作成日
:2019.02.08
2022.01.27 15:17
オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investment Commission)【以下、ASICと称す】は2月8日、英国のブレグジット(EUからの離脱)に備えた対応策を公表した。
英国はEUと離脱条件で合意するか否かを問わず、2019年3月29日にEUからの離脱を行う予定であることから、既に期限まで2か月を切っている状況だ。そのような環境下においてASICでは、ブレグジット動向を注視していくと共に、英国金融行動監視機構(Financial Conduct Authority)【以下、FCAと称す】や、イングランド銀行(Bank of England)【以下、BoEと称す】及びオーストラリアの他の金融当局と、綿密なコンタクトを図り、合意なき離脱となることも想定したブレグジットがもたらす影響を見極めることに加え、その対応策を策定してきたとのことである。
ブレグジットへの対応策を公表することに関し、ASICの委員長を務めるSean Hughes氏は以下のようにコメントしている。
我々は、英国が合意なき離脱となった際の影響を踏まえて、オーストラリア金融市場の混乱を避けるべく、英国の金融当局と緊密に連携しながら万全な対応を進めております。我々とFCAは、取引情報蓄積機関(Trade Repository、デリバティブ取引情報を規制当局へ報告する機関)と格付け機関に関する新たな覚書(MoU)を締結すると共に、オルタナティブ投資ファンドに関する既存のMoUの更新も行っております。また、BoEとの間でも、決済機関に関する情報共有協定を更新する見通しでもあります。
Sean Hughes, Commissioner of ASIC - ASICより引用
英国がEUから離脱した後には、FCAの権限強化を図り、現在欧州証券市場監督局(European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が規制及び監督を行う格付け機関やベンチマーク開発会社、取引情報蓄積機関などへの監督権限をFCAに持たせる見通しとなっている。またBoEに関しても、これまでESMAが担っていた機能を新たに遂行していく見込みである。そのためASICでは、ブレグジットに備えた対応策の一環として、権限強化がなされる見込みのFCAなど、英国金融当局との更なる関係性強化を図る予定だ。なお、ASICによれば、オーストラリアの中央銀行であるオーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia, RBA)を含めオーストラリアの規制当局は、金融機関が直面する信用・市場・オペレーションといったリスクアセスメントをBoEと協働して実施していく意向とのことである。
release date 2019.02.08
ギリシャの財政破綻によりユーロ危機や金融規制をめぐる大陸諸国との対立のため深刻な金融危機に陥る可能性が高まりEUに対する信頼感が低下している。英国では2016年6月にEU残留の賛否を問う国民投票が行われ、離脱支持が51.9%を占める結果となり、メイ首相は2017年3月29日にリスボン条約第50条を発動した。この条約に基づき2年間にわたって離脱交渉が行われてきたが、2019年3月29日に英国はEUから離脱する見込みであり、英国経済は大きな打撃を受けることが想像されている。ブレグジットにより、世界の金融市場に混乱が波及する可能性が懸念されており、オーストラリアの金融サービスの監督機関であるオーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、英国のEU離脱の影響によっておこる金融市場の混乱を回避するため、英国金融行動監視機構の権限強化など英国の金融規制当局と緊密に協力して対策を講じているが、英国のブレグジットがもたらす為替への影響は今後のイギリス経済やEU経済に大きな影響を与えるだろう。
作成日
:2019.02.08
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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