作成日
:2021.05.31
2021.06.08 11:53
米商品先物取引委員会(CFTC)は28日、25日火曜日時点の建玉報告を公表した。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)通貨先物市場における投機筋の通貨別ポジションは下記の通り。円、ネットポジションに大幅な変動なし
円は対ドルで5万156枚の売り越し(ネットショート)であった。先週比では792枚の増加となる。IMMポジション集計後の週末28日に、米国で重要な経済指標の発表を控えていることから、ポジションを大きく傾ける動きとはならなかった模様だ。また、3月16日時点で約1年ぶりに円ショートに転じて以降、円の売り越しは11週間続いている。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC JPY投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(円ロング)が前週比マイナス3.2%、売り建玉(円ショート)はマイナス2.1%となった。ロング・ショートポジション共に売り優勢となった。
【円ポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 24,965 | 24,163 | -3.2% |
---|---|---|---|
ショート | 75,913 | 74,319 | -2.1% |
ネット | -50,948 | -50,156 | - |
【円ポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
24,965 | 24,163 | -3.2% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
75,913 | 74,319 | -2.1% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-50,948 | -50,156 | - |
週初24日から25日にかけて、米10年債利回りが5月初旬以来となる1.560%まで低下したことを手掛かりに、円買い・ドル売りの展開となった。25日にドル円は108円56銭まで弱含んでいる。しかしながら、その後は米連邦準備制度理事会(FRB)のクオールズ副議長によるテーパリング議論開始に関する発言や、米4月個人消費支出(PCE)デフレーターが市場予想を上回る伸びを示したことなどを受け、28日にドル円は一時110円20銭と、ほぼ1ヶ月半ぶりの円安・ドル高水準をつけた。但し、心理的節目の110円を突破したことを受けた利益確定注文に加え、翌週31日は米国市場が休場となることから、ポジション調整の円買いも入った模様であり、109円84銭近辺で取引を終えている。
ユーロ、引き続きネットロングが増加基調
ユーロは対ドルで10万4,000枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では4,142枚の増加となる。ネットロングポジションは、2020年8月下旬の約21万枚をピークに縮小傾向にあったが、2021年4月中旬以降、反転して増加基調にある。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC EUR投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス1.6%、売り建玉(ショート)はマイナス0.3%となり、ロングポジションが増加する一方、ショートポジションは減少した。
【ユーロポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 232,330 | 236,103 | 1.6% |
---|---|---|---|
ショート | 132,472 | 132,103 | -0.3% |
ネット | 99,858 | 104,000 | - |
【ユーロポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
232,330 | 236,103 | 1.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
132,472 | 132,103 | -0.3% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
99,858 | 104,000 | - |
欧州では新型コロナウイルス(COVID-19)対策が進捗し、ユーロに対する投資家心理が改善している。また、25日に発表されたドイツIfo企業景況感指数が市場予想を上回る良好な結果となったことなどを受け、25日にユーロは対ドルで約4ヶ月半ぶりの高値となる1.2266ドルまで急伸した。しかしながら、その後は欧州中央銀行(ECB)のパネッタ専務理事が金融緩和の縮小を否定したことにより、早期のテーパリング観測が後退した他、ロンドンフィキシングに絡むドル買いフローが出たことなどを受け、28日に週間安値となる1.2132ドルまで売られる場面が見られた。
ポンド、ネットポジションが約23%急増
ポンドは対ドルで3万659枚の買い越し(ネットロング)となった。先週比では5,759枚の大幅な増加となる。尚、年初来でネットポジションが最も積みあがったのは、3月2日時点の36,082枚となる。
画像引用:MQL5経済指標カレンダーのCFTC GBP投機筋ポジション
建玉別の増減率を見ると、買い建玉(ロング)が前週比プラス1.9%、売り建玉(ショート)はマイナス12.0%となった。ショートポジションが大幅に縮小したことから、ネットポジションの急増に繋がった。
【ポンドポジション】
建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
ロング | 63,027 | 64,193 | 1.9% |
---|---|---|---|
