作成日
:2021.08.02
2022.04.20 12:28
バヌアツは、金融ディーラーライセンス(Financial Dealers Licensing)【以下、FDLと称す】法を改正し、デジタル資産関連の新たな規制枠組みを導入した。
改正されたFDL法は、2021年7月22日に告示された。その中で、デジタル資産は権利や価値を表すと共に、ブロックチェーンなどの分散台帳技術(Distributed Ledger Technology, DLT)を基にして電子的に保存する無形の資産であると定義づけている。また、バヌアツ金融サービス委員会(Vanuatu Financial Services Commission, VFSC)が付与するFDLを保有する国内外の事業者は、デジタル資産関連の投資サービス提供やセカンダリーマーケット(流通市場)での取引、保管などを行えるようになった。デジタル資産は、仮想通貨(暗号資産)を含め、全ての投資商品やデリバティブに対応して用いることができるという。ライセンシー12社が加盟する自主規制機関であるバヌアツ金融市場協会(Financial Markets Association of Vanuatu, FMAV)の会長を務めるマーティン・セイント・ヒレアー氏は、デジタル資産関連の取引需要の爆発的な拡大に対応すべく、適切な規制フレームワークを待ち望んでいたバヌアツの金融ディーラーにとって、FDL法の改正は吉報であると言及している。
また、今回の法改正では金融犯罪に立ち向かうために投資家保護も強化されている。2019年にバヌアツはリテールブローカー向け新規制策を導入しているが、FDL法の下でデジタル資産を取引する企業の経営者は、1年の内で最低6ヶ月以上は同国に滞在するか、金融ライセンスを保有する経営者を雇い入れることが求められている。また、国内外の金融ディーラーはバヌアツで事務所を設立する必要があるという。ヒレアー氏は、FDL法の改正を通じ、金融市場での新たな成長機会の獲得と徹底した消費者保護という2つのポジティブな対策が講じられている他、金融犯罪に対してゼロ寛容な姿勢をとることでサステナブルな成長を期待できると言及している。
バヌアツは、仮想通貨を始めとするデジタル資産関連の規制スキーム整備及びサポート体制の構築を着実に進めている状況だ。今回のFDL法改正に関しては、分散台帳タスクフォース(Distributed Ledger Task Force, DLTF)とバヌアツ準備銀行(Reserve Bank of Vanuatu)【以下、RBVと称す】、バヌアツ商工会議所(Vanuatu Chamber of Commerce and Industry, VCCI)、バヌアツ金融情報部門(Vanuatu Financial Intelligence Unit, VFIU)などが協働したという。また、これらの組織はデジタル資産業界の更なる発展をサポートする新たな法律の作成に取り組んでおり、2021年後半に公表する見通しとなっている。加えて、2020年には非政府組織(Non-Governmental Organization, NGO)のOxfamが、サイクロン「ハロルド(Harold)」の影響を受けたバヌアツ住民を対象に、必需品の購入に利用できるデジタルトークンを付与するUnBlocked Cashプロジェクトを実施した。ブロックチェーンを基にしたデジタル通貨のベネフィットや安全性を示した同プロジェクトは、これまでデジタル資産を違法と見なしていたRBVよりサポートを受けている。
バヌアツはFDL法を改正してデジタル資産関連の新たな規制枠組みを導入することで、デジタル市場の更なる発展に繋がることに今後も期待したい。
release date 2021.08.02
出典元:
ニュースコメント
信頼性を高めるバヌアツの金融ライセンス
バヌアツ当局が健全な金融市場の形成を図るべく、2019年の規制強化に続き、今回新たにデジタル資産関連の規制枠組みを導入したことで、オフショアライセンスの中でも同国の金融ライセンスの信頼性が高まっていると言える。このような中、2021年7月時点で、バヌアツのFDLを取得する企業は125社に上る。有力海外FXブローカーの中では、最狭水準のスプレッドと高い約定力を提供するTitan FX(タイタン FX)や、ベストFXブローカー賞を受賞したFBSグループ傘下にて、日本居住者向けにサービスを提供するMitsui Markets Ltd.などがVFSCの規制下にある。Titan FXに関しては、FMAVにも加盟している他、バヌアツのコミュニティとの共生に向け、バヌアツパラリンピック委員会(VPC)に寄付するなど、企業の社会的責任(CSR)活動にも積極的だ。Titan FXの仮想通貨関連の取り組みに目を転じると、直近でTitan FXは6種類の仮想通貨CFDを追加するなど、仮想通貨関連の商品ラインナップを拡充しており、相対的に優れたトレーディング環境を構築している。一方、FBS(エフビーエス)は現状、仮想通貨取引サービスを提供していない状況だ。バヌアツの仮想通貨規制スキームの整備が進む中、FDLを取得するこれらの海外FXブローカーが、更なる顧客基盤の拡大に向けて如何なるソリューションを打ち出すか今後も注目したい。
作成日
:2021.08.02
最終更新
:2022.04.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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