作成日
:2019.02.08
2021.08.31 15:27
仮想通貨の海外ニュースメディアであるCoinDeskは、特定のGmail(Googleのウェブメールサービス)アドレスから、インターコンチネンタル取引所(Intercontinental Exchange)【以下、ICEと称す】が手がける新しい仮想通貨取引所、Bakktを装った詐欺メールを今月6日に受け取ったことを明らかにした。
「Bakkt News!」と題されたこの詐欺メールの内容は、3月12日にBakktがサービス開始を予定していることや、同社が第2回の投資ラウンドとして5,000万ドルの資金調達を目標に公募を行っていることが記載されている。このメールが、対象者を偽のサイト(bakktplatform.io)へ誘導するための導線となっており、ウェブサイト上では投資家を募集する旨の宣伝文が記され、参加するための登録を行うという名目で、投資家の名前やメールアドレスなどの個人情報の入力が促されるという。最終的にこれらのプロセスが完了すると、投資資金を送金するビットコインアドレス(Bitcoin Address)が表示され、同時に利益分配を受け取るためのアドレスの提示が求められるようだ。
これまで、Bakktは、サービス開始時期に関しては特に明言していないものの、少なくとも、偽のメールやウェブサイトが提示する3月12日のサービス開始は現実的に難しいといえるだろう。現在、Bakktは、仮想通貨を対象とした先物商品をリスティングするために米商品先物取引委員会(Commodities and Futures Commission)【以下、CFTCと称す】の承認を待っている状況で、通常の手順では、まずBakktの提案に対する意見を一般公募するために30日間の公示期間が設けられ、その後、数日間のレビュー期間を経て、ようやく最終的な可否が決定するCFTCコミッショナーによる投票に移行することができる。そもそも、CFTCは、Bakktの提案に対する公示については未だ発表しておらず、このプロセスの始まりすら見えていないため、Bakktのサービス開始時期はそれほど近くないことが予想される。
加えて、わずか2か月前に1億8,250万ドルの資金調達に成功したBakktが、この時期に第2回の投資ラウンドを実施することは、あまりにも不自然だといえる。仮に本当に資金が必要だったとしても、米国当局の管理下にある大手企業が、個人情報を提示する簡単な手続きのみで、リスクが伴う投資に一般市民を巻き込むとは考え難く、投資手段がビットコインに限られている点も説明がつかない。これに関して、ICEの広報担当は、ウェブサイトが偽物であることを既に確認しており、ICEがこのような手段で資金公募を告知しないことも証言している。
このウェブサイトの構造は巧妙で、投資受付を2月25日に締め切るとの文言やBakktの新しいプラットフォームが最終テスト段階に迫っているなどの説明により、機会損失を恐れる投資家の心理に働きかけ、送金を誘導するように仕組まれているという。更に、検討する投資家に対して、Bakktのサービス開始予定日から3日以内(つまり3月15日まで)に資金を返金することを約束して、言葉巧みにターゲットの気を引いているようだが、CoinDeskは、くれぐれも資金を送金しないよう読者に警告している。
release date 2019.02.08
最近、仮想通貨業界では、仮想通貨の盗難を狙った悪質なフィッシング詐欺が問題となっており、関連企業や投資家の悩みの種となっている。先日も、人気のウォレットサービスとして広く利用されているMyEtherWalltとElectrumで、セキュリティアップデートを装い、ユーザーに有害なアプリケーションをインストールさせる手口の詐欺が発生していることが報告されたばかりだ。近年では、仮想通貨関連の詐欺も巧妙化しており、本物と見分けがつかないデザインのウェブサイトが用意されたり、公式のSNSアカウントをハックして嘘の情報を流すことでユーザーを陥れるケースなども散見される。対策としては、SSLサーバー証明書を取得することや、メールや電話、チャットなど複数の手段で運営企業に問い合わせるなど、様々な方法が考えられるが、どちらにせよユーザー側が高い意識を保つ必要がある。ICEおよびBakktの仮想通貨業界参入は注目度も高く、期待のプロジェクトとなっているだけに、詐欺被害の拡大が心配されるが、業界やコミュニティは注意を喚起することで一般投資家の保護に努めてほしい。
作成日
:2019.02.08
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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