作成日
:2022.08.08
2023.03.16 15:30
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)と日本暗号資産取引業協会(JVCEA)は、2022年8月3日付で「2023年度 税制改正要望」を金融庁に提出しました。
これまで、日本国内の仮想通貨(暗号資産)コミュニティでは、高すぎる税金が不満の種となっていました。今回、両団体が共同で要望書を提出したことで、仮想通貨に関する税制が遂に改善されるとの期待が高まっています。
Twitter(ツイッター)上でも、この業界の動きが話題となっており、関連記事が拡散されています。
日本では、金融庁等が中心となって仮想通貨の税制が整備されました。しかし、仮想通貨が普及するにつれて、その内容が適切でないとの見解が強まっています。具体的には、以下の3点が挙げられています。
仮想通貨売買で得た利益は、雑所得に分類されます。雑所得は他の所得と合わせて総合課税の対象となっており、課税所得額に応じて税率が変化する累進課税となっています。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得を指します。例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得などです。
所得税の税率は、以下の通りです。所得金額がおよそ4,500万円を超えると、最大45%の所得税がかかります。加えて、住民税は一律10%ですから、合計で税率は最大55%になります。
所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万超~330万以下 | 10% | 97,500円 |
330万超~695万以下 | 20% | 427,500円 |
695万超~900万以下 | 23% | 636,000円 |
900万超~1,800万以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万超~4,000万以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万超 | 45% | 4,796,000円 |
所得金額:195万円以下
所得税率 | 控除額 |
5% | 0円 |
所得金額:195万超~330万以下
所得税率 | 控除額 |
10% | 97,500円 |
所得金額:330万超~695万以下
所得税率 | 控除額 |
20% | 427,500円 |
所得金額:695万超~900万以下
所得税率 | 控除額 |
23% | 636,000円 |
所得金額:900万超~1,800万以下
所得税率 | 控除額 |
33% | 1,536,000円 |
所得金額:1,800万超~4,000万以下
所得税率 | 控除額 |
40% | 2,796,000円 |
所得金額:4,000万超
所得税率 | 控除額 |
45% | 4,796,000円 |
また、雑所得は特別控除がない、赤字の繰越ができない、株式等の譲渡損益等と損益通算できないという特徴を持っています。その他にも、仮想通貨は相続の際に時価で課税されるだけでなく、納税のための売却益にも課税されることから、相続税と所得税で高い税金を負担しなければならないケースもあり得る仕組みになっています。
税率が一律20%の株式やFXと比べると、仮想通貨は税負担が足枷となっています。
日本では、仮想通貨にかかる税金が膨大な額になる可能性があります。
一方、海外では軒並み低い税率が適用されます。例えば、アメリカやイギリスでは、例外があるものの20%の税率が採用されています。フランスやドイツなどでも、日本ほど高額になることはありません。その他、ドバイなどでは、無税となる場合もあります。
キャピタルゲインとは、価格変動で得た利益を指します。それにかかる税金を、キャピタルゲイン税と呼びます。
このような状況から、日本国内の税制は厳しすぎるという声があがっています。
企業が保有する仮想通貨に関しては、期末の評価額に基づいて課税されます。
例えば、スタートアップ企業が日本で起業してトークンを新規発行する場合、売上は小さくて手許現金は少額でも、自社発行のトークンを持っているため多額の税金を課される可能性があります。すると、事業は順調なのに税金を支払えずに事業が破綻する可能性があります。
これでは、日本で仮想通貨ビジネスを展開するのは難しく、産業の成長を妨げてしまいます。
このような背景から、仮想通貨やブロックチェーン界隈のスタートアップ企業は、税制で優遇されているシンガポールなどに拠点を移しています。日本人の開発チームを主とする海外プロジェクトには、Astar Network(ASTR)やInsureDAOなどがあります。
