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高レバレッジを求めるトレーダーがオフショアへシフト

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update 2022.01.27 17:33
高レバレッジを求めるトレーダーがオフショアへシフト

update 2022.01.27 17:33

欧州当局の規制網を掻い潜るトレーダーとブローカー

顧客保護を目的とした、欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】の新規制が導入されて約3か月が経過するが、トレーダーやブローカーに与える影響の大きさが顕著に現れ始めている。トレーダーはレバレッジ制限という規制の網を掻い潜り、高レバレッジを追い求めてオフショアへシフトする一方、ブローカーもそういった顧客ニーズに伴い、オフショア法人を設立するなどの動きがみられている。

新規制により、多くのブローカーで8月の取引高が急減するなど影響は甚大で、証券取引所に上場するブローカーの中には、先行き見通しを引き下げるところも出てきているほどである。偶然であるか否かは定かではないが、ESMAによる新規制が導入された数週間後に、英国・ロンドンを拠点とするFX・CFDブローカーであるIG Group(本社:Cannon Bridge House, 25 Dowgate Hill, London, EC4R 2YA, UK[1])のCEOであるPeter Hetheringtonが辞任しており、この動きをESMAの新規制による影響度合いの大きさを見誤ったIG Group経営陣の失態とみる関係者もいる。

EU域内のブローカーは、欧州の新規制の枠組みのなかでコンプライアンスを遵守したビジネスモデルの転換を迫られる中、他社とは明確に差別化された戦略を打ち出し、革新的な独自の顧客サービスを提供し始めている。一般的にEU域内のブローカーの戦略傾向には2つのタイプがあり、EU規制下にあることをセールスポイントとし、安心、安全な取引を謳って世界中から顧客を獲得する戦略と、英国や、ドイツ、スペインといった特定の市場にフォーカスし、EU域内の顧客へのサービス提供に注力する戦略がみられる。前者は、高い取引高を維持するために、どんな手も打つ手法であり、後者は新規制を遵守する中でできる限りの対応を行う手法であるといえよう。さらにこれらのタイプに加え、3つ目のタイプが存在するが、上記2つの戦略を取り入れ、自社にとって有利な戦略を推し進めるところに特徴がある。現在、EU当局の規制下にあるブローカーの中で、キプロス証券取引委員会(CySEC)規制下でのオフショア法人を有していないブローカーはほぼなく、顧客がハイレバレッジ取引を求める中、規制の緩いオフショアに子会社を設立するケースが相次いでいる。一方、英国金融行動監視機構(FCA)規制下のブローカーは、新規制を遵守した経営のかじ取りに注力しており、自国市場へのサービス提供を重視し、コンプライアンスに則った形で積極的に新商品・サービスの開発を進めている。

ESMAは新たな規制の枠組みを発表して以降、個人投資家やブローカーから挙がってくる、規制により生じる変化・事象に関するフィードバックに耳を傾けていないように伺える。事実、多くのトレーダーが新規制の枠組みに関するニュースを受け、リスクをとった投資行動をとれなくなることに不満を募らせる一方、ブローカーも新たな規制環境の下、ビジネスモデルの大きな変更を余儀なくされながら経営を続けていくことに不安を抱えているのは確かである。ESMAが業界関係者の声に耳を貸さないことは、フランス金融市場庁(Autorite des marches Financiers)【以下、AMFと称す】が数週間前からウェブサイトに掲載している個人投資家宛ての通知を軽視しており、投資家ニーズとブローカー動向を的確に捉えていないといえるだろう。AMFは投資家保護を目的とした規制の網からどうにかして逃れようとするトレーダーたちに対し、オンライントレードプラットホームの利用を止めるように推奨している他、複数のブローカーが規制の緩いオフショアで口座を開設するよう顧客に提案している状況についても懸念を示している。

この件について、AMFの長官であるRobert Ophele氏は、以下のようにコメントしている。

規制当局が目指すのは、選ばれた数少ない者にCFDやバイナリーオプションのトレードを認めるのではなく、むしろ顕在化している損失リスクに対し投資家を保護することにあります。

Robert Ophele, Chairman of the AMF - AMFより引用

ただし、もし投資家の方から高レバレッジ取引を求めてきた場合、規制当局はいかに対処すべきか課題は残る。実際に、投資家はゼロカットシステムや投資家補償スキーム、さらにはレバレッジ制限と次々と新しい規制が打ち出されても、オフショア市場に拠点をおくブローカーに資金をシフトし、リスクをとったトレードを行いたいというニーズを抱いているだろう。これらの状況を踏まえると、ESMAやAMFは個人投資家のリスク志向を過少に見積もっているようにも見える。そしてその間にも、新たな未認可ブローカーが次々と誕生しており、企業のオーナーは、アフィリエイトを上手く行うための完璧な処方策をソーシャルメディアに自慢げに掲載し、高いコミッションを約束するとともに、アルゴリズム取引による大きな収益を期待させ顧客を惹きつけようと企んでいる。簡単な例を挙げると、オフショアで取引することで、月次3%の収益、友人を紹介したら15%の追加ボーナスもつくといった魅力的な取引やアフィリエイトを掲載し、収益をいとも簡単にあげられるようなイメージを抱かせることで、的確な投資判断が困難な投資経験の浅い個人投資家を説き伏せてしまうことは容易であろう。金融業界の長い歴史の中で、このような広告を利用した悪事を働く者が、顧客の資金を悪用しなかったことはなく、本来、メディアや規制当局がそのような悪意のある広告を警戒するよう呼びかける必要がある。こうした現状から、規制当局は投資家保護を謳うのであれば、投資家のリスク志向により敏感になるべきだと考えられる。

今まさに、レバレッジ制限のある欧州からオフショアへのシフトが起きている状況で、ESMAが投資家によるオフショア市場への逃避を規制しないことは、EU当局の規制下にある企業にとって、顧客離れがより鮮明となり、困難な状況に追い込まれるであろう。そして、EU当局の規制下にあるトレーダーは、リスクをとった高レバレッジ取引を好み、その環境を追い求めてすらいる。渡り鳥が暖かい気候を求めるように、今後トレーダーがハイレバレッジを求めオフショアへ流れ込むのか、投資家・ブローカー・規制当局それぞれの動向を見守る必要があろう。

release date 2018.10.19

出典元:

ニュースコメント

法規制のぬけ道を模索するいたちごっこ

8月に導入されたESMAによる規制は、投資家保護の観点から、レバレッジの引き下げや、ゼロカットシステムの適用、キャッシュバック等のボーナスの提供の廃止、マージンコールとロスカット規定、バイナリーオプションの提供の禁止など、幅広い項目に規制が適用された。こうした厳しい規制を突き付けられ、投機性を求めるトレーダーたちは自由が奪われていくような感覚を持ったのではないだろうか。 ブローカーは法律の抜け穴をつくようにオフショア子会社を設立し、ESMA管轄外で取引口座を管理することで規制を逃れようとする動きが顕著に見られている。一例では、Iron FX社が規制を受けないバミューダ口座に切り替え可能とする措置を取っている。また、CMC MarketはCMC Proというプロトレーダー向けの階層を設け、引き続きハイレバレッジを利用することができるサービスを開始している。 EU域内のブローカーが顧客流出を食い止めるための対策に苦慮する状況はしばらく続くことが予想される。


Date

作成日

2018.10.19

Update

最終更新

2022.01.27

プラナカンカン | Peranakankan

執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー

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プラナカンカン

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。

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