作成日
:2022.05.31
2024.03.10 05:58
2022年5月、自由民主党青年局が「岸田トークン」と呼ばれるNFTを配布しました。トークン取得用のQRコード漏洩などで、悪い意味でも注目を集める結果となったものの、自民党による仮想通貨(暗号資産)関連技術の活用は話題となっています。Twitter(ツイッター)では、キーワード「岸田トークン」がトレンド入りしました。
この岸田トークンが話題になったことにちなみ、日本円のことを「岸田コイン」と揶揄する声も広がっています。チャートを見てみますと、2022年1月1日は115円台だったドル円の価格が、10月14日時点では148円台まで上昇しております。この急激なドル高円安の流れを、価格変動が激しい仮想通貨と結び付けているようです。
「岸田コイン」というワードの広まりにも影響した岸田トークンですが、本来どのようなものなのでしょうか。当記事では、岸田トークンやトークン配布によって期待できる効果について解説します。
岸田トークンとは、岸田文雄総理大臣の顔写真付きのNFTです。その他にも、小泉進次郎代議士や、野田聖子大臣などのNFTも発行しています。これらのNFTは、譲渡や売却ができない仕様であり、集会への出席証明や記念品としての活用が想定されています。
塩崎彰久青年局次長は、「NFTを使って今後会議の出席や意思決定、投票の場にも活用できるかもしれない。まずはNFTに慣れてもらうことで、エンゲージメントの仕方を模索していきたい」とコメントしており、様々な活用方法も視野に入れています。
一般に配布されたものではないため公式画像などは出回っていませんが、小倉まさのぶ代議士のツイートでイメージ画像が公開されていました。
画像引用:小倉まさのぶ代議士のツイート
また、自民党は、2022年6月5日に「メタバース演説会」の実施を計画しています。このメタバース演説会には、河野太郎代議士等の登壇が予定されており、コロナ禍における環境の変化への対応や、若い世代の支持獲得の狙いがあると考えられます。
メタバースとは、インターネット上に構築された三次元の仮想空間を指します。仮想通貨業界では、このメタバースを利用したプロジェクトが次々と誕生しています。
ブロックチェーン分野では諸外国が先手を取っており、そして優秀な人材が海外に流出しています。これを受けて、2022年4月、自民党のプロジェクトチームは、大枠となる国家戦略を制定すべきだと提言しました。具体的には、Web3.0担当大臣の任命や、経済政策の策定です。岸田総理もWeb3.0に言及するなど、政府・自民党はブロックチェーン分野を発展させる方針です。
このような流れの一環として、自民党はNFTやメタバースの活用に踏み切りました。日本は、アニメや漫画、アイドル、音楽、スポーツなどのコンテンツが豊富です。NFT市場で強みを発揮し、Web3.0時代の到来で他国をリードする可能性があります。
Web3.0とは、分権化された次世代のインターネット環境を指します。現代の中央集権型インターネット環境(Web2.0)は、大手IT企業が強い影響力を持っています。その一方、Web3.0では個々のユーザーが重要な役割を担います。
このような自民党の動きに対して、日本国内では主要なメディアがこぞって報道しています。岸田トークンは仮想通貨コミュニティ内で大きな話題となっており、良くも悪くもインターネットミーム化して流行しつつあります。
OpenSeaなどの大手NFTマーケットプレイスにパロディ作品や偽物が出品されているのに加え、岸田トークンに関するツイートが大量に投稿されています。
Twitter(ツイッター)上では、仮想通貨市場の発展を期待する声もあるものの、トークンを入手できるQRコードを誤って公開してしまった自民党のITリテラシーの低さやコンプライアンスが問題視されている模様です。
岸田トークン発行に際し、塩崎青年局次長は、ツイッターで会合の様子などを投稿していました。ところが、投稿画像にトークンのQRコードが映り込んでいました。本来、岸田トークンなど自民党のNFTは、集会の参加者のみに特典として配布される予定でした。しかし、誰でもQRコードを読み込める結果となり、アドレスを割り出してNFTを自由に発行可能となってしまいました。
リテラシーの低さを批判するのは簡単なものの、一般の人々は仮想通貨を使い込んでおらず、同様の問題が色々な所で起きているでしょう。今回のQRコード公開は、仮想通貨の取り扱いの難しさを政治家が体験する機会になった可能性があります。
