作成日
:2020.08.06
2021.08.31 15:32
毎年6月から10月に梅雨が到来する中国では、水力発電による電力コスト低下に伴ってビットコイン(Bitcoin)マイニングが最盛期を迎えるが、今年に限っては多くのマイニング事業者が収益性の低下に苦しんでいるようだ。
現在、中国はビットコインネットワークにおける65%のハッシュパワーを生み出すマイニング大国となっているが、同仮想通貨の半減期を境に収益を確保することが困難な状況に陥っているという。特にビットコイン価格の上昇を見越したマイニング事業者は、中国南西部に新しい設備を建設しており、設備投資を回収することに苦難を強いられているようだ。大手マイニングプールのF2Poolでグローバルビジネスディレクターを務めるThomas Heller氏は、中国のマイニング事業者が新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で大きな打撃を受けている事実に触れ、今年後半に向けて競争力を高める必要があると言及した。
一方、中国を代表するマイニングプールであるPoolinのCEOを務めるKevin Pan氏は、ビットコインの半減期後、マイニング難易度が昨年7月と比較して2倍近く上がっているのに対し、同価格があまり上昇しなかったことが収益性の低下につながっていると指摘した。Pan氏によると、このままビットコイン価格に大幅な変動がなければ、マイニング事業者の収益は昨年から70%減少することになるという。実際にビットコインのマイニング報酬は、2019年7月時点で1TH/s(テラハッシュ/秒)あたり約0.33ドルだったものの、今は1TH/sあたり約0.1ドルにまで低下している。
昨年から中国ではマイニング事業者が乱立し、今年4月にはハッシュパワーが供給過多となっており、国内のホスティングビジネスも買い手市場で使用電力などの割引を用いて集客を行なっているという。このような背景から四川省および雲南省のマイニング事業者は、今年の梅雨の間、2割から3割が稼働せずに、長期的に事業を継続するために体力を温存すると予想されている。通常、マイニング事業者が投資を回収するには半年から1年を要すると言われているが、ビットコイン価格が1万1,000ドルから変動しない場合、その期間は2年にまで長期化する可能性がある。
このような状況にも関わらず、一部のマイニング事業者は強気な動きに出ており、新しいサービスを展開しているようだ。例えば、マイニングプールのBTC.Topを創設したJiang Zhuo氏は、B.topと呼ばれる共同マイニング契約を開始し、クライアントが初期投資を回収するまでホスティング料および管理費を請求しない新しい料金体系のサービスを提供している。また、BabelのCEOであるFlex Yang氏はパートナー企業であるHashAgeまたはHeng Jiaのホスティングサービスを利用するクライアントに対し、最大5,000万ドル相当のテザー(Tether)をローンとして割り当てることを約束した。
昨年末、四川省の地方自治体は過剰な電力を必要とする事業者向けのデモゾーンを設け、安価かつ安定した電力供給を行うことの見返りに、企業に利益の一部を譲渡するよう求めている。これにより中小規模のマイニング事業者は利益率が低下する可能性があり、存続が危ぶまれる事態に直面しているようだ。その他、中国では激しい豪雨で複数の都市が水害に見舞われるなど、経済全体のマイナスとなるような出来事が発生しているが、国内のマイニング事業者はこの苦難を乗り越えることができるのか、今後もその動向を見守っていきたい。
release date 2020.08.06
これまでマイニング業界では中国企業が大きなシェアを占めていたが、世界情勢の変化や新型コロナウイルスの影響でその勢力図が徐々に変わりつつあるようだ。実際に大手仮想通貨取引所のバイナンスはロシアおよび中央アジアのマイニングリソースを統合するなど、新しい市場の開拓を試みる動きを見せている。また、競合のHuobiもロシア法人を設立し、マイニング関連のプロジェクトを推進している。一方で中国では、中国人民銀行(People's Bank of China, PBoC)が中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)発行に注力しており、政府当局がそれ以外の仮想通貨に対する規制を強めている状況だ。昨年、中国政府がマイニング事業の禁止を検討していることが報道されたが、マイニング業界はどのように変移していくのか、今後もその展開に注目していきたい。
作成日
:2020.08.06
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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