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欧州と豪州FXブローカー、2018年取引高で明暗

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update 2022.01.27 17:12
欧州と豪州FXブローカー、2018年取引高で明暗

update 2022.01.27 17:12

欧州当局による規制強化策の影響が色濃く反映

欧州当局が次々に打ち出す規制強化策により、FX業界の勢力図に変化の兆しが見え始めている。EU(欧州連合)域内のブローカーの多くが苦戦を強いられる中、豪州を地盤とするブローカーは取引高を増加させ勢力を拡大中だ。

まず、欧州証券市場監督局(The European Securities and Market Authority)【以下、ESMAと称す】による新規制の影響が如実に反映されているEU地盤ブローカーの1社が大手海外FX・CFDブローカーであるFXCM Group, LLC(本社:20 Gresham Street, 4th Floor, London EC2V 7JE, United Kingdom[1])【以下、FXCMと称す】だ。2017年第1四半期の月間平均取引高は1,940億ドルと業界5番手につけていた。それが、2018年第1半期には2,333億ドルと取引高は増加したものの順位を1つ落としている。その後は取引高も低迷し、第2四半期において1,990億ドル、第3四半期には1,740億ドルまで落ち込み、業界内順位も7番手に後退を余儀なくされ苦しい局面を迎えていることが伺えよう。

一方で、EU当局の規制強化が欧州拠点のブローカーに大きな影響を及ぼす中、豪州地盤のブローカーへの影響は限定的なものとなっている。複数のブローカーが2018年第2、第3四半期において取引高を拡大させ勢力を増しており、その代表格がIC Marketsブランドを持つInternational Capital Markets Pty(本社:Level 6 309 Kent Street Sydney NSW 2000 AUSTRALIA[2])【以下、IC Marketsと称す】だ。IC MarketsのFX平均取引高は、2017年第4四半期に2,850億ドル、2018年第1四半期に3,290億ドルとなり、デンマーク拠点の投資銀行Saxo Bank Groupに次ぐ業界第3位であった。それが、2018年第2四半期には3,999億ドル、第3四半期に4,280億ドルと取引高が順調に増加し、Saxo Bank Groupを抜き2番手まで上りつめている展開だ。2018年第2四半期には、EU域内の個人投資家向けバイナリーオプション取引が禁止され、続く第3四半期において、CFD取引制限が課せられ始めた時期と重なる中での取引高拡大を実現させているが、そのような環境下での取引高拡大は注目に値しよう。

更に、従来EU域内のブローカーと取引を行っていた個人投資家の多くが、足元ではEUの規制枠組みから外れる豪州などの国や地域へリスクを求め逃避している。また、ハイレバレッジ取引を求めオフショア市場へトレーダーが流出すると共に、欧州投資家のオフショア市場への資金流出が確認されている。それら投資家ニーズを的確にくみ取る形で、豪州最大のリテールFXブローカーであるPepperstone Group Limited(本社:530 Collins St, Melbourne VIC 3000, Australia[3])【以下、Pepperstoneと称す】もIC Marketsの月間平均取引高推移とほとんど同様の動きとなっていることが見てとれる。2017年第4四半期が1,670億ドル、2018年第1四半期は2,160億ドルとなり、業界8番手に位置づけていたが、2018年第3四半期には2,120億ドルで業界5位にまでのし上がっている。特に2018年第2、第3四半期においては、EU地盤のブローカーがFX取引高を減少させる中、Pepperstoneは月間平均取引高が飛躍的に拡大はしていないものの高水準を維持すると共に業界内順位を確実に上昇させており、PepperstoneはESMAの新規制導入の恩恵を受けたとより簡単に結論付けられよう。

また一般的には、いくつかのブローカーが市場で優位を保つことが多いものの、業界トップの地位は目まぐるしく変わる傾向にある。2018年の市場環境に関しては、欧州当局による矢継ぎ早に放たれる規制強化策が、欧州圏内におけるFX業界の勢力バランスにも影響を与えていると見られている。ESMAは、2018年8月1日より、CFDの取引や流通・マーケティングを制限すると共にレバレッジ制限を課す新規制を導入した。現状においては、ESMAによるCFD規制の期間延長が発表されており、ESMAが規制強化の手を緩める意向はない模様だ。

そのような環境下でも1年を通じて優位性を維持しているのが、英国・ロンドンを拠点とするFX・CFDブローカーであるIG Group(本社:Worting House, Church Lane, Basingstoke, Hampshire, RG23 8PX, UK[4])だ。IG Groupの月間平均取引高を見ると、2017年第4四半期から2018年第3四半期までコンスタントに業界トップの座に君臨し、ほとんどの期において2番手のブローカーと大きく差を広げていることが分かる。市場の予想通り、ESMA新規制の影響が明確に出始めると見込まれた2018年第3四半期には、ブローカーの取引高が軒並み最低水準に低迷する中、IG Groupだけは堅調を保ち月間平均取引高は依然として4,600億ドルを維持している。特に2018年第1四半期に至っては、月間平均取引高は5,740億ドルをたたき出しており、欧州ブローカーの多くが苦戦を強いられる中、トップブローカーとして不動の地位を確立している。

EU当局による規制強化が継続される中、欧州域内のブローカーの中には、引き続きハイレバレッジ取引を可能とするプロトレーダー向けサービスの充実を図るブローカーや、新市場開拓に急ぐブローカーも出始めている。ブローカー各社が打ち出す戦略の違いにより、今後発表される業績が良好なものとなるか否か明暗を分けることにもなりそうだ。

release date 2018.12.18

出典元:

ニュースコメント

ESMA規制が明暗を分ける

今年の欧州と豪州ブローカーの取り組みについてみていきたい。豪州のPepperstoneはPlayMakerというリスク管理ツールをリリースする等、積極的な経営と新商品開発を行い、2017年度と比較して売上高が大幅に上昇している。また、ブレグジットに備え、ドイツ連邦金融監督庁へライセンスを申請している。一方欧州のIG Groupは、予想はされていたものの、ESMAの規制が実施された8月以降の英国とEU域内の売上高が減少している。しかし、アジアパシフィック地域などESMAの規制を受けない地域の売上高が好調であり、英国の顧客のESMA規制外地域への移行や、ハイレバレッジ取引が可能なプロフェッショナル階層での顧客数も増加している。また同社もブレグジットに備えドイツ連邦金融監督庁からライセンスを取得し、全米先物協会の会員に承認されるなど、グローバルベースでの戦略に動いているという。その他にもさまざまな戦略が行われているが、2018年はブローカー各社にとって、ESMAの規制強化やブレグジットへの対応に追われた年といえそうだ。2019年も引き続き豪州ブローカーが好調さを持続するのか、欧州ブローカーが巻き返しを図るのか、来年度の展開を見守っていきたい。


Date

作成日

2018.12.18

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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