Select Language

ブローカー経営に密接にリンクするボラティリティ

ブローカー経営に密接にリンクするボラティリティ

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.11.10 13:30
ブローカー経営に密接にリンクするボラティリティ

update 2022.11.10 13:30

ボラティリティ動向を踏まえた経営戦略策定の必要性

金融関連のソフトウェアプロバイダーであるICON Capital Reserve SAのCOOを務めるDemetrios Zamboglou氏は、自身の博士論文テーマである「ユーロ/米ドルに関するリテールFX市場の多様性とスキル~不確実性がマーケットに与える影響とトレードスキルの行動バイアスに関する考察」[1]を基に、市場のボラティリティとFX取引の間に正の相関関係が成り立つことを踏まえたブローカー経営の必要性を説いている。

この正の相関性が生まれる背景としては、市場のボラティリティが高まることで為替レートが大きく値動きする際、トレーダーが価格の大きなうねりに乗じて多くの利益を上げられるとの期待を持ち取引を活発化させるためと考えられるとのことだ。ただし、高ボラティリティの市場環境においては、特にハイレバレッジ取引の際、運用パフォーマンスを大きく悪化させる可能性もあることに加え、市場の方向性を読み解くことが難しく、投資家にとってはこれまで培ってきたトレードスキルを存分に発揮することができないリスクも生じてくるといえよう。

他方でFXブローカーの商いにおいて主要取引通貨ペアとなっているユーロ/米ドルの市場ボラティリティは、ブローカーの収益性に大きく影響を与えている状況だ。つまり、ボラティリティの高まりはブローカーの収益性も高めると想定できる。一方でマーケットのボラティリティが低下した際には、ブローカーの業績が落ち込むことが予想されるため、A-Book(顧客の注文を全てインターバンク市場に流す取引手法)を採用しポジションを抱え込むリスクを抑え、スプレッドの拡大、ロスカット水準の引き上げ、デリバティブなど商品の多様化もしくは新商品の投入による取引高の増加、可能な範囲でのレバレッジの引き上げや自由にレバレッジを設定できるシステムの導入、リスク管理強化といった個別戦術を用いる必要があると考えられる。更に、コスト削減や競合分析を含むリストラクチャリングや革新的な商品の提供、デジタルマーケティングへの投資や新市場の開拓、顧客維持と顧客獲得費用の削減に向けた効果的な取り組みといった全社的な戦略対応も求められてくるだろう。

ブローカーはまた、企業を継続的に成長させていくうえで、リーダーシップを発揮し、大局的に市場情勢を見つめることができる経営者が求められているといえる。有力ブローカーで見てみると、Plus500は現状は個人投資家を惹きつける魅力的な新商品の開発に苦しんでおり、2019年2月には軟調な業績見通しを受け、Plus500の株価が急落している状況だ。そのため抜本的な変革を図るべく、経営層を一掃すると共に画期的な商品・サービスの提供を必要としていると判断できるであろう。他方でCMC Marketsの経営陣は、ForextimeやXMのようなコスト削減を重視したビジネスモデルとは一線を画し、積極的に新興市場の開拓を図ると共に、効果的なマーケティング戦略と革新的な商品提供に重点を置いた経営のかじ取りを行っているようだ。そしてIG Groupに関しては、FX市場に新規参入してきたIQ OptionやOlymp Trade、XMなどが市場シェアの獲得を目論む中、的確な市場ポジショニングを築いているものの、コーポレートガバナンスという視点から社内の権力闘争に気をとられているようである。そのためIG Groupは、ステータスに固執し閉鎖的なオールドエリートから、向上心があり野心的で革新を求めるニューエリート集団へ経営を委譲する時期にあると考えられよう。

ボラティリティが目まぐるしく移り変わるFX市場を主戦場とするブローカーにとって、市場環境を見据えたリーダーシップと革新性を発揮する経営者に率いられた企業こそが、市場の時流に乗った、まさにクオリティの高い優良企業として生き残れるのかもしれない。

release date 2019.03.22

出典元:

ニュースコメント

FXブローカーにおける今後の展望

FXブローカーのビジネスモデルは、大きく分けるとA-Bookと呼ばれる、顧客の注文をブローカーが直接リクイディティ・プロバイダーに流す取引形態であるNDD方式と、B-Bookと呼ばれる、ブローカーが取引の主体となって顧客の注文を成立さる取引形態であるDD方式の2つに分類される。日本国内においては多くのFXブローカーが後者のDD方式を採用しているのに対して、大半の海外FXブローカーは約定力・透明性の高いNDD方式を採用しており、売買手数料とスプレッド差分がブローカーの利益に繋がるため、顧客がより多くの取引を行うように様々なサービスを提供することが重要になっている。よく見られるサービスのひとつに、取引に応じてボーナスを付与するボリュームボーナスがあるが、FCAを始めとする主要な規制当局はこのボーナスインセンティブを2017年より禁止していることから、ブローカーは収益性の高い取引や新規顧客獲得を目指す上で、より利便性の高いサービスの充実を図るべく、新たな市場開拓や技術開発などに注力しているようだ。最近では、AI(人工知能)やブロックチェーンといった先端技術の導入にも力を注いでいるブローカーも多く、なかでもブロックチェーン技術においては、迅速かつ信頼性の高い取引の実施が可能なことから、その将来性が非常に期待されている。今後ブローカーは、ICT(情報通信技術)の発展を活用することで新しいビジネスモデルを構築し、新たな収益源を確保することも重要になってくるかもしれない。


