作成日
:2018.09.17
2021.08.31 15:22
世界最大の仮想通貨取引所として知られているBinance(本社:Suite 603, Tower 2, Lippo Centre, 89 Queensway, Admiralty, HongKong
)のCEOであるZhao Changpeng氏は、先日シンガポールで開催されたブロックチェーン関連のイベントで、同国で法定通貨の取引テストを行っていることを明らかにした。Changpeng氏のツイッターによれば、9月18日にシンガポールにて完全招待制で法定通貨取引のベータテストがリアルタイムで行われるようである。
Changpeng氏は、この件について、同イベント内で"つい口を滑らせた"としているが、同プロジェクトに対する期待の大きさが伺える。尚、テストの詳細については明らかにされていないが、シンガポールドルでの取引が可能になることが予想される。シンガポールは、劇的な経済成長を遂げた人口500万人の都市国家で、アジアの四小龍とも称される。法人税を低く設定することで、多国籍企業の人気を集め、多くの投資を呼び込んでおり、2017年6月時点では、ニュージランドに次ぐ世界で2番目にビジネスに適した国として世界銀行から評価を受けている。
シンガポールでは仮想通貨の正式な利用が認められておらず、地元の法律事務所の見解では、AML(アンチマネーロンダリング防止)とCFT(テロ資金供与対策)の基準をどう満たすかが認可までの最大の論点となっているという。今年5月にシンガポール金融管理局は、ある企業のICO(イニシャルコインオファリング)による資金調達を中止させるほか、8つの仮想通貨取引所に対し仮想通貨を対象とするデリバティブを当局の許可なく提供することをやめるよう警告するなど、懸念を露わにしている。しかしながら、当局の思惑とは裏腹に、米国のある会計事務所が6月に行った調査によると、シンガポールはハイテク産業への強みとアジア各国へのアクセスの良さから、ブロックチェーン関連企業にとってのHub市場と称され、人気の存在となっているようだ。
シンガポールの仮想通貨ビジネスの代表例としては、東京を拠点とするメッセンジャーSNSアプリケーションのLINE株式会社が開設した仮想通貨取引所であるBitboxがあげられるだろう。Bitboxの公式サイトによると、24時間で約5,350万ドル相当もの仮想通貨が取引されているという。ほかにも5月にはTangem社が、Tangem NoteというBitcoinを活用した新製品のスマート紙幣をローンチするなど、シンガポールの仮想通貨市場は注目を集めている。
Binanceは、1日に8億1500万ドル相当の仮想通貨が取引される巨大取引所であり、リヒテンシュタイン、韓国、マルタ、ジャージー代官管轄区などにも昨年よりサービスを展開するなど、積極的な事業拡大を行っている。この度Binanceが行う法定通貨の取引テストの結果は、今後の業界が進む方向性を示唆する重要な試金石となるかもしれない。
release date 2018.9.17
世界第4位となる金融センターがあるシンガポールには、ファイナンスやフィンテックの企業が多く存在している。今年5月、シンガポールの金融庁は仮想通貨に対する規制緩和を発表しており、新たな市場開拓を進める仮想通貨取引所には既存の金融機関向けの規制を適用しないことを提案した。今後は、さらに多くの取引所や仮通通貨サービスを提供する企業がシンガポールに拠点を置くことが予想される。Binanceが世界トップクラスの取引所になった人気の理由としては「手数料が安いこと」「取引通貨が多いこと」「セキュリティー性が高いこと」が挙げられている。Binanceはもともと香港を拠点としていた取引所であったが、中国の仮想通貨決済の禁止発表や、香港での規制強化の影響から、仮想通貨に肯定的なマルタ共和国に拠点を移し活動している。最近のニュースでは、現在仮想通貨を前向きに捉えている国としてマルタ共和国とシンガポールの2ヵ国がよく取り上げられており、Binanceはマルタに拠点を置きつつ、金融業界が盛んであるシンガポールでもネットワークを駆使して活動していくなど、さらなる活躍が期待できるであろう。
作成日
:2018.09.17
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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