作成日
:2020.10.29
2021.08.31 15:31
大手投資銀行のJPMorgan Chase & Co.【以下、JPモルガンチェースと称す】は、既に同行のクライアント企業が独自ステーブルコインであるJPMコイン(JPM Coin)による送金および決済サービスを利用し始めていることを明らかにした。
昨年6月、JPモルガンチェースがJPMコインのトライアル実施を検討していることが伝えられたが、ホールセール決済のグローバル責任者であるTakis Georgakopoulos氏によると、同行は今週から同仮想通貨を大手ハイテク企業の国際決済に利用する見通しだという。今の所、JPMコインはコンプライアンスチェックを受けたクライアント企業のみ利用可能となっているものの、このようなソリューションが普及すれば、金融業界は年間数億ドルの費用を節約することが可能だ。特にJPモルガンチェースは100カ国以上で毎日6兆ドルもの資金を移動しているため、取引の高速化やコスト削減などの恩恵を大いに享受することができる。
加えて、JPモルガンチェースはOnyxと呼ばれるブロックチェーン関連のビジネスユニットを新しく立ち上げ、100人以上の人員を投入しているようだ。これに関してGeorgakopoulos氏は、ブロックチェーン技術が研究開発の段階から商業化のフェーズに移行しつつあると言及し、JPモルガンチェースがこのイノベーションを牽引していく意向であることを示した。
その他にもJPモルガンチェースは、送金前に支払いを検証するブロックチェーンベースのサービスであるInterbank Information Network(IIN)を新たにLiinkという名称でローンチすることを予定している。また、JPモルガンチェースは金融機関による財務データの追跡を可能にするQuorumをリリースするなど、仮想通貨関連プロジェクトを拡大させているが、どのような成果を上げるのか、今後も同行の取り組みに注目していきたい。
release date 2020.10.29
JPモルガンチェースは早くから仮想通貨の可能性に目をつけ、JPMコインの開発を推進してきたが、最近では競合他社がこれを追従する形で同様のイニシアチブを立ち上げ始めているようだ。特に最大の競合であるゴールドマンサックスは独自仮想通貨の開発に向けた人員強化の計画を今年8月に発表しており、JPMコインと同様の仮想通貨発行を検討しているという。その他には米国の大手商業銀行であるウェルズ・ファーゴが独自仮想通貨のテスト実施を計画するなど、米ドルに価値を裏付けされたステーブルコインを用いた決済ソリューションの構築を試みていることが明らかになっている。今回、JPモルガンチェースがJPMコインの実用化に踏み切ったことは業界にとっても重要なターニングポイントとなり得るが、これが既存の銀行サービスにどのような変化をもたらすのか、今後も主要金融機関の動向を見守っていきたい。
作成日
:2020.10.29
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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