作成日
:2023.12.21
2024.06.11 21:21
「マルチタイムフレーム分析は意味がない」といわれている一方で、MFT分析を取り入れた計画的なトレードで、安定して収益を得ているプロトレーダーがいるのも事実です。
この記事では、「マルチタイムフレーム分析は意味ない」といわれている理由や、なぜマルチタイムフレーム分析で勝率を高められるのか解説します。また、エントリーから損切り・利益確定までのシナリオの立て方やトレンド相場・レンジ相場における実践的な使い方も紹介します。
先に結論を述べておくと、マルチタイムフレーム(MTF)分析は優位性が高い相場環境を把握する上で、極めて有効なテクニカル分析の1つです。
しかしながら、「マルチタイムフレーム分析は意味ない」という意見も見受けられます。マルチタイムフレーム分析は意味がないといわれている主な理由として、以下の3つが挙げられます。
まずはMTF分析に関する誤解を解いておきましょう。
マルチタイムフレーム分析は、トレードの優位性を高める方法ではあるものの、数あるテクニカル分析の1つに過ぎません。特に1時間足以下の取引では、マルチタイムフレーム分析の有用性を感じにくい場合も多いです。短い時間軸で取引する個人トレーダーの多さも相まって、意味がないと評価する声が目立っているようです。
以下の様な取引手法を使用しているケースでは、マルチタイムフレーム分析の効果を実感しにくくなるでしょう。
マルチタイムフレーム分析が効果を発揮しやすい用途や場面を把握しておくことも重要です。
マルチタイムフレーム分析する意味がないチャートは、流動性が失われてレートが上下に動かなくなった銘柄に表れることが多いです。価格が複数の時間足で高値と安値を作り、トレンドやレンジを形成することではじめてマルチタイムフレーム分析が意味を成すようになります。
FXでは新興国通貨ペアのチャートに、マルチタイムフレーム分析が機能しない場面が多くみられます。トルコリラのように、政治経済情勢の行方に左右される相場では短期売買が控えられ、長期間に渡ってチャートは一方向へ進み続けます。極めて低い流動性は、各取引所から提供されるティックデータや上下に長いヒゲのローソク足となってチャートに表れます。
長期足から短期足までのチャートに動きがない場面でのマルチタイムフレーム分析には、あまり意味がないといえるでしょう。
取引がどれほど活発に行われているかを測る尺度のことです。トレーダーの注文を成立させるには、その反対の注文が出されている必要があります。流動性が高い銘柄では反対の注文が多く出されているため、トレーダーの希望価格で約定しやすいですが、流動性が低い銘柄では希望通りに約定しにくくなります。
マルチタイムフレーム分析の価値に気がついたトレーダーであっても、実践で使いこなせる方は限られます。そのため、難しいと感じて習得を諦めた方から、MTF分析は無意味と評価する声が聞かれるのも理解できます。
マルチタイムフレーム分析を諦める原因は、トレード計画を立てる難しさにあるようです。各時間足の分析が完了した後、いつまでにどの価格帯でトレードするかシナリオを立てるのは容易ではありません。その状態で損切りが連続してしまえば、MTF分析のトレード手法に疑念を抱くことが想像できます。
マルチタイムフレーム分析は、トレード初級者が簡単に使えるものではありません。一方でマルチタイムフレーム分析を駆使して、毎月安定した収益を得ているトレーダーがいるのも事実です。マルチタイムフレーム分析は意味ないと安易に評価をせず、じっくり腰を据えて使い方をマスターしていきましょう。
マルチタイムフレーム分析でトレードの勝率が高くなる理由を解説します。
MTF分析で成功しているトレーダーの相場の見方・考え方を確認していきましょう。
相場は長期足の流れに合わせて、短期・中期足が波打っているというのがマルチタイムフレーム分析の基本的な考え方です。相場原理のようなもので、機関投資家から個人までを含めた市場参加者の共通認識にもなっています。
「マルチタイムフレーム分析では長期足を優先する」というフレーズを、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。長期足が上昇トレンドであれば、中期足も上下に波打ちながら高値を追い、短期足も細かく安値切り上げ・高値更新を繰り返していきます。
スイングトレードでは、中期足の値動きが長期足と同じ方向に切り替わっていくポイントをMTF分析で予測できます。デイトレードでは短期足が上位足に対して逆行する中、レートが反転して値幅が取れる局面をMTF分析で予測するといった使い方も可能です。
