作成日
:2018.10.01
2021.08.31 15:22
仮想通貨のモネロ(Monero)コミュニティは、ユーザーにマルウェアやランサムウェアの脅威に対して自衛を促すための学習用サイトを立ち上げたことを発表した。
今回、モネロがこのような学習サイトを立ち上げたのは、モネロ関連の不正なマイニングやランサムウェア攻撃などによる被害が拡大する中、一般ユーザーはそれらの脅威に対する正しい知識を身につけていないという危機感が背景にある。この学習サイトでは、マルウェアの感染を防止する方法や除去する方法をユーザーに提供することを目的としている。モネロ関連のマルウェアには3タイプあり、ブラウザベースのマイニングスクリプト、システムベースのマルウェア、ランサムウェアに向けたそれぞれのソリューションをサイト上で提供している。
ユーザーのコンピューターリソースを使用しマイニングを行うブラウザーベースのマイニングスクリプトは、ユニセフが仮想通貨による募金を行うなど、仮想通貨による資金調達などにも利用されており、コンピューターリソースを使用するのはそのサイトを閲覧している時に限定される。しかし、これら合法的な利用とは異なり、ハッカーはセキュリティレベルの低いウェブサイトなどに、サイトの管理者やユーザーに知られることなくマイニングスクリプトを埋め込み、コンピューターを感染させてしまうクリプトジャッキングという攻撃を行っている。
セキュリティの研究に取り組んでいるMcAfee Labs(マカフィー ラボ)の報告によると、違法なクリプトジャッキングは年々脅威を増し、2018年の第2四半期には前期比86%増加しているとのことだ。なお、2018年現在までには昨年比459%の上昇率となっており、この上昇の大きな要因は、アメリカ国家安全保安局(NSA)から流出したソフトウェアツールを、ハッカーが悪用していることだと言われている。
これらの脅威は、ビットコイン(Bitcoin)などの他の仮想通貨も同様に悩ませていることも事実だが、特にモネロは、その特性からターゲットとなりやすいと指摘されている。モネロのマルウェア対策ワーキンググループのディレクターを務めるJustin Ehrenhofer氏は、以下のように理由を分析している。
ハッカーは、次の2つの理由からモネロを格好の攻撃対象としています。1)モネロのシステムの秘匿性が非常に高いことにより、外部の企業や警察などにマイニングによって発掘された通貨がどこに流れているのか追跡される心配がありません。2)またモネロはマイニングに、CPUとGPUフレンドリーなPoW(プルーフ・オブ・ワーク)を採用しているため、マルウェアが感染したデバイスは競争力を持ちます。これら2つの要素が、モネロが特に危険にさらされる主な原因だと考えられます。
Justin Ehrenhofer, Director of the Malware Response Workgroup of Monero - CCNより引用
クリプトジャッキングによる被害は、モネロ自体の直接的な責任ではないものの、モネロコミュニティはこの違法行為を黙認せず、あくまでも戦う姿勢を示している。そのためには、ユーザーやウェブサイト管理者などへの高度な教育が鍵となり、この学習サイトがその第一歩だと考えているようだ。
release date 2018.10.1
仮想通貨を取得する方法として、取引所や販売所などで購入する以外にも、PCなどの端末を使用して、仮想通貨の取引記録を取引台帳に追記し、その報酬として新規発行された仮想通貨を受け取るマイニングと呼ばれる方法がある。クリプトジャッキングとは、自分の意志でマイニングを行う場合と異なり、第三者によって自動的にPCなどの自分の端末でマイニングが開始されてしまうことを示す。ユーザーや管理者の許可なしにWebページにマイニングスクリプトのコードが埋め込まれ、ユーザーの意図しないうちにマイニングが始まり、PCの処理速度の大幅な低下や、過負荷による熱暴走・シャットダウンなどを引き起こす原因となる。対応策は一般的に知られていないことが多く、現在までに被害は拡大しているが、今回のモネロコミュニティの学習サイト立ち上げによって、ユーザーのリテラシー向上が期待できるだろう。
作成日
:2018.10.01
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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