作成日
:2019.01.14
2021.08.31 15:27
今月11日、日本の金融庁(Japan Financial Services Agency, JFSA)は、これまでみなし業者として国内での事業を継続させていたコインチェック株式会社(本社:東京都渋谷区渋谷3-28-13 渋谷新南口ビル3F
)【以下、コインチェックと称す】に対し、仮想通貨交換業のライセンスを付与したことを発表した。金融庁は、昨年1月にコインチェックがハッキング被害を受け、ネム(NEM)が不正流出した事件以来、同社への立入検査を実施しており、2度の業務改善命令を出している。これを受けてコインチェックは、経営体制の見直しやセキュリティの強化に力を入れるなど、事業の改善を計ることで正式な仮想通貨交換業者としての登録を目指してきた。また、昨年4月に国内大手の金融会社であるマネックスがコインチェックを買収したが、買収後もコインチェックがリーダーシップをとり本格的に仮想通貨取引所事業の再開に向けた活動が継続的に進められていた。
マネックスのCEOである松本大氏は、コインチェックの事業再開の目途ついて、当初は2ヶ月以内での実現を予測していたものの、金融庁のゴーサインがなかなか出ない状況が続いていたようだ。松本氏によると、昨年8月の決算時点で、コインチェックはいつでも再開できる状態であったが、結局、進展があったのは、営業停止から半年以上経過した10月末だったという。その後、コインチェックは、新規口座の開設を再開し、続く11月には、取り扱いのある全通貨での取引を許可している。
これまで、コインチェックの他に株式会社LastRoots、みんなのビットコイン株式会社といった取引所が、一時的な営業を許可されるみなし業者として活動を継続させている。これらのみなし業者は、金融庁の基準に沿うように運営体制やシステムを見直す猶予を与えられている立場にあり、正式な登録が済むまでは、新規顧客の獲得のための広報活動や仮想通貨のリスティングによる事業拡大を図ることは禁止されているという。金融庁は、このルールに関して、企業や利用者の認知度が低いことを問題に上げており、市場の安全性の面で現状に懸念を呈しているようだ。一方、今回晴れて全面的な活動が再開となるコインチェックは、金融庁のお墨付きを得たことで、今後は国内市場の開拓に大きく動き出すことが予測される。
今回のコインチェックに関する朗報を受けて、松本氏はマネックスが運営する仮想通貨メディアのインタビューで以下のようにコメントしている。
大変喜ばしい。ようやくスタートラインに立った感じです。グループとして、世界の仮想通貨マーケットの健全な発展に貢献していきたい。
松本大, CEO, マネックスグループ株式会社 - マネックス仮想通貨研究所より引用
コインチェックの事業の将来性に関して、松本氏は以前から、営業が再開できれば早い段階で黒字化できるとの見解を示している。マネックスによるコインチェックの買収は、無論、国内市場での勝算があっての判断だろうが、当時とは状況が激変してしまっただけに、復活までの道のりは険しいものになるかもしれない。しかしながら、今年の第1四半期までに、マネックスは米国仮想通貨市場へ進出することを昨年末に表明しており、仮想通貨関連事業の展開に本気であることは変わらないようだ。
release date 2019.01.14
金融庁に登録のある仮想通貨交換業者は、同時に正式な自主規制団体として指名されている日本仮想通貨交換業協会【以下、JVCEAと称す】への入会が義務付けられているという。また、最近、JVCEAは、対象となる会員をみなし業者にまで広げるために第二種会員の会員区分を設けたことを発表している。コインチェックは、今回の金融庁への登録に先駆けて、株式会社LastRoots、みんなのビットコイン株式会社、東証マザーズに上場するユナイテッドグループのコイネージ株式会社、LINEグループのブロックチェーン事業を担うLVC株式会社などと共に、JVCEAへの登録を済ませている。会員企業は、JVCEAが定めた自主規制を遵守する義務があり、現在検討されているレバレッジ制限の統一やシステムのセキュリティ設計、顧客資産の運用スキームに関して、将来的に影響される可能性がある。JVCEAは、金融庁を中心とした政府機関の対応が間に合わない部分での連携を求められており、市場の安全性を高めることが期待されているが、今後はコインチェックのようなハッキング被害を再発させないよう努めてもらいたいものだ。
作成日
:2019.01.14
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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