作成日
:2024.05.31
2024.06.15 08:51
2024年5月21日から、Mantle(マントル)で「MIP-30」に対する投票が開始されました。当記事執筆時点(2024年5月27日)でほぼ100%の賛成票が投じられており、可決が決定的となっています。
当記事では、MIP-30の提案内容や目的に加え、可決によりもたらされる影響について解説します。
画像引用:Mantle
Mantleはイーサリアム(ETH)のレイヤー2ネットワークであり、リキッドステーキングプロトコルのMantle LSPを運営しています。LSPとは、イーサリアムのリキッドステーキングができるプロトコルを指します。
通常のステーキングでは、預け入れた仮想通貨(暗号資産)がロックされますが、リキッドステーキングでは預けた仮想通貨と等価のリキッドステーキングトークンを受け取り、現金化や送金、運用などに利用できます。
多くのブロックチェーンは、異なる役割を持つブロックチェーンが階層別に独立して相互通信する「レイヤー構造」になっています。基礎的な役割を担うブロックチェーン層をレイヤー1と呼び、レイヤー1の情報処理を助ける層をレイヤー2と呼びます。
Mantleは、仮想通貨(暗号資産)プロジェクトのBitDAOが立ち上げたレイヤー2プロジェクトです。BitDAOは、シンガポール発の大手取引所Bybit(バイビット)が支援するDAO(分散型自律組織)です。これまで、DeFi(分散型金融)など数多くのプロジェクトに投資をしてきました。
2023年6月、BitDAOは正式にMantleへリブランディングを行っています。
DAOは、Decentralized Autonomous Organizationの略で、日本語で「分散型自立組織」と訳されます。つまり、中央管理者が存在しなくとも、参加者の活動によって機能する組織を指します。中央集権型の組織と比較して民主的で透明性が高いと見なされており、ブロックチェーンの普及で広く採用されています。
DeFi(ディーファイ)とは、銀行や仮想通貨(暗号資産)取引所などの金融サービスの分野でブロックチェーンを活用した、分散型金融と呼ばれる金融エコシステムです。分散型金融を意味する英語の「Decentralized Finance」の頭文字を取ってこのように呼ばれます。
画像引用:Mantle
Mantleは、イーサリアムのリキッドステーキングプロトコルであるMantle LSPを運営しています。Mantle LSPでETHをステーキングすると、mETH(Mantle Staked Ether)を受け取れます。そして、mETHをアンステーキングすることで、元のステーキングしたETHとステーキング報酬を受け取れます。
Mantle LSPのステーキング報酬は年率3.58%となっており、合計約47万ETH(約2,800億円)がステーキングされています(2024年5月27日時点)。
画像引用:Mantle
mETHは、Mantle LSPで使われるリキッドステーキングトークンです。イーサリアム(レイヤー1)とMantle(レイヤー2)の両方のブロックチェーンで利用できます。なお、リキッドステーキングトークンとは、ステーキングで預け入れた仮想通貨と同等の価値を持つトークンです。
mETHは、仮想通貨ウォレットで保管したり、DEX(分散型取引所)で売買したり、イールドファーミングで運用したりすることができます。
2024年5月21日からMantleで「MIP-30」に対する投票が始まり、可決される見込みです。
MIPとは「Mantle Improvement Proposal」の略で、MIP-30は「Mantleエコシステムを改善するための30個目の提案」という意味です。
MIP-30の提案内容は「Mantle LSPをスピンアウトし、新たなプロジェクトを発足する」というものです。現状、Mantle LSPはイーサリアムのリキッドステーキングプロトコルですが、これにリステーキングの機能が追加されます。
提案の主な内容は以下の4点です。
Mantleは、これまで運営していたMantle LSPをスピンアウトさせ、新しいプロジェクトを発足します。一般的にスピンアウトとは「企業が特定の部門を分離して新会社として独立させること」を指します。
Mantle LSPはリブランディングされ、新しいステーキングプロトコルとして生まれ変わることになります。新プロジェクトでは、既存のイーサリアムステーキングに加え、リステーキング機能が加わるとされています。
