Select Language

オフショアブローカー、欧州圏から資金流入が継続

オフショアブローカー、欧州圏から資金流入が継続

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS

  • X
  • facebook
  • LINE
  • RSS
update 2022.01.27 17:15
オフショアブローカー、欧州圏から資金流入が継続

update 2022.01.27 17:15

ESMA新規制導入後、投資家のオフショア市場への流出が鮮明に

欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が8月に新規制を導入後、欧州当局の規制枠組みから外れる複数のオフショアブローカーに、EU(欧州連合)圏内から月間200万ユーロから300万ユーロの預金が流入していることが明らかとなった。

また、関係筋によれば、ベリーズやマーシャル諸島、バヌアツにてライセンスを保有するブローカーは、カード決済サービスを提供する決済プロバイダーを見つけるのに苦慮しており、事業の舵取りが非常に難しい状況に陥ってる模様だ。これは、2018年半ばより大手クレジットカード会社のマスターカードや、VISAが欧州の規制当局と協働する形で欧州で事業を営む未認可ブローカーの取締りを強化しているほか、オンライン決済サービス会社であるペイセーフグループが運営するSkrillも未認可ブローカーへ通知を行いライセンス掲示を求めていることが大きく影響しているものと考えられる。

未認可ブローカーへの規制を強化するEUでは、2015年に世界に衝撃を与えたパナマ文書流出以降、複数の国・地域をブラックリスト化し監視の目を光らせている。まず、その筆頭がマーシャル諸島とアラブ首長国連邦を要注意国として位置づけ、次にバヌアツ、クック諸島、バミューダ、ケイマン諸島、ジャージー、マン島をグレイリスト化し判断を留保している模様だ。一方で、セーシェルやモーリシャスといった規制当局は、より顕著に規制を強化しているように見える。

これらのオフショア地域の規制下にある全てのブローカーに対し、決済サービス規制が適用されるものではないものの、ブローカーの中にはアクワイアラ(クレジットカードを取り扱う加盟店の管理などを行う企業)からサービス提供を受けることも難しいところが出てきているようである。また、カード利用を規制されているため、銀行振込での入金しか許されていないブローカーも出てきており、EU圏内から流入する月間200万ユーロから300万ユーロの資金も、銀行振込による入金がほとんどである。

ただし、オフショアブローカーのうち、カード決済ニーズに対応するアクワイアラへのアクセスが難しいところが出てきているが、顧客からの継続的な資金流入があることから、事業運営を思いとどませるまでには至っていないようである。ESMAにとっては、様々な規制を講じているものの、EU圏内のトレーダーがオフショア市場へ流出していくことは、非常に危惧される事態であると言えよう。ブローカーの中には、ESMAに対して、顧客がオフショア市場へ逃避するリスクに関し警戒感を高めており、複数の経営者も協議を重ね課題を共有しているものの価値ある成果を上げられずにいる模様だ。

2018年11月初頭、3か月ごとに見直しが行われるバイナリーオプション取引禁止措置に関して、ESMAは規制の期間延長(7月2日の規制導入から2度目)の決定を下している。各国規制当局は、今後も先導して永続的にバイナリーオプション取引を禁止する意向であるように見える。ドイツ連邦金融監督局(Die Bundesanstalt für Finanzdien Stleistungsaufsicht, BaFin)は11月29日、個人投資家向けにバイナリーオプション取引を提供することを常に禁止する決断を下している。[1]リスク度返しにいとも簡単に利益を上げられるイメージを抱かせてバイナリーオプション取引を勧誘することを減らすという観点からは、このBaFinの決断は賢明な判断だと言えよう。

一方で、ESMAがもう一つ導入した新規制であるFXやCFD、仮想通貨取引などのレバレッジ制限に関しては、トレーダーがオフショア市場へ回避してしまっている事実から、規制の効果がより懸念されるところである。仮にレバレッジ制限に関しても永続的に規制が行われた場合、ESMAは常にトレーダーがオフショア市場へ流出する課題を抱くことになろう。EU圏内の規制下にある企業の中には、既に顧客がオフショア市場へ流出することへの影響を受け始めている。仮にESMAがトレーダーやブローカーのフィードバックに耳を傾けなければ、トレーダーのオフショア市場への流出は続き、ESMAがレバレッジ制限を開始した8月1日以前よりも投資家を十分に保護することは難しい状況となろう。

release date 2018.11.30

出典元:

ニュースコメント

ESMA新規制で変わり始めるFX業界

8月から導入されたESMAの新規制による様々な影響は、時が経つにつれてより明らかになってきており、規制の影響度合いの大きさを見誤り、その後の業績が大きく落ち込むブローカーも少なくない。先日発表されたCMC Marketsの業績でも、ESMAの新規制の影響により収益が大幅に悪化していることが明らかになった。また、欧州では10月の時点で、多くのトレーダーが高レバレッジを追い求めてオフショアへとシフトする動きが確認されており、ブローカー側もこの需要に応えるべくオフショア法人を設立し始める動きが見られていた。また、ESMAも、11月初旬に公表した意見書において、海外FXブローカーがESMAによる新規制への対策手段のひとつとして、規制が比較的緩いオフショア法人へと投資家を誘導するようなマーケティングを行っていることを認識していることを述べていた。今回、この問題が明確な数字として現れた形となったが、今後新たな課題としてESMAが取り組んでいくのか、はたまた引き続き規制を強行し続けるのか、動向を見守る必要がありそうだ。


Date

作成日

2018.11.30

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

arrow
プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

この記事は、お役に立ちましたか?

