作成日
:2020.04.22
2021.08.31 15:32
貧困問題解決を試みる非営利団体のHeifer International(本社:1 World Avenue, Little Rock, AR 72202, USA
)【以下、Heiferと称す】は、Facebook(フェイスブック)のリブラ(Libra)を運営するLibra Associationに加盟することを発表した。発表によると、Heiferは金融包摂の拡大に貢献することを念頭に、Libra Associationへの加盟を決定しており、同協会と共に金融サービスに革新をもたらすシステムの構築を目指すという。Heiferは農業従事者の収入を増加させることをひとつの目標としているが、現状では農家に対する適切な金利水準でのローンサービスが世界的に不足しており、持続可能な事業モデルを確立することが困難になっているようだ。Libra Associationには当初28社のメンバー企業が加盟していたものの、ペイパルがLibra Associationからの脱退を表明したのに続き、Visa(ビザ)、Mastercard(マスターカード)、eBay(イーベイ)、Vodafone(ボーダフォン)、Stripe(ストライプ)などの主要8社が離脱している。最近、Libra AssociationはHeiferに加え、ShopifyおよびTagomiなどの企業を新しく組織に取り込んでおり、現時点でのメンバー企業数を23社にまで増加させた。
先日、Facebookはリブラのホワイトペーパーを更新したが、米下院の金融サービス委員会(House Financial Services Committee)に所属するSylvia Garcia議員から、議会の懸念事項を改善できていないことを指摘されている。昨年10月、FacebookのCEOであるザッカーバーグ氏は公聴会でリブラに関して証言しており、Libra Associationの独立性が担保できなければ、同社が協会から脱退すると発言していた。しかしながらFacebookはホワイトペーパーの中で、リブラ発行の前段階として米ドルやユーロ、英ポンド、シンガポールドルなどの法定通貨を裏付けとするステーブルコインを新しくローンチすることを起案しただけに終わった。最終的にリブラはこれらのステーブルコインを裏付けに発行される予定だが、Garcia議員はFacebookが議会の要求を無視したと見なし、同仮想通貨の規制法案を推し進める意向であることを示した。
既にFacebookはリブラ専用の仮想通貨ウォレットであるカリブラ(Calibra)の開発に着手しており、その中核となるアイルランドのオフィスにはエンジニアやセキュリティ開発者、政策専門家、マーケティングおよび営業担当者を含む約60のチームが存在するという。Facebookはこのアイルランドのオフィスで50人を新規雇用し、コンプライアンスや人事、カスタマーサポートなどを含めた組織の体制強化を行うことを計画しているが、同社はリブラのローンチを実現することができるのか、今後もその動向を見守っていきたい。
release date 2020.04.22
昨年6月、Facebookがリブラのプロジェクトを公に発表して以来、仮想通貨市場では中央銀行発行の独自デジタル通貨(Central Bank Digital Currency, CBDC)を始めとする世界的なステーブルコインの開発が加速している。しかしながら日本政府がリブラに関するワーキンググループを立ち上げるなど、先進諸国はこのような仮想通貨が普及することに不安を覚えているようだ。そんな中、中国政府は仮想通貨市場での覇権を握るべく、リブラに対抗する形でデジタル人民元の研究開発を推し進めており、蘇州市や深セン市などの都市圏でパイロットプログラムを実施しているという。中国人民銀行(People's Bank of China)のある関係者は、デジタル人民元がインフレを引き起こすことはないと断言し、これが中国経済の奥の手となり得ることをほのめかしているが、各国政府はどのような対応を見せるのか、今後も仮想通貨市場の動きに注目していきたい。
作成日
:2020.04.22
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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