長期トレンドの転換は、短期トレンドから波及します。永遠に続くトレンドはなく、いずれ必ず終わるものです。転換の際にはボラティリティが高まって、短期トレンドが長期トレンドに対して逆行する値動きが何度も見られるようになります。
マルチタイムフレーム分析により異なる時間足で取引するトレーダーのポジショニングが想像できるため、リスクリワードの高い相場環境が分かるようになります。4時間足・1時間足トレーダーの思惑を考えながら、リスクリワードの高いトレードポイントを確認しましょう。
画像引用:TradingView
四角枠は、エントリーの時間足に1時間足を用いたデイトレードのロングから利益確定までの値動きを示しています。いずれも上位足の流れに逆らうことなく、1時間足が上昇トレンドの形成を再開/加速するポイントです。
移動平均線が拡散し始めるポイントでエントリーすることで、リスクリワードの高い取引が期待できます。4時間20MA付近でのエントリーのみに限定することで、勝率とリスクリワードを高めることが可能です。
最後の四角枠ではトレンドが一旦終了する前によく起こる急伸が発生しています。このような場面では、より時間枠の短い15分足によるエントリーが適しています。
反対にリスクリワードが低い相場環境は、上位足の流れと逆行する場面(赤矢印)です。
画像引用:TradingView
上位足に反する環境では、エントリー直後に逆行するリスクが高まります。全ての時間足で同じ考え方・見方ができるので、15分足と1時間足、4時間足と日足のように、まずは2つの時間軸でMTF分析をするのが良いでしょう。
マルチタイムフレーム分析のメリットは、負けたトレードの原因もチャート上で論理的に理解できることです。損切りになる要素を1つずつ解消して、自身のトレードを改善していきましょう。
FXのマルチタイムフレーム分析では、6つの基本法則から成り立つダウ理論の内、以下の2つの法則を特に意識する必要があります。
3種類のトレンドとは長期・中期・短期のトレンドを指し、通常、長期トレンドは1年~数年間、中期トレンドは3週~3ヶ月間、短期トレンドは数時間~3週間未満に分類されています。
トレンドは2種類に分けられ、上昇トレンドは安値が切り上がり高値を更新する状態、下降トレンドは高値が切り下がり安値を更新する状態です。
そして各々のトレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続します。上昇トレンドの転換であればチャートの高値が切り下がり、安値を更新した時がトレンド終了のシグナルです。
相場では長期足の方向性が優先されますが、長期トレンドの転換は逆行する短期トレンドが波及して起こる点に留意しましょう。トレーダーの思惑の不一致が起こるポイントで、長期トレンドの転換シグナルが発生します。
順張りトレードでは長期トレンドに対する短期足の逆行が押し目・戻り目となり、短期足が再び長期トレンドの方向へ回帰する局面を狙います。
また、ダウ理論の法則の1つ「平均は全ての事象を織り込む」もデイトレードでは重要です。短期足が急変動してもその大半は中長期の流れに吸収されていきます。ダウ理論を理解しておけばノイズに惑わされることなく、マルチタイムフレーム分析をもとに計画した取引に集中できるでしょう。
用語の使い方は任意です。デイトレーダーは日足以上を長期、1時間足~日足未満を中期、1時間足未満を短期と呼ぶ傾向にあります。メディアも使い方にばらつきがあるので、文脈から判断する必要があります。
マルチタイムフレーム(MTF)分析による環境認識とは、相場の状態を「上昇トレンド・下降トレンド・レンジ・もみあい」に分けることです。
トレードシナリオを立てる前の重要なポイントを確認していきましょう。
まずは、マルチタイムフレーム分析で相場環境を見極めましょう。トレードスタイルごとに、環境認識に使う時間足とエントリーで用いる時間足を説明します。
スキャルピング
ポジション保有期間 | 環境認識で使う時間足 | エントリーで使う時間足 |
---|---|---|
数秒~数分 |
1時間足、15分足、5分足、4時間足
(節目認識用)
|
5分足、1分足、秒足
(トレンド形成加速時)
|
デイトレード
ポジション保有期間 | 環境認識で使う時間足 | エントリーで使う時間足 |
---|---|---|
数十分~24時間 |
日足、4時間足、1時間足、週足
(節目認識用)
|
1時間足、15分足、5分足
(トレンド形成加速時)
