作成日
:2019.02.13
2022.07.08 15:44
海外FX・CFDブローカーのAdvanced Markets LTD(本社:94 Solaris Avenue, Camana Bay, P.O. Box 1348, GrandCayman, KY1-1108, Cayman Islands
)のグローバルセールスヘッドを務めるNatallia Hunik氏が、現在注目度が増しているFXブローカーの出口戦略(企業の上場、事業承継、清算など)に関する見解を明らかとした。Natallia氏は、規制強化が1つの大きなきっかけとなり、2019年にはFX業界でM&A(企業の合併・買収)が活発となると見込んでいる。現在、FX業界において企業統合の波が押し寄せつつある中、FX業界及びメディアの間では、FXブローカーによる出口戦略動向への注目が高まっていると言う。というのも、欧州証券市場監督局ESMAがCFD規制の適用期間を再延長すると共に、EU(欧州連合)域内の金融・資本市場の包括的規制策である第二次金融商品市場指令MiFIDⅡも施行から1年が経過した。更に中国の財政引き締め政策も加わり、FXブローカーにとっては、コンプライスの徹底及び間接コスト増、売上高減に直面し、難しい経営のかじ取りを強いられている状況だ。
他方でM&Aに関しては、一般的に、ソフトウェア業界のEBITDAマルチプル(企業価値の評価方法、企業価値がEBITDAの何倍かを示す指標)の平均が21-25倍であるのに対し、リテールFXブローカーに関しては、最近行われた案件の内最も高くても5-10倍である。リテールFXブローカーのEBITDAマルチプルが低い数値となっている要因として、市場リスクを含む高いリスクを内包したブローカレッジサービス業務を営み、且つ豊富な知的財産を有していないことを挙げている。歴史あるベンチャーキャピタルやプライベートエクイティ企業にとっては、リテールFXブローカーの高いリスクと低いリターンが足かせとなり、リテールFXブローカーは相対的に投資妙味が低いと判断している模様だ。そのため、FXブローカーは出口戦略を考慮する際、FXブローカレッジ業務も営む巨大コングロマリット(複合企業)や同業他社といった戦略投資家とのパートナー関係の構築に活路を見出さざる終えない状況となっているとのことである。
Natallia氏曰く、そのような環境下においても、M&Aの買い手にとって魅力的に映るFXブローカーになるために、モバイルアプリなど知的財産の開発に注力する共に、STP方式の採用などを通じて市場リスクを低減させる必要性を訴えている。また、リテールFXブローキング業務は平均して29%という高い利益率を誇るものの、規制強化の影響を大きく受けており、利益率も縮小傾向にある。そのため、規制を遵守し低レバレッジではあるものの、より安定した取引高と顧客維持を図ることができる機関投資家向けビジネス部門を構築することを検討すべきとしている。更には、強固なシステムを保持し、且つ透明性の高い注文執行を安定的に手掛けるライセンス保有企業と協働することで、カウンターパーティリスクを抑えることや、信頼性の高い国・地域より金融ライセンスを取得することも重要となってくると言う。
一方で、FXブローカーも経営効率の改善を図るべく、顧客基盤をグローバルに拡大させようとしている。また大企業に関しては、規制が比較的緩やかな国・地域と、確固たるFXの規制枠組みを構築している国それぞれにおいて、規制ライセンスの取得を目指している。特に、オーストラリア金融サービス免許(Australian Financial Services License, AFSL)はレバレッジ制限を緩めていることから、高いプレミアムがついていると言う。FX業界において、過去10年ほどに亘り、規制とリスク管理への対応は、企業の命運を握るほど大きな課題となっているとのことだ。
なお、ブティック系金融アドバイザリーファームであるFinCap Advisorsのマネージングパートナーを務めるDemetris Tsingisによれば、FX業界のM&Aは70%しか公開されていないと言う。これは、一般的に300万ドルから500万ドル以下の未公開企業によるM&A案件のため、一般に公開され目に触れることが困難であるためのようだ。2018年には、主に機関投資家部門のM&Aが多く見られたが、オーストラリアを拠点とするリテールFXブローカーであるAxiCorpが英国を拠点とするリテールFXブローカーであるOneFinancialの買収したように、広く一般に知られる案件も出てきている。また、2019年にはFX業界のM&Aが活発となることが見込まれている。
Natallia氏は、FX企業オーナーが、経営リスクの低減や効果的なリスク管理、独自技術の開発に向けた戦略を講じることで、全てのステークホルダー(利害関係者)にとって企業価値の向上が期待できると見込んでいる。
release date 2019.02.13
企業経営における出口戦略とは、手がける事業の投資資金回収手段のことであり、Exit(イグジット、エグジット)とも呼ばれる。FXやCFD等の市場取引で例えれば、利益確定の決済と同様の意味合いを持つ、と説明すれば、その重要さを実感いただけるのではないだろうか。多くの新興企業では、新規株式公開(IPO)によって、資本市場から資金を調達することでExitを行うケースが多いが、リテールFXブローカーの場合、高レバレッジの提供等、柔軟なサービスを維持するために、より規制が厳しくない国のライセンスを取得することが少なくなく、比較的金融規制の厳しい先進国での株式上場が難しいケースも多いようだ。例えば、昨年12月に、それまでバヌアツのライセンスで営業してきたTraders Trustがバミューダへライセンスを移行している等、リテールブローカーのライセンスの移動はそれほど珍しいことではない。IPOという、王道ではあるがやや安易な出口戦略を執れない以上、リテールブローカーにとっては同業大手との関連業種との統合を有望視するのは当然ともいえるが、利用客から見ても、M&Aのプロから見ても魅力的な企業にならなければ、実りのあるExitとはならないだろう。課題も多いが、各ブローカーはExitによる収穫をより豊かにするために、今こそ地道で継続的な企業価値向上への施策に真正面から取り組んでいただきたい。
作成日
:2019.02.13
最終更新
:2022.07.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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