作成日
:2020.04.21
2021.08.31 15:33
シンガポール内国歳入庁(Inland Revenue Authority of Singapore)【以下、IRASと称す】は、仮想通貨の税務に関するガイドラインを発行し、エアドロップなどで無料配布される仮想通貨に課税しない方針であることを明らかにした。
今月17日に発行された新しいガイドラインの中でIRASは、ペイメントトークンおよびユーティリティトークン、セキュリティトークンを定義し、消費者や企業、ICO主催者向けにそれぞれの仮想通貨に対する税の考え方を説明している。IRASによると、ビットコイン(Bitcoin)などのペイメントトークンは無形資産として認識されており、これらの仮想通貨を利用して商品やサービスを購入することは物々交換に該当するという。従ってペイメントトークンでの取引は商品やサービス自体が法定通貨基準で課税されることになるが、その価格が仮想通貨基準で設定されている場合は評価額を自己決定しなければならない。例外的にIRASはエアドロップやハードフォークを通じて配布されるペイメントトークンを所得税の対象外としたものの、企業や個人はコインベースやBinanceなどが提示する合理的かつ検証可能な為替レートを用いて同タイプの仮想通貨による収入を法定通貨基準で算出する必要がある。
一方、IRASはユーティリティトークンが商品やサービスとの交換などに用いられるプリペイド型の仮想通貨だと定義付けており、課税対象となるような取引に利用される可能性が低いとの見解を示している。また、IRASはセキュリティトークンに関して、仮想通貨が収益資産としての特徴を持つ場合にのみ、既存の証券と同様の税制が適応されることを明示した。つまりシンガポール国内ではセキュリティトークンにかかるキャピタルゲイン税およびインカムゲイン税が基本的に免除されることになる。セキュリティトークンによるICO(イニシャルコインオファリング)も同様に取り扱われるが、ユーティリティトークンおよびペイメントトークンによるICOは課税対象となり得るという。しかしながら、このような例は一般的ではないため、実際にはケースバイケースの対応になるようだ。
今回、IRASが仮想通貨関連の税制を明確にしたことは、世界中から多額の投資が流入するシンガポールの仮想通貨業界を後押しする可能性がある。現在、仮想通貨市場は新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けているが、シンガポールではMASが為替介入実績データの前倒し公表や仮想通貨取引所向けの救済措置を実施するなど積極的な動きを見せているだけに、今後も国内市場の継続的な発展が期待できると言えるだろう。
release date 2020.04.21
仮想通貨が普及して以来、多くの機関投資家や個人トレーダーが仮想通貨取引を通じて利益を上げているが、それに伴って世界各国で仮想通貨関連の脱税事件が増加しているようだ。実際に仮想通貨大国として知られる日本では、2019年までに少なくとも50人と30社で合計100億円の申告漏れが発生したことを日本仮想通貨交換業協会(Japan Virtual Currency Exchange Association, JVCEA)が発表している。このような現状に対して、例えば韓国政府は仮想通貨取引による利益に20%の課税を検討しており、各国政府はIRASと同様に仮想通貨の税制を明確化することで納税を促している。しかし一方で、対象者の意識を変えるためにはある程度の時間が必要だと言えるだろう。米国では大手情報サービス企業のトムソン・ロイターが仮想通貨向けの税務ツールを提供するなど、納税プロセスを簡略化するソリューションが普及しつつあるが、これがどのような効果を発揮するのか、今後も世界各国での動きに注目していきたい。
作成日
:2020.04.21
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
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