|
スイングトレード
ポジション保有期間 | 環境認識で使う時間足 | エントリーで使う時間足 |
---|---|---|
1日~数週間 |
週足、日足、4時間足、月足
(節目認識用)
|
日足、4時間足
(トレンド形成加速時)
|
スキャルピング
ポジション保有期間 | 数秒~数分 |
---|---|
環境認識で使う時間足 | 1時間足、15分足、5分足、4時間足(節目認識用) |
エントリーで使う時間足 | 5分足、1分足、秒足(トレンド形成加速時) |
デイトレード
ポジション保有期間 | 数十分~24時間 |
---|---|
環境認識で使う時間足 | 日足、4時間足、1時間足、週足(節目認識用) |
エントリーで使う時間足 | 1時間足、15分足、5分足(トレンド形成加速時) |
スイングトレード
ポジション保有期間 | 1日~数週間 |
---|---|
環境認識で使う時間足 | 週足、日足、4時間足、月足(節目認識用) |
エントリーで使う時間足 | 日足、4時間足(トレンド形成加速時) |
上表は連続性のあるチャートを作るFXやCFDなどの商品かつ、流動性が保たれる銘柄が対象です。現物株式のように、取引時間が分断されている商品のチャートでは有用性が下がるので注意しましょう。
マルチタイムフレーム分析では、トレードスタイルごとに環境認識で使う時間足の状態を明確にしていきます。
節目認識用とした時間足は、主に重要なサポート・レジスタンスラインを引いて、チャートが上下に動きやすい価格帯を定める役割があります。念のためにトレンド分析も行いますが、先入観を持たないように注意しましょう。例えばデイトレードでは、週足の下降トレンドの中で4時間足以下が大きく上昇していく状況が多々あります。
仮に週足のトレンドに合わせることをトレードの条件にしている場合、デイトレードの回数が著しく減少してしまいます。一方でチャートが節目に差し掛かると、上位足のトレーダーの注文が入っているために売買が交錯してレートが上下に大きく変動します。日足以下の上昇トレンドが崩れるため、デイトレードで狙えるトレンドは一旦終了したと考えた方が良いでしょう。
エントリーポイントを見極める際は、環境認識に使う時間足の一番短い時間足も分析に用いることでダマシを減らせるでしょう。エントリー回数とトレードオフになりますが、リスクリワードの高いトレードを絞り込めます。
ただし、収益性が下がる可能性があることや待つ時間が長くなるため、トレーダーの性格や相性も考慮した上で分析に使用する時間足を決めることが重要です。
また、トレンド相場では値動きが加速する場面があります。短期間に一気に値幅を取れる局面ではありますが、その分逆行リスクが高くなります。トレンド形成が加速する局面では値動きが速くなるため、1つ下位の時間足のチャートに変更しましょう。
トレード手法によって使用する時間足が変わることもあります。例えばスキャルピングには、日足の節目やドル円150円などのキリ番における売買攻防のプライスアクションで稼ぐ手法もあり、環境認識の段階で日足以上の水平線を重視したりもします。
スキャルピングでは、短い時間で判断を下さなければなりません。使用しているチャートの時間足が短くなるほど、短時間で先の値動きを考えながらトレードを組み立てる必要があります。1分足をメインのエントリー用チャートとして使用するのは、初心者にはやや難易度が高いといえるでしょう。
FX初心者であればスキャルピングのエントリーには5分足を使いましょう。1分足と比較した場合、単純に時間的な猶予も5倍になるので、エントリーミスやダマシに遭うリスクを減らせます。
FX初心者であればデイトレードのエントリーには1時間足を使いましょう。15分足と5分足を用いたエントリーを制限することで、リスクリワードと勝率の高さを両立した取引を厳選できます。
デイトレードに慣れてきたら1時間足をベースにしつつ、下位足と組み合わせて使いやすい時間足を検討していくと良いでしょう。15分足には1時間足に表れない売買シグナルが発生するので取引回数を増やせますが、その分ダマシに遭うリスクが高くなります。収益率の検証はもちろん、ご自身の性格・相性なども考慮して決めましょう。
トレンドの最終段階でチャートが加速する局面では、15分足から5分足への切り替えが必要です。マルチタイムフレーム分析のやり方に変更はなく、エントリーに使用する時間足のみ相場のモメンタムに合わせて変更します。つまり、1時間足における取引条件が5分足でも同じように満たされた際にトレードを執行するのです。