一般ユーザーをいかに保護するかを検討する際、今回の事例が役に立つかもしれません。
岸田トークンなどのNFTは、ポリゴン(MATIC)ブロックチェーン上で発行されています。NFTは完全自主開発ではなく、ブロックチェーン企業「IndieSquare」のサービス「HAZAMA BASE」を採用しています。そして、MATICは日本国内で未上場であり、運営企業が岸田トークンに使用したMATICの出所を遡ると海外取引所のBinance(バイナンス)に行き着きます。
Binanceは日本の金融庁に登録しておらず、日本居住者を対象とした営業が禁止されています。また、無登録業者として金融庁から警告を受けています。このため、仮想通貨コミュニティでは、自民党が金融庁の規制に違反しているとの批判が出ています。IndieSquareはこの批判に対し、以下の3点の趣旨を公開し、違法性がないこと、倫理的にも問題がないことを示しています。
なお、仮想通貨取引所がドバイの金融ライセンスを取得する流れが加速しており、Binanceもドバイのライセンスを保有しています。
今回配布されたNFTには金銭的価値がなく、参加賞のような意味合いしかありません。しかし、短期的にも中長期的にも、複数の影響を期待できます。例として、下の2点を紹介します。
岸田トークンの報道やリリースでは、譲渡や売却ができない仕様であると明記されています。その理由は書かれていませんが、税制が大きく影響していると推測できます。
仮に自由に譲渡可能になる場合、このトークンに価格がつく可能性があります。すると、自民党は期末時点のトークン保有額に対して課税されます。しかし、ビットコインのような流動性を期待できないため、岸田トークンを売却して納税原資を得るのは困難でしょう。また、納税のために岸田トークンを売るのは、政治的影響を考慮すると難しいかもしれません。
すなわち、この問題を回避するには「譲渡不可、換金不可」が必要です。岸田トークンは使い道が限られてしまい、利用価値がほとんどありません。
この問題は、一般の事業会社にも当てはまります。日本で起業すると、期末の納税額が膨大になって破産する可能性があります。ブロックチェーン分野で有名な日本発の企業には、トークン「DEP」の発行会社「Digital Entertainment Asset Pte.Ltd.」や、「ASTR」の発行会社「Astar Network」があります。ところが、本拠地は日本でなくシンガポールです。日本で起業すると、トークンを発行して保有するだけで税金を課せられてしまい、破産する可能性があるからです。
有能な人材が海外に逃げ、その分だけ日本の発展が失われ、さらには雇用も失われ、税金は海外に納められます。岸田トークン発行を検討するにあたり、自民党はこの問題を明確に認識したと期待できます。
税制に関して、国民民主党の玉木雄一郎代表が「仮想通貨は課税を雑所得ではなく20%の申告分離課税にする」、「発行法人が保有するトークンは、期末時価評価の対象から除外し、実際に収益が発生した時点で課税する方式に見直す」べきだと発言しており、岸田総理も賛同しています。与野党で足並みが揃えば、比較的早期の税制改正を期待できます。
次に、仮想通貨への関心の高まりを期待できる点です。
仮想通貨、そしてブロックチェーンは日々発展しており、各国の政府や中央銀行を巻き込んだ大きなトレンドになっています。しかし、投機の対象に過ぎないという認識も一般的に存在するでしょう。また、政治に関心はあるが仮想通貨には無関心な層も一定数存在するでしょう。
そのような層も、岸田トークン発行を受けて、多少は関心を持ってくれる可能性があります。日本の第一党が政党活動でトークンを利用する、その行動自体に影響力があります。
岸田総理はWeb3.0の推進を支持しており、今年(2022年)6月に策定される経済財政運営の指針「骨太の方針」にも、Web3.0の環境整備が明記される見込みです。政府・自民党が積極的にブロックチェーンを利用することにより、日本の産業界全体への波及効果を期待できます。
作成日
:2022.05.31
最終更新
:2024.03.10
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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