Date

作成日

2019.03.22

Update

最終更新

2022.11.10

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

Vantage Tradingが年末トレード大会を開催!ランク外でも賞金獲得のチャンスあり

Vantage Tradingが、年末恒例となる大型トレード大会「年末ミリオンジャンボ2025」の開催を発表しました。今回のイベントでは副賞も用意されているので、ランク外でも賞金獲得のチャンスがあります。この記事では、参戦を検討しているユーザー向けに、各種条件やルールを説明します。
update2025.11.28 19:00

Bitgetが代替手段に?Bybitが日本撤退で日本ユーザーの新規登録禁止

Bybitが日本ユーザーの新規登録停止を発表しました。Bybitの代替取引所としてはBitgetが挙げられ、Bybitと遜色ないサービスを利用できます。本記事では、Bitgetの特徴や海外取引所への規制動向などを解説します。
update2025.11.25 19:00

Money Charger(マネチャ)情報流出で問われるキャッシュバックサイトの運営体制と安全性

Money Chargerは2025年10月25日、ユーザーの個人情報が外部に流出したことを公表しました。キャッシュバックサイトはうまく活用すれば取引コストを抑えられる一方で、個人情報を扱う性質上、安全管理体制が極めて重要です。本記事では、安全性や透明性の観点から主要なキャッシュバックサイトを比較します。
update2025.11.17 19:00

Vantage Tradingで出金遅延、担当者が語る原因と対応

Vantage Tradingで銀行出金に関する遅延が確認されています。出金申請後に着金まで時間を要するケースが報告されており、SNS上でも混乱が発生している状況です。原因としては入金額の急増や決済システム側の処理制限が影響しているものと見られます。
update2025.10.24 19:00

豪華なのに難しい?XMTradingが開催中のクリスマス入金ボーナスプロモーションは「アリ」なのか?

XMTradingで最大$25,000を獲得できる入金ボーナスキャンペーンが開催され注目を集めています。一見すると豪華なキャンペーンにみえますが、一般的な入金ボーナスとは条件が異なり、一部では条件が厳しいとの声もあります。本記事では、参加する価値のあるイベントなのかを説明します。
update2025.11.26 19:00

Exnessの乗り換え先としてXSはアリ?スペックを比較

取引環境の良さから玄人にも人気のExnessですが、最近は出金トラブルなどが発生しており、今後の取引環境に不安を抱くユーザーも増えています。本記事では、有力な乗り換え先であるXS.comと取引環境・条件を比較し、乗り換え先として相応しいかどうかを検討します。
update2025.11.20 19:00

Funded7で出金が認められない事例が増加?ルールの不透明さが原因か

Funded7で出金拒否に関する投稿がSNS上で増加しており、利用者の間で不安が広がっています。「利益が取り消された」「短時間取引が理由で無効になった」などの報告が投稿されています。当記事では出金拒否の原因を整理し、他のプロップファームとFunded7のルールを比較します。
update2025.11.21 19:00

Vantage Tradingが入出金額の上限を変更、100万円以上の出金は自動分割

海外FX業者のVantage Tradingが、銀行振込の入出金額の上限を変更しました。今後は銀行振込で一度に出金できる額が100万円に制限されます。本記事では、変更された条件や高額送金時の注意点などを説明します。
update2025.11.11 19:00

Bybit P2P利用で銀行口座凍結・詐欺容疑者に?海外FXユーザーが知るべき巻き込まれリスクとは

Bybit P2Pを利用したユーザーが銀行口座凍結されたことに加え、詐欺容疑者として取り調べを受けたというSNS投稿が話題になっています。本記事では、話題となった投稿の内容や、海外FXユーザーがP2P取引の利用を避けるべき理由などを解説します。
update2025.11.12 19:00

bitcastleは詐欺業者?口座開設ボーナスで出金拒否多数

SNS上ではbitcastleから「出金できない」「口座を凍結された」といった報告が相次いでいます。本記事では、bitcastleで報告されている出金トラブルを紹介するほか、bitcastleは詐欺業者なのかどうか説明します。
update2025.10.21 19:30
promotion promotion

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル
close
promotion
今すぐ参加する

次回から表示しない