ダウ理論では、主要トレンドが長期・中期・短期の3種類に分けられ、明確な転換シグナルが発生するまで継続すると説明されています。
また、「長期トレンドは短期トレンドよりも優先する」ことも考慮する必要があります。それゆえ、マルチタイムフレーム分析では、長期足の方向性に合わせたトレードシナリオを立てるのが基本です。
レンジ相場であれば、長期足の節目を明確にして、長期レンジ内で中期・短期トレンドが発生していないかを分析します。
長期トレンドの終盤では中期足にもトレンドがなくなり、短期足でもみあい相場を形成してテクニカル分析が機能しなくなります。その後は、政治・経済に関する新たな材料を起爆剤とする相場展開を待つことになります。
移動平均線(MA)を使うメリットは、短期足チャートで上位足の方向性を把握できる点です。下のチャートでは、ドル円の1時間足に3本の移動平均線を表示しています。
画像引用:TradingView
ドル円の1時間足チャートに、4時間足と日足の20期間MAを表示しました。日足20MAから乖離した強い上昇モメンタムの中、4時間20MAで押し目を作りながら上昇トレンドを形成しています。
下図では、ドル円の日足と4時間足のチャートに20期間MAを表示しています。各チャートのローソク足にのみ注目すると環境認識が難しくなりますが、移動平均線を表示しておけば相場の流れを見失うこともありません。
画像引用:TradingView
MTF分析に慣れるまではプライスアクションに囚われがちですが、短期足のチャートにMAを表示して中期・長期足の流れを見える化することで、ポジポジ病の解消にも役立つでしょう。
ちなみに、短期・中期・長期の3本の移動平均線が、期間の順に並んだ状態はパーフェクトオーダーと呼ばれています。パーフェクトオーダーでは、各時間足のトレンドの方向が一致しているので順張りの優位性が非常に高くなります。
Myforexでは、パーフェクトオーダーを通知するインジケーターを提供していますのでご活用ください。
MTF(マルチタイムフレーム)分析を活用したトレード手法の勝率を高めるには、いくつかコツを押さえておく必要があります。
それぞれのコツについて解説します。
マルチタイムフレーム分析しても意味がない銘柄もあります。流動性が失われてチャートが高値・安値を作らずに一方向に進み続ける銘柄です。
先にFXの新興国通貨ペアを、マルチタイムフレーム分析しても意味ない銘柄の例として紹介しました。株式市場では、低位株や仕手株と呼ばれる時価総額の小さな企業の現物株が該当します。仮想通貨(暗号資産)にもマイナーなアルトコインや草コインなど、マルチタイムフレーム分析する意味がない銘柄が多数存在します。
MTF分析が有効な流動性の高い商品(FXとCFD)の銘柄の例は以下の通りです。
商品 | 銘柄 |
---|---|
通貨ペア | 主要ドルストレート:ドル円、ユーロドル、ポンドドル |
仮想通貨
(暗号資産)
|
時価総額10位以内:ビットコイン、イーサリアム、リップル |
株価指数 | 先進国指数:S&P500、ドイツDAX、日経225 |
各商品の時価総額や取引高の大きな銘柄であれば、流動性が確保されているためMTF分析が有効です。そのほか、貴金属のゴールドやエネルギーのWTI原油も、MTF分析が機能しやすい銘柄として挙げられます。
エントリーをダブルボトム・ダブルトップが表れた場合のみに限定することで、MTF分析によるトレードの勝率を高められます。
安値切上型のダブルボトムと高値切下型のダブルトップであれば、ネックラインを抜けた瞬間が短期足のトレンド転換のシグナルであり、中期・長期トレンドに戻っていくポイントと重なります。損切りと新規・追加注文が集中しやすく、値動きが加速するのに合わせてスキャルピングの新規注文も入ってきます。
Wボトム・Wトップのネックラインが、短期トレンドの転換点と合致した場合のみのエントリーに限定することで、勝率を高められるでしょう。
短期足に発生する強気の三角保ち合い(アセンディングトライアングル)と、弱気の三角保ち合い(ディセンディングトライアングル)もその後の値動きの方向が分かりやすいチャートパターンです。安値を切り上げる・高値を切り下げるチャートパターンに注目してみましょう。
上位足の流れの中における短期足の値動きをもとに、どれ程のモメンタムで売買されているのかを相対的に把握することも勝率アップのコツとなります。ドル円の1時間足チャートに、日足の上昇チャネルと移動平均線(20期間)を表示しました。
