作成日
:2021.04.21
2022.04.20 12:27
ドイツ最大の銀行であるドイツ銀行が、ロンドンにある新興国通貨を対象としたFX取引エンジンをシンガポールに置き換えた。
アジア市場で高頻度取引(HFT)が活況を呈し、注文執行時間の重要性が高まる中、ドイツ銀行は同市場での執行の質を改善すべく、シンガポールに取引エンジンを設置する決断を下した。また、足元で中国人民元(CNH)取引が急増しており、同行は拡大する需要の取り込みを図る方針だ。ドイツ銀行の債券・為替部門ヘッドを務めるDavid Lynne氏は、アジアの主要なリクイディティハブとなるシンガポールにおいて、同行を含む多くの金融機関が執行スピードの向上を図る取引エンジンの開発を進めており、同国はアジア各国へのプライシングの伝送速度で東京を上回っていると指摘している。また、ドイツ銀行は中国外国為替取引システム(China Foreign Exchange Trade System, CFETS)データへのアクセスを求めるアルゴリズム機能を強化しており、今後もアルゴリズムを活用した取引サービスの提供が拡大すると見込んでいる。
国際決済銀行(Bank of International Settlements)【以下、BISと称す】によると、人民元の平均日次取引高(ADV)は約2,840億ドルに上るという。シンガポールを含むグローバルFXハブが、世界のFX取引高の4%ほどを占める人民元取引需要の取り込みを競っている状況だ。中でも、SGXはCDBのオンショア債券を上場し、人民元建て債券取引サービスを拡充している他、最新の取引データにおいて、米ドル/人民元(USD/CNH)の先物取引高が急増していることを明らかにしている。また、海外FXブローカーの間では、Titan FX(タイタン FX)が人民元/日本円(CNH/JPY)の取り扱いを開始している。
対人民元通貨ペアを始めとするアジア市場の拡大が見込まれる中、ドイツ銀行は域内のFXハブとなるシンガポールに執行の質改善に繋がる取引エンジンを設置したことで、更なる顧客取引の拡大が期待できそうだ。
release date 2021.04.21
出典元:
ニュースコメント
シンガポールを選好するグローバル金融機関
BISによると、1日に6.6兆ドルの取引高を計上するFX市場において、シンガポールは米国と英国に次ぐ市場規模を誇るという。取引高が急増する人民元を含むアジア市場の発展が見込まれる中、多くの海外FXブローカーのカバー先となるドイツ銀行を始めとする大手金融機関が、アジアの中でもシンガポールを選好している。例えば、JPモルガンチェースがシンガポールでFX取引エンジンをリリースした他、BNYメロンがMASとFX取引エンジンを開発する意向を示している。こうした背景には、金融市場の高付加価値化を通じて国際競争力の強化を目指すシンガポールと、アジアの中でも一大金融センターを形成する同国を拠点として業容拡大を図るグローバル金融機関双方の意向の合致があると推察される。世界を代表する金融機関が集結するシンガポールにおいて、FX市場の発展に寄与する革新的なソリューションが生み出されることに今後も期待したい。
作成日
:2021.04.21
最終更新
:2022.04.20
国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒。
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