作成日
:2018.11.30
2022.01.27 17:15
欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】が8月に新規制を導入後、欧州当局の規制枠組みから外れる複数のオフショアブローカーに、EU(欧州連合)圏内から月間200万ユーロから300万ユーロの預金が流入していることが明らかとなった。
また、関係筋によれば、ベリーズやマーシャル諸島、バヌアツにてライセンスを保有するブローカーは、カード決済サービスを提供する決済プロバイダーを見つけるのに苦慮しており、事業の舵取りが非常に難しい状況に陥ってる模様だ。これは、2018年半ばより大手クレジットカード会社のマスターカードや、VISAが欧州の規制当局と協働する形で欧州で事業を営む未認可ブローカーの取締りを強化しているほか、オンライン決済サービス会社であるペイセーフグループが運営するSkrillも未認可ブローカーへ通知を行いライセンス掲示を求めていることが大きく影響しているものと考えられる。
未認可ブローカーへの規制を強化するEUでは、2015年に世界に衝撃を与えたパナマ文書流出以降、複数の国・地域をブラックリスト化し監視の目を光らせている。まず、その筆頭がマーシャル諸島とアラブ首長国連邦を要注意国として位置づけ、次にバヌアツ、クック諸島、バミューダ、ケイマン諸島、ジャージー、マン島をグレイリスト化し判断を留保している模様だ。一方で、セーシェルやモーリシャスといった規制当局は、より顕著に規制を強化しているように見える。
これらのオフショア地域の規制下にある全てのブローカーに対し、決済サービス規制が適用されるものではないものの、ブローカーの中にはアクワイアラ(クレジットカードを取り扱う加盟店の管理などを行う企業)からサービス提供を受けることも難しいところが出てきているようである。また、カード利用を規制されているため、銀行振込での入金しか許されていないブローカーも出てきており、EU圏内から流入する月間200万ユーロから300万ユーロの資金も、銀行振込による入金がほとんどである。
ただし、オフショアブローカーのうち、カード決済ニーズに対応するアクワイアラへのアクセスが難しいところが出てきているが、顧客からの継続的な資金流入があることから、事業運営を思いとどませるまでには至っていないようである。ESMAにとっては、様々な規制を講じているものの、EU圏内のトレーダーがオフショア市場へ流出していくことは、非常に危惧される事態であると言えよう。ブローカーの中には、ESMAに対して、顧客がオフショア市場へ逃避するリスクに関し警戒感を高めており、複数の経営者も協議を重ね課題を共有しているものの価値ある成果を上げられずにいる模様だ。
2018年11月初頭、3か月ごとに見直しが行われるバイナリーオプション取引禁止措置に関して、ESMAは規制の期間延長(7月2日の規制導入から2度目)の決定を下している。各国規制当局は、今後も先導して永続的にバイナリーオプション取引を禁止する意向であるように見える。ドイツ連邦金融監督局(Die Bundesanstalt für Finanzdien Stleistungsaufsicht, BaFin)は11月29日、個人投資家向けにバイナリーオプション取引を提供することを常に禁止する決断を下している。 リスク度返しにいとも簡単に利益を上げられるイメージを抱かせてバイナリーオプション取引を勧誘することを減らすという観点からは、このBaFinの決断は賢明な判断だと言えよう。
一方で、ESMAがもう一つ導入した新規制であるFXやCFD、仮想通貨取引などのレバレッジ制限に関しては、トレーダーがオフショア市場へ回避してしまっている事実から、規制の効果がより懸念されるところである。仮にレバレッジ制限に関しても永続的に規制が行われた場合、ESMAは常にトレーダーがオフショア市場へ流出する課題を抱くことになろう。EU圏内の規制下にある企業の中には、既に顧客がオフショア市場へ流出することへの影響を受け始めている。仮にESMAがトレーダーやブローカーのフィードバックに耳を傾けなければ、トレーダーのオフショア市場への流出は続き、ESMAがレバレッジ制限を開始した8月1日以前よりも投資家を十分に保護することは難しい状況となろう。
release date 2018.11.30
8月から導入されたESMAの新規制による様々な影響は、時が経つにつれてより明らかになってきており、規制の影響度合いの大きさを見誤り、その後の業績が大きく落ち込むブローカーも少なくない。先日発表されたCMC Marketsの業績でも、ESMAの新規制の影響により収益が大幅に悪化していることが明らかになった。また、欧州では10月の時点で、多くのトレーダーが高レバレッジを追い求めてオフショアへとシフトする動きが確認されており、ブローカー側もこの需要に応えるべくオフショア法人を設立し始める動きが見られていた。また、ESMAも、11月初旬に公表した意見書において、海外FXブローカーがESMAによる新規制への対策手段のひとつとして、規制が比較的緩いオフショア法人へと投資家を誘導するようなマーケティングを行っていることを認識していることを述べていた。今回、この問題が明確な数字として現れた形となったが、今後新たな課題としてESMAが取り組んでいくのか、はたまた引き続き規制を強行し続けるのか、動向を見守る必要がありそうだ。
作成日
:2018.11.30
最終更新
:2022.01.27
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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