下位足が上位足のチャネル内で押し目を作って上昇を繰り返す環境は、順張りのデイトレードに最適です。
画像引用:TradingView
上昇チャネルの下限にダブルボトムが作られたら、リスクリワードが高いトレードシナリオを立てられます。一方で中央ラインを上抜けた価格帯からエントリーする場合、逆行するリスクが高まるため、15分足と5分足を使った短期トレードへの切り替えを検討した方が良いでしょう。
チャネルラインは短期足のチャート1枚で、現在値がトレードの優位性が高い位置にあるのかを上位足との相対的な関係の中から見える化してくれます。
マルチタイムフレーム(MTF)分析を使ったトレード計画の立て方や、エントリーから決済までの流れを、トレンド相場とレンジ相場に分けて解説します。
いずれも実践しやすいように、ドル円の日足から1時間足までのシンプルな分析に留めています。損切りのポイントも明確なので、リスク・資金管理を徹底できるでしょう。
マルチタイムフレーム分析を用いて、トレンド相場で取引する際のポイントは以下の通りです。
ドル円の日足が、過去3回抜け切れなかったレジスタンスライン138円をブレイクアウトして、上昇トレンドに移行した局面を例に解説します。下のチャートはレジサポ転換した138円から140円台乗せを試しにいく局面です。
画像引用:TradingView
上向いた20期間の移動平均線(MA)が日足の上昇モメンタムの高さを示しています。デイトレードでの利益確定の目安は、過去に売買が交錯しているキリ番の140~142円付近の価格帯です。
ドル円の4時間足は、安値を切り上げながら高値に迫る過程でアセンディングトライアングルを形成しています。チャートパターンもエントリーの根拠に加わり、ネックラインのブレイクで上昇トレンドの継続が確定したことで、140円を付けるシナリオを立てられるようになりました。
画像引用:TradingView
上向いた移動平均線(20期間)で反発したことからグランビルの法則の買いサインに該当します。高値更新とともに、4時間20MAからの乖離を大きくして上昇することが見込まれる局面です。
グランビルの法則とは、移動平均線と価格がどの程度乖離しているかを見ることで、価格推移を予測できるとした理論です。移動平均線の開発者であるジョゼフ・E・グランビル氏(1923-2013)によって考案されました。
1時間足では、時間調整の間に4時間MAとの乖離がなくなりました。レンジ相場の中に見られる上方ブレイクを試みるプライスアクションから、上値指向が健在であることがうかがえます。直近の高値更新とともに安値切上型のダブルボトムが完成しました。1時間足・4時間足MAの拡散(黄三角)を想定して、エントリー(EN)を直近高値、損切り(SL)を直近安値に設定して注文を入れておきます。
画像引用:TradingView
FX初心者にダブルボトムを使ったエントリーをおすすめする理由は、エントリー・損切りポイントを明確にでき、損失額を完全にコントロールしながら資金管理を徹底できるためです。
上昇トレンドの継続を想定しているので、損切りはその想定が崩れるポイント=ダブルボトムの安値を更新した価格に設定します。損切り注文を入れる際は、2%ルールを守ることも重要です。資金が10万円であれば2,000円以内の損失に収まるようにロット数を調整します。
なお、相場が強い上昇モメンタムにあるときは、15分足や5分足に切り替えることでエントリータイミングを計りやすくなることがあります。ただしトレードを確率論で考えるならば、一貫して同じ時間足を採用した方が適切です。取引ルールで固めることなくある程度裁量を入れるかは、実践を通じて調整するのが良いでしょう。
最後に、利益確定(TP)について確認します。キリ番の140円が日足の抵抗帯になっていることに加えて、1時間足のレンジブレイクにおける建値から下限までの値幅と重なることからも、利益を確定する目安になります。サポートライン138.00円をレンジ下限として、139.50円を最初の目安にするシナリオもあるでしょう。
この際にリスクリワード比率(利益 ÷ 損失額)2以上を目安にすることで、条件の良いトレードをある程度スクリーニングできます。
画像引用:TradingView
FX初心者は、目標価格に到達したら保有ポジションの半分を決済すると良いでしょう。その後は、エントリーに使用した時間足(今回は1時間足)で、高値を更新した際に新たに作られた安値に決済の逆指値を移していきます。
