作成日
:2021.04.06
2022.04.20 12:27
タイの中央銀行であるタイ銀行(Bank of Thailand, BoT)のVachira Arromdee副総裁が、2022年第2四半期に中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】のテストを実施する計画があることを明らかにした。
今回、Arromdee副総裁はタイ銀行の試みが国内の金融システムに影響を与えないことを強調し、今後3年から5年でリテール型CBDCの導入を実現する計画だと説明した。既にタイ銀行は「タイのリテール型CBDCの今後の方向性(The Way Forward for Retail Central Bank Digital Currency in Thailand)」と題する論文を発表しており、2021年6月15日までそれに対するフィードバックを求めているという。タイ銀行はCBDCが物理的な紙幣を代替する、オンラインおよびオフラインの両方で利用可能なデジタル通貨だと定義すると同時に、リテール型CBDCが様々な金融サービスで利用される可能性があると主張している。
タイ銀行のSethaput Suthiwartnarueput総裁はリテール型CBDCに関して次のようにコメントした。
リテール型CBDCは、国民がアクセス性や信頼性が高い安全な仮想通貨(暗号資産)の恩恵を受けるための価値ある手段になると信じています。また、リテール型CBDCは安全な決済インフラの基礎を築き、金融イノベーションを促進する相互運用性および民間との協力体制を構築する礎となるでしょう。
Sethaput Suthiwartnarueput, The Governor of BoT - The Way Forward for Retail Central Bank Digital Currency in Thailand - より引用
タイ銀行はステーブルコインを規制する法案を起草するなど、CBDC導入に向けて本格的に動き出しているが、同行はこれを成功に導くことができるのか、今後もタイ国内での動向を見守っていきたい。
release date 2021.04.06
出典元:
ニュースコメント
CBDC開発で先行するアジア地域
今年に入ってから中国政府は蘇州市でデジタル人民元のテストを継続して行うなど、CBDC発行に向けてその準備を着々と進めている。この中国政府の動きは世界各国に波及しており、特にアジア地域ではタイや香港、アラブ首長国連邦(UAE)が中国人民銀行(People's Bank of China, PBoC)と協力して中央銀行デジタル通貨ブリッジ(m-CBDC)と呼ばれるプロジェクトを立ち上げている。その他、民間では人気メッセージングアプリを運用するLINEがCBDC開発向けブロックチェーンプラットフォームを開発し、アジア地域の主要国にソリューション展開を試みているようだ。一方、スウェーデンでイークローナに対する懸念が高まるなど、欧米諸国はCBDC開発で後手に回っている印象があるが、どのような行動に出るのか、今後も各国の取り組みに注目していきたい。
作成日
:2021.04.06
最終更新
:2022.04.20
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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