ショート | 38,127 | 33,534 | -12.0% |
ネット | 24,900 | 30,659 | - |
【ポンドポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
63,027 | 64,193 | 1.9% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
38,127 | 33,534 | -12.0% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
24,900 | 30,659 | - |
英国のワクチン接種進展に伴う景気回復期待を受けたポンド買いは、足元で一服している模様だ。また、イングランド銀行(BoE)のベイリー総裁とカンリフ副総裁がインフレ圧力は一時的なものであるとの認識を示したことが、市場の重しとなった。一方、同銀行金融政策委員会(MPC)のブリハ委員は27日、労働市場の回復が予想以上に早まれば、2022年に利上げを行う可能性があると言及した。これを受け、ポンドは対ドルで1.4218ドルまで急騰する場面が見られた。
豪ドルとカナダドル以外でネットポジション増加
円(JPY)、ユーロ(EUR)、ポンド(GBP)、豪ドル(AUD)、スイスフラン(CHF)、カナダドル(CAD)、NZドル(NZD)の7通貨では、資源国通貨されるカナダドルと豪ドルを除く5通貨でネットポジションが増加した。その他の通貨のポジションは下記の通り。
【その他通貨ポジション】
通貨 | 建玉 | 先週 | 今週 | 増加率 |
AUD | ロング | 57,862 | 55,098 | -4.8% |
---|---|---|---|---|
ショート | 54,860 | 55,907 | 1.9% | |
ネット | 3,002 | -809 | - | |
CHF | ロング | 11,115 | 12,223 | 10.0% |
ショート | 15,380 | 13,426 | -12.7% | |
ネット | -4,265 | -1,203 | - | |
CAD | ロング | 82,026 | 84,183 | 2.6% |
ショート | 35,914 | 39,372 | 9.6% | |
ネット | 46,112 | 44,811 | - | |
NZD | ロング | 23,624 | 24,446 | 3.5% |
ショート | 15,174 | 15,861 | 4.5% | |
ネット | 8,450 | 8,585 | - |
【AUDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
57,862 | 55,098 | -4.8% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
54,860 | 55,907 | 1.9% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
3,002 | -809 | - |
【CHFポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
11,115 | 12,223 | 10.0% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
15,380 | 13,426 | -12.7% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
-4,265 | -1,203 | - |
【CADポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
82,026 | 84,183 | 2.6% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
35,914 | 39,372 | 9.6% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
46,112 | 44,811 | - |
【NZDポジション】
ロング | ||
---|---|---|
先週 | 今週 | 増加率 |
23,624 | 24,446 | 3.5% |
ショート | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
15,174 | 15,861 | 4.5% |
ネット | ||
先週 | 今週 | 増加率 |
8,450 | 8,585 | - |
release date 2021.05.31
IMMポジション集計後の26日、ニュージーランド準備銀行が2022年9月末までの利上げを示唆すると共に、景気の先行きに対する自信を示した。これを受け、ニュージーランドドルは対ドルで一時0.7315ドルまで急伸し、約3ヶ月ぶりの高値水準をつけた。ニュージーランドは新型コロナウイルス対策が進捗しており、足元で消費や雇用などが堅調に推移している。既に利上げを示唆したカナダやニュージーランド以外にも、世界の主要各国で景況感の改善が続いている状況だ。24日の週も、各国で景気回復を示す複数の経済指標が発表されている。例えば、欧州をリードするドイツの5月Ifo企業景況感指数は、2019年5月以来の高水準となり、ユーロ買いに繋がっている。米国では25日に発表されたケース・シラー住宅価格指数が、約15年ぶりの大幅な上昇となった。今後もこれらの国々で景況感の改善を示す指標が続く場合、FX取引の面でも景気回復が進む国の通貨を選好する動きが強まりそうだ。
作成日
:2021.05.31
最終更新
:2021.06.08
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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