作成日
:2018.11.23
2021.08.31 15:27
国際銀行間通信協会(Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)【以下、SWIFTと称す】が、ニューヨーク拠点のフィンテック企業であるMonetaGoとパートナーシップ契約を締結したことが明らかとなった。今後、ブロックチェーン関連アプリケーションソフトの運用テストを試みる予定だ。
MonetaGoは金融機関向けにブロックチェーン関連サービスを提供している企業で、情報プロセスを簡素化するテクノロジーを活用し、2015年に北アイルランドの首都ベルファストにビットコイン(Bitcoin)取引所を開設している。さらに、2017年からはインドの中央銀行であるインド準備銀行(Reserve Bank of India)と協働でビジネスを始めている。
SWIFTとMonetaGoのパートナーシップ契約は、1991年にインドの複数の地元銀行と共同で設立されたSWIFTのインド支店であるSWIFT IndiaとMonetaGoの間で締結されたものである。このパートナーシップ契約を通じ、SWIFTはインドの地元銀行複数行にてブロックチェーン関連アプリケーションソフトの運用テストを試みる予定とのことであり、併せてSWIFTとMonetaGo両社のネットワーク統合も行われる見込みだ。
SWIFTとMonetaGoのパートナーシップ契約締結に際し、SWIFT IndiaのCEOであるKiran Shetty氏と、MonetaGoのCEOであるJesse Chenard氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
我々は、取引のデジタル情報化を図ることで、インドの金融業界のお客様に対し、付加価値の高いサービスを提供することにコミットしております。MonetaGoの高い専門性を活用することで、重複融資をなくしたり、GST(インド物品・サービス税)の運用を円滑にするシステムであるe-way Bill(電子運送証明書、物品の移動時に課せられるGST額を管理、徴収する仕組み
)の信憑性の確認といった不正行為を低減させるソリューションを提供できるようになることが期待されます。そのため、我々は自信をもってMonetaGoとのパートナーシップ契約を締結するに至りました。Kiran Shetty, CEO of SWIFT India - FinanceMagnatesより引用
インド政府による政策推進とテクノロジーの革新を背景として、インドがデジタルインフラストラクチャーの構築に注力していることから、大企業が関連製品・サービスの開発を手掛け、イニシアティブを握ろうとすることは、合理的な経営判断だと考えられます。SWIFTとの協働により、概して銀行業界のお客様が活用できる価値ある情報を提供できるでしょう。
Jesse Chenard, CEO of MonetaGo - FinanceMagnatesより引用
SWIFTは、銀行間海外送金の主要ネットワークを構築し、1970年代から利用されている。しかしながら、SWIFTを利用したクロスボーダー決済は、非常に時間がかかり費用も高い。加えて、昨今はブロックチェーンテクノロジーを活用した決済サービス企業との競争が激化していることから、SWIFTが確立した国際送金分野における地位は脅威にさらされていると言えよう。
例えば、米国のリップル社はSWIFTの最大の競合相手であり、ブロックチェーンテクノロジーを活用した国際決済システムの構築を目指し、複数の銀行との提携を着実に進めている。リップル社のCEOであるBrad Garlinghouse氏は、最近シンガポールで開催されたカンファレンスにて、これまでSWIFTが手掛けてきたクロスボーダー決済サービスを今後は我々が担うことになるだろうと強気のコメントを残している。また今月初めには、SWIFTネットワークの技術的アップデートの際、数千の銀行がリップル社のサービスにアクセス可能になるなど、SWIFTとリップル社の提携の噂がインターネット上で広まり、一時リップルのユーザーの間で盛り上がりを見せていたが、これは単なる噂に過ぎず、後にSWIFTにより否定されている。
その一方で、SWIFTはGPI(Global Paymets Innovation)と呼ばれる新たな決済サービスを開発している。2017年よりこのGPIサービスの提供を開始しており、従来の決済システムと比較すると決済時間を大幅に短縮できることから、提携する銀行からも良い評価を受けているとのことだ。また、複数のグローバル銀行が参加し、SWIFTのブロックチェーンによる機能検証(PoC)も行っているが、この機能検証の効果は実証されつつはあるものの、今後一定規模以上のサービス利用や、SWIFTにとって極めて重要なアプリケーションと位置付けるには、もう少し時間を要する見込みである。 テクノロジーの発展により、競合との脅威にさらされるSWIFTが、今後如何なる革新的なサービスを提供するか注目されよう。
release date 2018.11.23
SWIFTとリップル社のどちらが将来的に国際送金のスタンダード手段として利用されるかという議論は、今までも様々なところで行われている。ベルギーに本拠を置くSWIFTは、200以上の国と地域で1万1,000以上の銀行、証券会社、市場インフラ、事業法人が参加する協同組合であり、世界各国の銀行間取引の情報インフラを担い、そのグローバルなネットワークは、これまで世界の金融インフラとして機能してきた。その独占的地位を脅かしているのは、ブロックチェーン技術を用いた国際決済システム、リップルネットワークを構築しているリップル社である。遅くてコストが高いSWIFTに対抗し、銀行や金融機関の口座を介さずに、容易に迅速で安全、安価なデジタル送金を可能にしている。リップルネットワークには、三菱UFJフィナンシャル・グループや世界70カ国にネットワークを持つ英Standard Chartered PLCなどの世界の金融大手も参加している。「xRapid」の商用リリースや、送金ソリューション「Ripple Net」の需要拡大などが進むリップル社が快進撃を続けているようにも見えるが、SWIFTも先月21日に、Microsoft社との提携を発表し、大きな話題となっている。Microsoftが提供するAzureのクラウドにSWIFTの決済ネットワークが統合され、従来よりも早く効率的で安全な送金システムを銀行や企業などに提供が可能となる。これまでリップル社の提供するxRapidなどの台頭で比較されてきたSWIFTだが、すでに国際送金のスタンダードとして使用されている点では有利であり、またMicrosoft社との提携や今回発表のあったMonetaGoとのパートナーシップ契約の締結により、SWIFTとリップル社のどちらが優位に立っていくのか予測できない。今後の両者の動向に引き続き注目していきたい。
作成日
:2018.11.23
最終更新
:2021.08.31
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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