作成日
:2019.03.07
2021.08.31 15:27
日本国内で仮想通貨交換事業を営むQUONIE株式会社【以下、QUONIEと称す】、株式会社リミックスポイント【以下、リミックスポイントと称す】、ビットバンク株式会社【以下、ビットバンクと称す】の3社が、正式に証券業への参入を目指していることが報道によって明らかになった。
仮想通貨取引所が証券業を始めるためには、金融庁(Japan Financial Services Association, JFSA)への登録が必要となるが、現在3社は、それぞれ違ったアプローチでその準備を進めている状況にあるという。多様な金融業務の展開を目的とするQUONIEは、現在、銀行免許の申請を提出しており、証券事業に関しては、新たな持ち株会社を設立し、その傘下に証券子会社を組み入れることを検討しており、2020年からの始動を目標に準備を行なっている。同じく、リミックスポイントも、スマートフィナンシャルという子会社を新設して証券会社としての申請を予定していることに加え、ビットバンクも、早期の許可取得を目標に既に動き出しているようだ。
インサイダー取引や市場操作の疑いがある事案のほか、詐欺的なICO(イニシャルコインオファリング)などが頻発している仮想通貨市場の現状を受けて、日本政府は、既存の金融法で仮想通貨を規制することを検討しているという。特に証券としての特性を持つ仮想通貨は、有価証券を管理する金融商品取引法の範囲内だとの議論が展開されている。また、最近では仮想通貨を対象とした先物契約などの金融派生商品も広く取引されるようになったことから、安全性を確保する意味でも証券業の登録が必要だとの見方が強まっているようだ。
仮想通貨大国の米国でも、仮想通貨取引所を統一的に規制するための法律は明文化されておらず、各州の判断による形となっている。比較的規制が厳しいとされるニューヨーク州では、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)がビットライセンスと呼ばれる仮想通貨関連事業者向けの制度を設けて、市場の統制を試みているという。大手仮想通貨取引所のジェミニやコインベースは、このライセンスを取得しており、仮想通貨交換事業に加えて、仮想通貨のカストディ事業などの信託業務を行うことが許可された立場にある。ニューヨーク州は、バーチャル・カレンシーズ関連事業者という区分を定義することで、銀行法の下、仮想通貨取引所の管理に対応しているようだ。
仮想通貨関連企業の証券業への参入は、日本政府の厳格化する規制による影響を回避するための対策だと考えられる。マネックスが買収したコインチェックや、SBIバーチャルカレンシーズなど、大手金融機関が運営する取引所は既にライセンスを取得しているが、この流れは今後、業界全体へと波及していきそうだ。
release date 2019.03.07
これまで、仮想通貨による資金調達は、非公式な方法で行われていたこともあり、主催者による資金持ち逃げなど、詐欺的な行為が世界的に頻発していた。この状況を受けて、米国やシンガポール市場では、より厳格なルールの下に実施されるSTO(セキュリティートークンオファリング)による資金公募方法が利用され始めているという。特にシンガポールでは、中央銀行の役割を担うシンガポール金融管理局(The Monetary Authority of Singapore)が、STO実施のためのガイドラインを発行するなど、適切な環境の整備が進んでいる。一方、世界でも有数の仮想通貨市場を抱える日本では、今のところICOに関する規制は施行されておらず、企業は比較的自由に仮想通貨を通して資金調達を実施することができる。幸いなことに、ここ最近、国内でICO絡みの被害は報告されていないが、仮想通貨のビジネス利用を促進するためにも、早期の対応が望まれるだろう。
作成日
:2019.03.07
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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