ご覧いただきありがとうございます。Myforexでは、記事に関するご意見・ご感想をお待ちしています。
また、海外FX・仮想通貨の経験が豊富なライター様も随時募集しております。

お問い合わせ先 [email protected]

貴重な意見をいただきありがとうございます。
貴重な意見をいただきありがとうございます。

関連記事

アクセスランキング

仮想通貨SOLVの将来性は?ビットコインのステーキングプロトコルSolv Protocolを解説

仮想通貨(暗号資産)SOLVは、ビットコイン(BTC)のステーキングプロトコル「Solv Protocol」のネイティブトークンです。当記事では、仮想通貨SOLVの特徴やSNSでの評判、将来性、トークンの使い道などを解説します。
update2025.01.10 19:30

【無料ツールも】MT4/MT5で複数チャートを同期スクロールし、分析を劇的に変える方法!

MT4/MT5ではインディケータを使うことで複数チャートを同期してスクロールできます。この記事ではMT4/MT5の複数チャートを同期してスクロールできるインディケータについて、実際に使ってみた感想も交えながら紹介していきます。
update2024.11.07 19:00

GMOコインからBybitに送金してみた!送金手数料や最低送金額なども解説

Myforex編集部では、GMOコインからBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.12.24 19:30

MT4/MT5でも日本時間を簡単に表示できる!日本との時差については図解で理解しておこう

MT4/MT5では通常、表示される時間が日本時間から6時間ほどずれています。頭の中で「表示される時間 + 6時間」などと計算すれば、日本時間に変換可能です。しかし慣れないうちは少し不便なので、日本時間を表示させる外部ツールも活用されています。
update2024.11.27 19:30

bitbankからBybitに送金してみた!トラベルルールの対応状況も解説

Myforex編集部では、bitbank(ビットバンク)からBybit(バイビット)に仮想通貨を送金してみました。この記事では実際に送金してみた経験などを交えながら、送金手順やおすすめの送金通貨、トラベルルールの対応状況などを紹介します。
update2024.11.28 19:00

Bybitからbitbankに送金してみた!送金手数料やトラベルルールについて解説

Myforex編集部では、Bybit(バイビット)からbitbank(ビットバンク)に仮想通貨(暗号資産)を送金してみました。この記事では、実際に送金してみた経験をもとに、送金手順やおすすめの送金通貨などを紹介します。
update2024.12.27 19:00

初心者でも安心!MT4ストラテジーテスターの使い方完全ガイド ~EA活用とバックテストで一歩先のトレードへ~

MT4でEAを使って自動売買をするならストラテジーテスターにより利益が出るかテストが必要です。本記事では、ストラテジーテスターの実践的な使い方や疑問を感じやすいポイントを解説します。
update2025.01.10 19:00

XMTradingがおみくじプロモ2025を実施!総額1,000万円越えのキャンペーン

海外FX業者XMTradingは、1月2日~1月31日までの期間限定で「おみくじプロモ2025」を実施すると発表しました。賞金総額は1,000万円以上であり、抽選で100名に最大75万円の現金がキャッシュバックされます。
update2025.01.06 19:00

このローソク足あと何秒!?残り時間を表示するMT4/MT5のインディケータを比較

MT4やMT5でトレードする際、インディケータを使えばローソク足が確定するまでの残り時間を表示できます。アラート機能付きや残り時間以外の情報も表示するインディケータもあります。本記事では、MT4・MT5にローソク足の残り時間を表示するインディケータを紹介します。
update2024.12.12 19:30

SONYのレイヤー2「Soneium」がIP侵害を理由にミームコインをブラックリスト化

ソニーグループによるイーサリアムレイヤー2のSoneium(ソニューム)が、メインネットローンチの同日に、IP侵害のあるミームコインをブラックリスト化し、SNSで話題となっています。本記事では、Soneiumの概要やブラックリスト化の内容、SNSでのユーザーの声などを解説します。
update2025.01.17 19:00
youtube youtube

免責事項:Disclaimerarw

当サイトの、各コンテンツに掲載の内容は、情報の提供のみを目的としており、投資に関する何らかの勧誘を意図するものではありません。
これらの情報は、当社が独自に収集し、可能な限り正確な情報を元に配信しておりますが、その内容および情報の正確性、完全性または適時性について、当社は保証を行うものでも責任を持つものでもありません。投資にあたっての最終判断は、お客様ご自身でなさるようお願いいたします。

本コンテンツは、当社が独自に制作し当サイトに掲載しているものであり、掲載内容の一部または、全部の無断転用は禁止しております。掲載記事を二次利用する場合は、必ず当社までご連絡ください。

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE

Myforexでは、このウェブサイトの機能向上とお客様の利便性を高めるためにクッキー使用しています。本ウェブサイトでは、当社だけではなく、お客様のご利用状況を追跡する事を目的とした第三者(広告主・ログ解析業者等)によるクッキーも含まれる可能性があります。 クッキーポリシー

クッキー利用に同意する
share
シェアする
Line

Line

Facebook

Facebook

X

Twitter

キャンセル