作成日
:2023.10.03
2023.10.03 17:11
NFTのロイヤリティとは、NFTクリエイターがNFTの販売後も継続的に報酬を受け取れる仕組み、あるいは受け取る手数料そのものを指します。
OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスでは、NFTが転売されるたびにクリエイターに転売額の一部が支払われる仕組みがあります。
これは継続的な収入源として非常に魅力的で、個人・企業を問わず多くのプレイヤーがNFTコレクション運営に取り組み始めました。
一方、主要なNFTマーケットプレイスがロイヤリティに関する方針を二転三転させるなど、ロイヤリティを巡る業界の今後は不透明な部分もあります。
当記事では、NFTロイヤリティの基本的な仕組み、これまでの変遷、今後の展望などについて解説していきます。
NFTロイヤリティとは、NFT作品がNFTマーケットプレイスで取引されるたびに、その制作者に対して支払われる手数料のことです。
NFTは従来のデジタルコンテンツと異なり、マーケットプレイスで自由に転売できます。そして、作品が転売されるたびに、転売額の一定割合がクリエイターに支払われます。
イラストレーターにとって、稼ぐための新しい手段であり、注目を集めました。
従来のデジタルコンテンツ販売では、クリエイターは最初に作品を販売するタイミング(一次販売)でのみ、報酬を受け取ります。どれほど優れた作品でも、販売で報酬を得るチャンスは1回です。
収入を得るために、クリエイターは常に新しい作品を作り続ける必要があります。
しかし、NFTロイヤリティが話題になった頃から、この状況は変わり始めます。過去に販売した作品からも収入を得られるようになり、稼ぐ手段が多様化しました。
企業がクリエイターにNFT作品の制作を依頼し、事業としてNFTコレクション運営に取り組む動きも見られるようになりました。
NFTロイヤリティの仕組みについて解説します。
クリエイターが作品を最初に販売した際のやり取りは、下図のとおりです。ここでは、買い手を「購入者A」とします。
作品が1ETHで売れた場合、クリエイターは販売額の1ETHを受け取り、購入者Aは作品を受け取ります。
購入者Aが別の買い手(購入者B)に作品を転売すると、NFTロイヤリティが発生します。
上のケースでは、転売価格を2ETHにしています。株式などの場合、購入者Aの利益は、売却価格(2ETH)と購入価格(1ETH)の差額である1ETHです。
NFTの転売では、ロイヤリティとして転売価格の10%(0.2ETH)がクリエイターに支払われます。OpenSeaを利用する場合は、さらに手数料として2.5%(0.05ETH)が引かれます。
その結果、購入者Aが転売で受け取る金額は、12.5%を差し引いた残りの87.5%(1.75ETH)になります。
クリエイターとユーザーの双方にとって、NFTロイヤリティがどのようなメリット・デメリットをもたらすか解説します。
クリエイター視点のメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリットは、自分の作品から継続的に収入を得られる点です。一方、デメリットは、必ずしも継続的な収入が約束されるわけではない点です。
クリエイターにとって継続的な収入は魅力的ですが、NFTの転売が前提です。作品を保有しているユーザーから買う人がいなければ、ロイヤリティは発生しません。
この方法で稼ぐには、作品づくりと異なるスキル(マーケティングスキルなど)が求められます。
必ずしもすべてのクリエイターが稼げるわけではない点は、無視できないデメリットだと言えるでしょう。
ユーザー視点のメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリットは、ユーザーが応援するクリエイターやNFTコレクションのコミュニティが強化される点です。
これは、特定のクリエイターやNFTコレクションが好きで購入している人などに当てはまります。
利益目的であれば、ロイヤリティはデメリットです。しかし、クリエイターの支援目的で売買するユーザーもいます。支援目的ならば、ロイヤリティ発生は望ましいことです。
ロイヤリティが存在することで、ロイヤリティを払ってクリエイターを応援したい人たちがコミュニティに集まります。コミュニティの形成という点でも、ロイヤリティはメリットになります。
一方で、利益を得るためだけに転売しているユーザーにとっては、ロイヤリティはデメリットです。自身の利益が目減りするため、嫌われる傾向にあります。
