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MiFIDⅡ施行から1年経過

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update 2022.01.27 15:33
MiFIDⅡ施行から1年経過

update 2022.01.27 15:33

市場の透明性確保や最良執行徹底に寄与

EU(欧州連合)域内の金融・資本市場の包括的規制策である第二次金融商品市場指令(Markets in Financial Instruments Directive Ⅱ)【以下、MiFIDⅡと称す】は、2014年に正式採択され、2018年1月3日の施行から丸1年が経過した。

ギリシャの国家財政の粉飾決算をきっかけに、世界各国の株式や為替相場が大幅下落した2010年の欧州ソブリン危機以降、EUでは世界的な金融危機に起因した金融・資本市場の環境変化に適応させるべく、それまでEU域内の包括的規制策であった金融商品市場指令(MiFID)の改正を行った。その後MiFIDⅡは、当初2016年1月からの施行を目指していたものの、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が更なる協議を重ねるべく2018年1月まで施行を先延ばしていた。

そのMiFIDⅡでは、投資家の保護と株式、デリバティブ、債券、CFD、高頻度取引(High Frequency Trading, HFT、取引手順などを組み込んだプログラムを活用し自動売買を繰り返す取引)、アルゴリズム取引(コンピューターシステムによる自動売買)、通貨といった様々な金融商品市場の透明性を高めることを目的としている。そして、MiFIDⅡはEU域内のファンドマネージャーや銀行、FXブローカー、年金基金、個人投資家など全ての金融市場関係者に影響が及ぶ規制策である。またESMAでは2018年5月末、更なる投資家保護を徹底すべく、MiFIDⅡの適合性要件(顧客の知識・経験・経済的状況・投資目的に合った商品・サービスの提供)に関するガイドラインも公表している。これらのことから勘案するに、欧州当局が投資家保護を目的として、再び世界不安に繋がる金融危機を引き起こさぬよう、徹底した規制策を講じていこうとする強い姿勢を伺い知ることができる。

MiFIDⅡ施行から1年が経過したことを受け、マルチアセットクラスの取引執行管理システムの提供を行うTradingScreen(本社:1 Penn Plaza 49th Floor New York, NY 10119[1])のヨーロッパ部門営業統括者であるChris Hollands氏と、機関投資家向けにFX取引プラットフォームの提供を行うIntegral(本社:850 Hansen Way Palo Alto, CA 94304 USA[2])の最高売上責任者を務めるVikas Srivastava氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。

市場の透明性を高めることを目的の1つとするMiFIDⅡが導入されたことで、債券や店頭デリバティブ、FXの分野に非常に大きな影響を及ぼしていると見ています。これらの資産クラスにおいては、流動性を集約・向上させる取引執行管理システムや精緻な分析、様々な執行手法及びトレーディングツールへの需要が顕在化しております。また、電子取引を活用した広範なアセットクラスに及ぶ最良執行義務(有価証券の売買に関する顧客注文に対し、最良の条件で執行する方針を定め、その方針に沿って注文を執行する義務)の徹底や、株式ブロックトレード(同一銘柄を一度に大量に売買する取引)手法の採用など、バイサイド(買い手側)投資家から執行コストの透明性を高める最良のトレード執行や、中立機関による取引分析ニーズも高まっている状況です。

Chris Hollands, Head of European Sales at TradingScreen - LeapRateより引用

MiFIDⅡ及び関連の規制策が、市場の透明性を高めると共に、金融機関のコンプライアンス遵守に寄与していることは疑いのないことでしょう。ESMAによるレバレッジ規制が課せられて以降、リテールFX業界には引き続き甚大な影響が及ぶものと予想されます。特に、英国ではハードブレグジット(EUからの合意なき離脱)の可能性も出てきており、向こう数か月間に亘り、ボラティリティが高まることが予想されており、投資家保護を目的に、ブローカー各社はその対応に迫られている状況です。そして、MiFIDⅡの導入により、市場の透明性が高まったことから、企業の業務効率性も向上しております。当初規制への対応に苦慮していた市場参加者も徐々に適応し始め、2019年には、MiFIDⅡが業務執行の負担となるよりも、規制に上手く適応する形で、更に付加価値の高いサービスを顧客へ提供することが予想される他、次世代の高度な通信プラットフォームであるTCA(Telecom Computing Architecture)の標準化なども見込まれております。

Vikas Srivastava, Chief Revenue Officer in Integral- LeapRateより引用

ESMAでは投資家保護を徹底するべく規制強化を図っている。ブローカー各社にとっては、引き続きMiFIDⅡ及びESMAの新規制を遵守したうえで、革新的な商品サービスを開発・提供することこそ、競合他社と差別化を図ることに繋がりそうだ。

release date 2019.01.16

出典元:

ニュースコメント

MiFIDⅡが及ぼすEU域外への影響

MiFIDⅡとは、EU(欧州連合)加盟28ヶ国の金融市場や投資サービスを規制する為に制定された法令であり、金融銘柄やその銘柄の取引場所に関係している顧客へサービスを提供している金融機関や企業を規制する欧州連合の法律である。MiFIDⅡでは投資家保護の改善、金融市場の混乱リスクやシステムリスクの軽減、金融市場の効率向上などを目的としており、100以上の関連法令文書から構成されている。このMiFIDⅡが施行されてから1年ほど経過したが、日本を始めとしたEU域外の国の金融機関や企業へも様々な影響があったようだ。特に自国内の市場や銀行、証券会社といった金融機関のうち、欧州に現地法人拠点を設立し、投資サービスや運用活動を行っている現地法人は、取引フロー、取引記録、取引プラットフォーム、報告システムなど、様々なプロセスやシステムの変更が必要となり、対応に追われることとなった。また、欧州ブローカーが、実行可能な取引の流動性が制限されるため、EU域外の金融市場にも少なからず影響はあったようだ。今では世界規模で密接に結びつく金融市場であるがゆえ、欧州以外の金融機関や企業においても、引き続き、MiFIDⅡの影響について、注視していく必要があるだろう。


Date

作成日

2019.01.16

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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