Bitmainを取り巻く環境は劇的に変化しており、同社における事業の持続性に疑問を抱く声が上がっていた。昨年9月にHKEXへ提出された目論見書によると、Bitmainは、同社が開発した最新型のマイニングマシン、Antminerへの事前注文を大量に受注していたが、製品のリリース時には、既に仮想通貨市場におけるマイニング分野は下火だったという。それ以降、創造性の欠如や仮想通貨価格の下落などに苦しめられ、Bitmainの業績は、軟調な推移を示しているようだ。
さらに目論見書では、Bitmainは2018年上半期だけで7億ドルもの利益を上げたものの、2018年の第2四半期には3億9,500万ドル、過去18ヶ月では5億ドルの大規模な損失を立て続けに記録したことがわかっている。最近では、Bitmainの財務状況が更に悪化していることが噂されており、2018年第3四半期には5億ドルの損失を計上したとの憶測もでているという。マイニングマシン販売とマイニング事業を並行するBitmainは、仮想通貨価格の低迷により大きな打撃を受けた可能性があるが、それに加えて、韓国大手総合電子メーカーのサムスンが仮想通貨マイニング向けのASICチップ事業への参入を発表したことから、業界での競争激化が業績不振の一因となったことが伺える。
2018年、Bitmainは、4億4,200万ドルの資金調達に成功しており、同社の財政状況は大幅に改善されている。併せて、北京、アムステルダム、テルアビブ(イスラエル)、香港拠点の従業員を対象に、Bitmainはリストラを実施し、人的リソースの最適化を行うなど、再起へ向けた準備を進めているようだ。
release date 2019.03.26
今回、BitmainのHKEXへの上場申請は、形式的には期限切れという結末を迎えたわけだが、地元メディアによると、HKEXの監査部門は、以前からBitmainの新規株式公開(IPO)に難色を示していたという。Bitmainの申請が不可となったことに関して、正式な理由は明らかにされていないが、コンプライアンスや規制の緩い仮想通貨業界の企業が発行する株式をリスティングする危険性をHKEXが警戒したことが最大の要因だと考えられる。これに関して、Bitmainは、同社の法令遵守意識や財務状況、サプライチェーンが当初から改善していると言及しており、タイミングを見て再び上場申請を行うことを公表した。創設から5年が経過したBitmainだが、変わらずマイニングマシンの設計および製造は継続していく構えで、新型製品の開発も進めているようだ。仮想通貨マイニング事業における収益性の低下が心配されるが、Bitmainは、この課題をどのように乗り越えていくのだろうか。
作成日
:2019.03.26
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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