ロイヤリティの仕組みは紆余曲折を経ています。2023年9月時点で、ロイヤリティの仕組み自体を撤廃するマーケットプレイスも現れ始めました。
OpenSea設立時を起点に、現在に至るまでのNFTロイヤリティの変遷について解説します。
OpenSeaは2017年12月に設立され、世界で広く利用されています。
設立当初からロイヤリティを最大10%まで設定可能で、出品するクリエイターが0%〜10%の間で任意に設定します。
長らくOpenSeaがロイヤリティの仕組みを維持してきた中、2022年7月頃からロイヤリティ0%のマーケットプレイスが現れ始めました。
これらのプラットフォームはロイヤリティが0%に近い水準に抑えられ、ユーザーはロイヤリティなしでNFTを売買できました。
その結果、利用者が増えてOpenSeaの牙城が徐々に崩れ始めました。
ロイヤリティ不要なプラットフォームの台頭を受けて、OpenSeaは2022年11月、Operator Filter(オペレーターフィルター)という仕組みを導入しました。
Operator Filterは、NFTの購入者に対して強制的にロイヤリティを支払わせるツールです。
同時に、このツールを導入したNFTコレクションは、ロイヤリティを取らないプラットフォームでの売買が不可能になりました。
つまり、ロイヤリティ支払いを避けようにも、他のプラットフォームで売買ができなくなったため、他のマーケットプレイスもおおむねロイヤリティの徴収を継続する方向で事態は落ち着きました。
しかし、一部のプラットフォームではロイヤリティの徴収を回避できる場合があったり、ロイヤリティ以外の取引手数料が0%(OpenSeaは2.5%)であったり、引き続きOpenSeaにとって厳しい環境が続きました。
2023年に入り、特に勢いづいてきたプラットフォームがBlurです。
画像引用:Blur
Blurは、プラットフォームを頻繁に利用するユーザーに対してトークンをエアドロップするキャンペーンを打ち出し、ユーザー数を爆発的に増やしました。
エアドロップとは仮想通貨の無償配布を指します。知名度向上などを目的として新規プロジェクトが実施する例が多く、仮想通貨をもらうには公式ツイッターをフォローすることなど一定の条件がつく場合もあります。
Blurもロイヤリティを徴収していますが、0.5%であり、トレーダーにとって売買しやすい環境でした。
そこにエアドロップのキャンペーンが実施されたことで、「買値より安く売ることになっても、その損失を上回るトークンが獲得できれば問題ない」という発想から、トークン獲得だけを目的としたNFTの売買が多発し、多くのNFTプロジェクトの価格は急速に下落しました。
このBlurの台頭を受け、OpenSeaも取引手数料を一時的に無料にするなど、NFTマーケットプレイス同士の競争はますます激化しました。
そして2023年8月、OpenSeaはロイヤリティを強制的に徴収するOperator Filterの廃止を発表しました。今後は、ユーザーがロイヤリティの支払い額を決めます。
ユーザーは、一般的にロイヤリティを支払いたくありません。事実上、OpenSeaもロイヤリティ0%のプラットフォームになったと言えます。
NFTロイヤリティに関する様々な変化について、ユーザーの反応をまとめます。
OpenSeaがOperator Filterを導入した頃までは、基本的に「クリエイターが稼げる環境を守ることが優先」という風潮がありました。
NFTマーケットプレイスでの転売に伴う継続収入は、創作活動をするクリエイターにとって貴重な収入源です。
OpenSeaをはじめ、各NFTマーケットプレイスはこの点を重要視し、ロイヤリティの仕組みの維持に努めました。クリエイターも、この環境の維持を希望していました。
一方、ロイヤリティ0%のマーケットプレイスが次第に力をつけてきたことも事実です。
それに伴い、ロイヤリティを払わず、自己の利益を優先したいNFTトレーダーも増えてきました。
NFTが投資対象としての性質を持っていること、および市場規模の拡大を鑑みれば、これは避けて通れない道だったと考えられます。
Blurの台頭やOpenSeaの取引手数料0%化が見られた時期は、クリエイターよりもトレーダーの声が大きくなった時期だと言えます。
その最大の要因は、Blurのエアドロップにあります。OpenSeaも、Blurに対抗するために取引手数料を0%にせざるを得ませんでした。