これらの問題を解決するために、日本暗号資産ビジネス協会と日本暗号資産取引業協会は、税制改正要望の中で主に3つの要望を出しています。
分離課税は、他の所得と分離して税金を計算する課税方式です。この方式は、株やFXなどで採用されています。
具体的に要望の中では、20%の申告分離課税とすることや、損失を3年間繰り越して控除することなどが提案されています。現物の仮想通貨だけでなく、仮想通貨デリバティブに関しても同様に要望しています。
仮想通貨デリバティブは、仮想通貨を対象にした先物やオプションを指します。レバレッジをかけた仮想通貨取引や、売りポジションの構築が可能です。国内の取引所でも、広く利用されています。
法人税としては、期末時価評価課税の範囲を限定することが提案されています。具体的には、短期売買目的以外のものを対象から除外することを求めています。少なくとも、自社発行のトークンに関しては、対象から除外するべきだと論じられています。
この法人税の改正が実現すると、企業の仮想通貨保有や、トークンセールによる資金調達が容易になると考えられます。
資産税に関しては、相続財産評価についての見直しが要望されています。
この要望が通ると、仮想通貨を取得費加算の特例の対象とするだけでなく、株式と同様に、相続日の最終価格、または、その月から過去3カ月の平均時価のいずれか安い方で計算できるようになります。
取得費加算の特例とは、相続等によって得た資産を一定期間内に売却する場合、譲渡益にかかる税金を軽減する措置です。
これまで、各方面から税制改正要望の声が上がっていましたが、実現には至らず、足踏みする状況が続いていました。しかし、仮想通貨が本格的に普及していることも後押しとなり、税制改正の機運が高まっています。
日本でもWeb3.0やNFTなどがバズワードとなって、影響力を増しています。結果的に様々な企業が、同技術や関連する取り組みに着手し始めています。
Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
例えば、ZOZO創業者の前澤友作氏は、「MZ Web3ファンド」を立ち上げています。このファンドの投資対象は、Web3.0関連領域の企業、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を活用したサービス等の企業です。
画像引用:MZ Web3ファンド
その他、日本国内に根付くアニメや漫画、音楽などの豊富なコンテンツを活かしたNFT関連の動きも活発になっています。大手企業がNFTマーケットプレイスを次々と立ち上げていることもあり、国内のNFT市場は拡大の一途を辿っています。
この流れを後押しするように、日本暗号資産ビジネス協会のNFT部会やNFTビジネス協会なども立ち上げられています。日本でもWeb3.0やNFTの取り組みが拡大することで、税制改正への可能性も高まっていくと考えられます。
自民党は、メタバース内で街頭演説を行なったり、政治への関心を集めるために「岸田トークン」を発行したりと、仮想通貨や関連技術の活用に好意的な姿勢を示しています。
岸田トークンとは、岸田文雄総理大臣の顔写真付きNFTです。集会への出席証明や記念品としての活用が想定されており、譲渡や売却ができない仕様になっています。2022年5月、岸田トークンはインターネットミーム化して、仮想通貨コミュニティ内で大きな話題となりました。
自民党は、Web3.0を推進する政策を掲げています。加えて、自民党NFT特別担当に平将明議員を指名して、ブロックチェーンやトークンエコノミー、NFT、メタバースなどの発展の後押しを検討している模様です。
その一環として、仮想通貨やNFTへの課税に関する議論も進められています。2022年に入ってから、税制改正の具体案が提案されています。
日本暗号資産ビジネス協会の税制検討部会長を務める斎藤岳氏は、仮想通貨に消極的な日本がグローバルで立ち遅れているとの考えを示しています。その上で、仮想通貨やWeb3.0が新しいインフラになり得ることから、国家戦略として後押しすることが重要だと言及しています。
日本の仮想通貨市場において、税制が高いハードルとなっていることは間違いありません。日本暗号資産ビジネス協会と日本暗号資産取引業協会は、2023年までの税制改正を目標に掲げています。果たして、変化を起こすことはできるでしょうか。
個人投資家にとっても大きな影響があるだけに、今後もこれらの業界団体や政府の動きには注目です。
作成日
:2022.08.08
最終更新
:2023.03.16
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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