リステーキングとは、イーサリアム本体でステーキングしつつ、別のプロジェクトでも再度ステーキングする仕組みのことです。リステーキングすることで、通常のステーキング報酬よりも多くの報酬を獲得でき、資金効率を高められます。
Mantle LSPのスピンアウトプロジェクトでは、新たなガバナンストークンが発行される予定です。ガバナンストークンとは、プロジェクトの機能の追加・削除・変更や、開発方針に関する提案(投票)を行う権利を持つトークンのことです。
なお、このトークンの名称は当記事執筆時点(2024年5月27日)では明らかにされていません。
MIP-30によると、新しいガバナンストークンの分配先は以下のようになっています。
チームメンバーへ割り当てられた新トークンは、合計4年間ロックされます。最初の1年間はフルロックされ、残り3年間で徐々にロック解除されていきます。新プロジェクトの運営チームは、長期的に開発を進める意向を持っていることがわかります。
新プロジェクトの発足直後は、既存のMantleチームによって運営が行われる予定です。そこから徐々に、新プロジェクトのチームに運営権限が移行していきます。
最終的には、新ガバナンストークンのホルダーおよびDAOによって運営されるようです。
新プロジェクトでは、イーサリアムのリステーキングプロトコルを開発する予定です。Mantle LSPで利用されているmETHを、EigenLayer(アイゲンレイヤー)などを通じてリステーキングすることが可能になります。
新たに開発されるリステーキングプロトコルでは、リキッドリステーキングトークンの「cMETH(仮称)」が利用されます。mETHホルダーは、mETHをcMETHと交換することが可能です。
cMETHは、DEX(分散型取引所)で他のトークンと交換したり、各種DeFi(分散型金融)プロトコルで運用したりできます。
新プロジェクトの運転資金は、当面の間はMantleのトレジャリーから賄われる予定です。
新プロジェクトのチームは今後、ステーキングプロトコル(mETH・cMETH)の手数料収入を運転資金として活用していくようです。
Mantleは新プロジェクトのマーケティング活動として、ポイントキャンペーンを開始する予定です。
MIP-30によると、mETHホルダーや、Mantle Rewards StationでのMNTステーカーなどにポイントが付与されるようです。このポイント数に応じて、新しいガバナンストークンが配分されると考えられます。
ポイントキャンペーンの詳細は、当記事執筆時点(2024年5月27日)では明らかにされていません。
MIP-30が可決されることで、以下の影響が考えられます。
MIP-30が可決され、将来的にリステーキングプロトコルがリリースされると、Mantleへ新たなユーザー層が流入すると考えられます。
イーサリアム(ETH)のリステーキングは、EigenLayer(アイゲンレイヤー)が考案した新しい仕組みです。単体ステーキングと比較して高い報酬が得られる可能性があるため、コミュニティの間で話題となっています。
新規ユーザーの流入に伴って、これからMantleエコシステム全体へ注目が集まるかもしれません。
MIP-30が可決されると、Mantleのエコシステムが拡大すると考えられます。
Mantleはリステーキングプロトコルを開発するにあたり、新たなパートナーを募集しています。具体的には、リステーキングスマートコントラクトのプロジェクトや、レイヤー2アプリケーションなどが挙げられます。
今後、多くのプロジェクトがMantleの新プロジェクトと提携することで、エコシステムの拡大が進みそうです。
イーサリアムホルダーの間では、リステーキングは最も注目の分野の一つといっても過言ではありません。単体ステーキングと比較して構造は複雑化しますが、より資本効率の高い運用を実現できます。
MantleはMIP-30を通じて、リステーキング市場に本格参入することになります。これからリステーキングが仮想通貨(暗号資産)コミュニティの間で普及すると、Mantleの新プロジェクトへの期待も高まりそうです。
作成日
:2024.05.31
最終更新
:2024.06.15
元証券会社勤務。2017年から仮想通貨に投資し、バブルとどん底の両方を経験する。2020年からは海外スタートアップや仮想通貨関連のライターとして独立。海外移住が趣味で、カナダ・オーストラリア・アメリカ・オランダなどを転々としている。
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