139.50円を利益確定の目安にした場合、139.50円に到達した時点で半分のポジションを利益確定して、安値割れ(TP1)で残り半分のポジションを決済します。140円まで保有すると決めた場合は、TP2で全てのポジションを閉じて終了となります。
新たに作られた安値に決済の逆指値を移す理由は、ダウ理論で上昇トレンドが転換するポイントとされているためです。今回の例では上昇トレンドの継続を想定してエントリーしているため、安値を割り込んだ時点で決済する必要があります。
2段階の利益確定の方法であれば着実に利益を確保しつつ、残りの半分のポジションでトレンドに乗り続けることができます。上昇トレンドが続かずに逆行したとしても、薄利を確保して撤退することができます。
今回のデイトレードにおけるマルチタイムフレーム分析の方法は、スキャルピングやスイングトレードのMFT分析にもそのまま適用できます。
レンジ相場におけるMTF分析では、トレンド相場とは若干違った考え方が必要です。
レンジ相場では売買が交錯しやすいため、エントリーポイントにおけるチャートパターンの形成にこだわり過ぎない方が良いでしょう。また、チャートの進捗方向にレジスタンスライン・サポートラインが多い場合は、リスクリワード比率を下げることも検討するべきです。
ドル円の日足が上昇一服を示唆する安値切り下げ(A)の後、大幅に高値を更新(B)しています。その後、日柄調整を経て移動平均線(20期間)が横向きになりました。小幅に安値を更新(C)した後に再度上昇を始めたため、レンジ下限からのロングを想定する場面です。
画像引用:TradingView
利益確定をレンジ上限の高値Bにして損切りを安値Cにした場合のリスクリワード比率は2を超えます。しかし、レンジ相場では上限までレートがスムーズに到達することは少ないため、下位足で保有ポジションの一部を決済して利益を確保していきます。
ドル円の4時間足は日足レンジ内で安値Cをつけた後に、小さな安値切り上げ高値更新によって上昇トレンドに転換しました。トレードシナリオは、上位足レンジ相場内に作られた下位足トレンド相場の順張りです。
画像引用:TradingView
レンジ相場では上限・下限あたりからポジションを建てていく方法もありますが、これらの価格帯はボラティリティが高まりやすいので、ポジションを切られてしまうリスクも高まります。
一方で、上位足レンジ内における下位足のトレンド転換が確定した環境に絞ることで、レートがレンジ上限・下限にあっても、一旦は一方向にチャートが進む優位性の高いトレードが期待できます。
下図のドル円1時間足でも上昇トレンドへの転換を確認できたところで、エントリー(EN)・損切り(SL)・利益確定(TP)を決めていきます。
FX初心者は誰もが意識する明確な高値EN1にエントリー注文を入れて、安値SL1に損切り注文を入れましょう。ロット数は、資金の2%以内に損失額が収まるように調整します。
画像引用:TradingView
1時間足のもみあい相場で高値EN2が作られました。15分足に拡大してエントリーを狙うこともできますが、上ヒゲを出したローソク足が多いためエントリーポイントを見極めるのは容易ではありません。日足に加えて1時間足以下でもレンジ相場になっているため上下に振らされやすいです。
収益率を高めるためにEN2でのエントリーは控えた方が良いでしょう。一方でEN1には新規と損切り注文が入っている上に、高値を更新した後の追加注文やモメンタムに飛び乗るスキャルピング勢力の参戦も期待できます。
EN1でエントリーする場合、損切りはSL2でも良いですが、収益率を減らしてでも着実に稼ぎたい場合はSL1がおすすめです。SL1は、この日足レンジ内における下位足上昇トレンドの起点になっているため、ここを割った時点でレンジを下方ブレイクする可能性が極めて高くなります。そのため、SL1を下回ったら必ず全ポジションを損切りしなければなりません。
一方でSL2は、下ヒゲで損切り注文が執行される可能性を拭い切れません。確実に勝つことを優先するのであれば、損切りをSL1に設定するべきでしょう。
利益確定の目安は、最初の安値切り下げと明確に安値を割ったポイントです。最初の安値切り下げ(TP1)で一部を決済し、明確な安値割れ(TP2)で残りを決済します。
インジケーターを活用すれば、効率よくマルチタイムフレーム分析を行えます。取引プラットフォームのMT4/MT5とTradingView(トレーディングビュー)で利用できる無料インジケーターを紹介しましょう。
MetaTrader4/MetaTrader5用のマルチタイムフレーム分析インジケーターを2つピックアップしました。