この状況に対して、国内外のNFTコレクション運営者からは反発の声もありました。ロイヤリティ収入は、NFTコレクションの運営者にとって重要な収入源だったためです。
しかし、この時期はトレーダー側の発言力が圧倒的に大きく、多くのマーケットプレイスは取引手数料やロイヤリティを徐々に引き下げました。
そして、OpenSeaがOperator Filterを廃止したことで、業界としての方向性がおおむね定まってきました。
ロイヤリティ徴収の余地は残しつつも、ロイヤリティの設定はユーザー側に委ねられています。そして、彼らの多くはロイヤリティを支払おうとはしないでしょう。
ロイヤリティが0%に近い環境でのNFT売買が、ほぼ固まってきたと言えそうです。
この流れに対して、NFTコレクション運営者からは落胆の声もありました。しかし、これまでのロイヤリティ関連の変化を受け、多くのクリエイターやコレクション運営者は新たな道をすでに模索し始めています。
最後に、今後のNFTロイヤリティの展望について考察します。
主に以下の2つの方向性で、NFTが普及すると考えられます。
この双方について策を講じている国内NFTプロジェクトとして、「Crypto Ninja Partners(CNP)」があります。CNPは日本トップクラスのNFTコレクションとして、海外でもその名が知られています。
画像引用:OpenSea
ロイヤリティ収入が見込めなくなりつつある今、クリエイターやNFTコレクション運営者が最も意識しなければならないのは、ロイヤリティに依存しない収益方法の模索です。
この点について、CNPのマーケターであるイケハヤ氏は自身のツイートで以下のように述べています。
ぼくが関わっているCNPやLLACについても、すでにロイヤルティ以外の収益で稼ぐモデルに転換しています。
具体的には、
・アニメ制作 ( #クリプトニンジャ咲耶 )
・スマホゲーム( #バニウォ )
・LINEスタンプ販売
・グッズ販売
・アパレル販売
・コワーキングスペースの運営( #LLACハウス )
などなど......NFT以外の「普通のビジネス(あえてこう表現してます)」の売上を作り始めています。
イケハヤ氏のポスト - より引用
またイケハヤ氏は、CNPはいまやNFTの域を超えて「IPビジネスとして展開している」とも述べています。
ロイヤリティ収益に依存しているNFTプロジェクトにとって、CNPの多様な事業展開から学べることは多いでしょう。
ロイヤリティを取れるNFTマーケットプレイスを作る動きもあります。下は、CNPファウンダーのroad氏のツイートです。
変化が大きすぎるので、CNPで開発している独自マケプレ「Xinobi(シノビ)」をみんなで使えるようにすることも検討中。
興味あるクリエイターさん、プロジェクトは、
#Xinoばせろ
で。
road氏のポスト - より引用
独自マーケットプレイス「Xinobi」は、当初はCNPを売買できるマーケットプレイスとして構想が練られていました。
しかし、ロイヤリティが取れないマーケットプレイスが次第に増える中、「CNPと近い距離にあるNFTコレクションは、Xinobiで一緒に取り扱ってもよいのではないか」という発想が生まれ、それが上記のroad氏の発言に繋がっています。
今後、ロイヤリティ収入が見込めなくなったクリエイターやNFTコレクション運営者は、Xinobiのような「ロイヤリティが取れるマーケットプレイス」を利用することで、引き続きロイヤリティ収入を確保するかもしれません。
世界的な流れとして、「ロイヤリティは支払わない」という風潮が強まっている印象は否めません。
しかし、ロイヤリティを支払うか否かはユーザーの判断に委ねられており、何らかの理由で支払った方が得策な場合には、支払うでしょう。
また、特定のクリエイターやNFTプロジェクトを応援している方は、各プロジェクトの独自マーケットプレイスなどを使うことで、自分が支払ったロイヤリティが直接的にプロジェクトの支援に繋がっている実感も持てるでしょう。
今後はますます、NFTロイヤリティの支払いに関する判断がユーザーに委ねられる時代になっていくかもしれません。
作成日
:2023.10.03
最終更新
:2023.10.03
2017年に初めてビットコインを購入し、2020年より仮想通貨投資を本格的に開始。国内外のメディアやSNSなどを中心に、日々最新情報を追っている。ビットコインへの投資をメインにしつつ、DeFiを使って資産運用中。
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