作成日
:2021.07.19
2021.07.19 15:57
米商品先物取引委員会(CFTC)は7月16日、13日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションが約19%増
円は対ドルで5万6,250枚の売り越し(ネットショート)であった。ネットポジションは先週比で12,886枚の大幅増加となる。IMMポジション集計後の14日と15日に、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長による議会証言を控えていることから、ポジション調整の動きが出た模様だ。尚、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは18週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比プラス27.9%、売り建玉(円ショート)はマイナス4.0%となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 31,625 | 40,440 | 27.9% |
---|---|---|---|
ショート | 100,761 | 96,690 | -4.0% |
ネット | -69,136 | -56,250 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
31,625 | 40,440 | 27.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
100,761 | 96,690 | -4.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-69,136 | -56,250 | - |
12日の週のドル円相場は、米主要株価指数が過去最高値を更新する展開となった他、米6月消費者物価指数(CPI)が13年ぶりの高い伸びを示したことにより、ドル買い円売り圧力が高まった。また、2021年の米連邦公開市場委員会(FOMC)で投票権を持つサンフランシスコ地区連銀のデイリー総裁によるタカ派的な発言も買い材料視され、14日にドル円は週間高値となる110円71銭まで上昇した。しかしながら、その後はハト派的な内容となったパウエル議長の議会証言を受け、米10年債利回りが1.29%まで急低下したことにより、15日には週間安値となる109円71銭まで下落した。もっとも、週末16日には注目度の高い米6月小売売上高が市場予想を上回ったことがドル買いに繋がり、110円10銭近辺まで値を戻して取引を終えた。
ユーロ、ネットポジションが約23%減
ユーロは対ドルで5万9,713枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では17,477枚の大幅減少となっており、足元の数週間でネットポジションの減少傾向が鮮明となっている状況だ。尚、欧州中央銀行(ECB)が6月の理事会で現行の大規模金融緩和策の維持を決定した他、7月8日には、よりハト派的な内容の物価目標を示したことにより、緩和策の長期化が意識されている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比マイナス0.1%、売り建玉(ショート)はプラス12.8%となった。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 212,998 | 212,851 | -0.1% |
---|---|---|---|
ショート | 135,808 | 153,138 | 12.8% |
ネット | 77,190 | 59,713 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
212,998 | 212,851 | -0.1% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
135,808 | 153,138 | 12.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
77,190 | 59,713 | - |
12日の週の週央にかけて、ECBのラガルド総裁やデギンドス副総裁を始め、複数の欧州当局者によるハト派的な発言を受けたユーロ売りに加え、米インフレ懸念に伴うドル高圧力が高まった。また、欧州で新型コロナウイルス(COVID-19)のデルタ株感染拡大への懸念が広がっていることもユーロ売りを誘った。これらの悪材料を受け、14日にユーロは対ドルで約3ヶ月ぶりの安値水準となる1.1771ドルまで下落した。しかしながら、その後はFRBのパウエル議長による議会証言を受け、米国の金融緩和策が長期化するとの見方が強まったことがユーロ買い・ドル売りに繋がり、週末16日に1.1806ドルまで値を持ち直した。
ポンド、ネットポジションが約64%減
ポンドは対ドルで7,969枚の買い越し(ネットロング)となった。ネットポジションは先週比で17,934枚の大幅減少となる。英中銀が早期の金融緩和縮小に対して慎重な立場を示していることが、ネットポジションの減少に繋がっている模様だ。ネットロングポジションは、2021年1月末以来の水準まで減少している。但し、2020年12月初旬にネットロングに転じて以来、ポンドの買い越しは32週間続いている状況だ。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)がマイナス21.9%、売り建玉(ショート)はプラス3.9%となった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 57,232 | 44,686 | -21.9% |
---|---|---|---|
ショート | 35,329 | 36,717 | 3.9% |
ネット | 21,903 | 7,969 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
57,232 | 44,686 | -21.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
35,329 | 36,717 | 3.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
21,903 | 7,969 | - |
世界的な株高に伴うリスク選好姿勢が強まったことがポンド買いに繋がり、12の週初早々に、ポンドドルは週間高値となる1.3910ドルまで上昇した。その後は、14日に発表された英6月消費者物価指数(CPI)が2年10ヶ月ぶりの高水準となった他、英中銀のソーンダース政策委員によるタカ派的な発言などを受け、ポンドは一時上昇する場面が見られたが、買いの勢いは長続きしなかった。英国ではデルタ株の感染が拡大しており、景気回復に遅れが生じるとの懸念が広がっていることが、ポンドの重しになっている模様だ。週末16日、ポンドは対ドルで1.3763ドルまで値を下げて取引を終えている。
円とニュージーランドドル以外でネットポジションが減少
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、円とニュージーランドドルを除き、ネットポジションが減少した。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 53,352 | 56,721 | 6.3% |
---|---|---|---|---|
ショート | 78,222 | 85,509 | 9.3% | |
ネット | -24,870 | -28,788 | - | |
CHF | ロング | 19,230 | 18,074 | -6.0% |
ショート | 9,068 | 10,937 | 20.6% | |
ネット | 10,162 | 7,137 | - | |
CAD | ロング | 69,923 | 63,107 | -9.7% |
ショート | 28,745 | 36,731 | 27.8% | |
ネット | 41,178 | 26,376 | - | |
NZD | ロング | 19,412 | 20,627 | 6.3% |
ショート | 17,651 | 17,397 | -1.4% | |
ネット | 1,761 | 3,230 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
53,352 | 56,721 | 6.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
78,222 | 85,509 | 9.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-24,870 | -28,788 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
19,230 | 18,074 | -6.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
9,068 | 10,937 | 20.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
10,162 | 7,137 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
69,923 | 63,107 | -9.7% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
28,745 | 36,731 | 27.8% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
41,178 | 26,376 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
19,412 | 20,627 | 6.3% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
17,651 | 17,397 | -1.4% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
1,761 | 3,230 | - |
release date 2021.07.19
FRBのパウエル議長は14日と15日、米上下院での金融政策判断に関する証言に臨んだ。物価安定と最大雇用という目標の達成には程遠く、インフレ上昇は一時的との見方を改めて示したことが、米10年債利回りの低下とドルの下落に繋がった。また、金融緩和縮小に向け早まって行動するのは誤りだと語り、拙速な引き締めに慎重な姿勢を示すと共に、テーパリングを開始する前に市場と十分に対話を重ねると主張した。2013年5月、FRBのバーナンキ元議長が市場の想定よりも早期に量的金融緩和の縮小を示唆したことで、長期金利の急騰や新興国からの資金流出による通貨安などが生じた。パウエル議長としては、このようなテーパータントラムによる金融市場の混乱を回避すべく、市場と慎重に対話していく姿勢を堅持しているように見える。もっとも、15日には最もハト派色が強いと見られているセントルイス連銀のブラード総裁が、テーパリングの開始を求めるなど、FOMCメンバーからはタカ派的な発言が相次いでいる。また、14日に公表された地区連銀報告(ベージュブック)では、5月下旬から7月上旬にかけて米経済は景気回復が加速する一方、物価は平均を上回るペースで上昇したという。ベージュブックは7月27日、28日に開催されるFOMCの検討材料となる。また、8月26日から28日には、ジャクソンホール会議が開催される予定であり、今後もパウエル議長の一挙手一投足に市場の注目が集まりそうだ。
作成日
:2021.07.19
最終更新
:2021.07.19
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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