1つの時間足に異なる時間足の移動平均線を表示する際には、設定期間を計算する必要があります。ここでミスをすると意味ないマルチタイムフレーム分析になってしまいます。初心者の方には設定期間を計算する必要がなく、1つの設定パネルから上位足の移動平均線の表示を指定できるインジケーターを活用しましょう。
ユーロドルの1時間足チャートに、1時間足と4時間足の移動平均線(期間20)を表示しました。各々ダブルトップのネックラインをブレイクアウトした後に、移動平均線を拡散させて下降トレンドを形成していく様子を確認できます。
下位足と上位足の移動平均線が拡散するトレードポイントを見極めたい時に活用できるでしょう。
上位足インディケータ(トレンド系)
上位足インディケータ(トレンド系)は、表示している銘柄のチャート上に、チャートの時間足と同じかそれより上位の時間足のテクニカル指標の値を表示できるインディケータです。
マルチタイムフレーム分析のデメリットは、複数のチャートに水平線などを引くための時間がかかることです。ライン転記インディケーターは、チャートに描画したオブジェクトを複数のチャートに自動でコピーして表示します。
ユーロドルの1時間足にライン転記インディケーターをONにした状態でトレンドラインと水平線を引きました。
同じ部分を別のタブで表示している15分足で確認すると、水平線とトレンドラインがそのまま表示されています。このように長期足で重要なラインを引いてから、短期足でチャートの細部を分析したいときにも有効です。
MT4/MT5内で時間足ごとにタブを展開してラインを引いている方は、ライン転記インジケーターを導入することで時間を節約できるでしょう。
TradingViewのマルチタイムフレーム分析を効率化できる2つの無料インジケーターを紹介します。
マルチタイム期間チャート(MTPC)は、上位足のローソク足1本分の値幅をブロックに置き換えて短期足に表示します。MTPCは、Multi-Time Period Chartsの略称です。
画像引用:TradingView
ドル円の1時間足チャートに表示された1週間単位の3つのブロックの中に、1日単位の5つのブロックが内包されています。ボックスを用いることで、時間経過と価格変動の要素がパッと見で分かるようになります。
MTPCの特徴は、上位足のモメンタムをブロックの縦の長さで示すことです。一定期間における相場環境を横長・縦長の長方形で計れる点は、テクニカル分析に新たな発想を生み出すきっかけにもなるでしょう。
ローソク足のみのチャートでは、プライスアクションに囚われて大きな流れを見失ってしまうこともあります。MTPCを活用すれば、大局に沿ったトレードシナリオを立てやすくなるでしょう。
Bjorgum MTF MAは、短期足に3本の移動平均線を表示して、上位足のトレンドを可視化するインジケーターです。移動平均線の角度で色分けされるので、トレンドの有無を簡単に見分けられます。
画像引用:TradingView
Bjorgum MTF MAには、機能を補足するためにRSIが追加されています。RSIで相場の過熱度合いを計り、50%ラインを境にしてローソク足を色分けします。買われ過ぎ70%・売られ過ぎ30%に達するとローソク足の外枠が色付くので、相場の天井や底の判断にも有用です。
Bjorgum MTF MAを利用すれば、短期足に上位足のトレンドを表示するのと同時に、売買ポイントを見える化できるでしょう。
この記事では、マルチタイムフレーム分析が意味ないと言われる理由を解説しました。意味ないと誤解されることもあるMFT分析ですが、実際にはトレードの勝率を向上させる有効な分析手法です。
相場には、長期トレンドが短期トレンドよりも優先するという共通認識があるため、ダウ理論の法則に基づいた、長期足の方向性を優先した順張りトレードの優位性が高くなります。
マルチタイムフレーム分析を身につければ、優位性の高いトレード環境を見極めてリスクリワード比率の高いトレードシナリオを作れるようになるでしょう。マルチタイムフレーム分析で大局に沿った取引を行い、収益の安定化を目指しましょう。
作成日
:2023.12.21
最終更新
:2024.06.11
短期が中心のトレーダーや中長期が中心のトレーダー、元プロップトレーダー、インジケーターやEAの自作を行うエンジニアなどが在籍。資金を溶かした失敗や専業トレーダーに転身した経験など、実体験も踏まえてコンテンツを制作している。
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