作成日
:2020.01.24
2021.08.31 15:29
ドイツ取引所グループ傘下にて欧州最大の証券決済機関であるClearstream(本社:42 Avenue JF Kennedy L-1855 Luxembourg Luxembourg
)【以下、クリアストリームと称す】は1月21日、投資ファンドサービスにおける関係強化を図るべく、スイス・チューリッヒを拠点とする世界有数の投資銀行であるUBS(本社:Bahnhofstr. 45, P. O. Box, CH-8098 Zurich )と長期パートナーシップ契約を締結したことを発表した。パートナー契約の締結に伴い、両社はチューリッヒを拠点とし、管理資産残高(Asset Under Administration, AuA)が230億ドルに達するファンドディストリビューション会社のFondcenter AG【以下、Fondcenter】を買収する意向だ。クリアストリームが3億8,900万スイスフランを投じて同社株式の51%を取得し、UBSが41%の株式を保持する見通しである。買収手続きは2020年の下半期に完了する予定で、クリアストリームがFondcenterを完全統合することになるが、UBSと協働してファンドディストリビューションサービスを提供していくという。
クリアストリームは、Fondcenterの買収及びUBSとのパートナー契約を通じ、B2Bのファンドサービス事業の拡大を模索している。また、クリアストリームは、同社が買収したSwisscanto Funds Centreのブランド名をクリアストリームFund Deskへと刷新した。ドイツ取引所グループの一員としてFondcenterがクリアストリームFund Deskを補完することで、ファンドディストリビューションサービスの強化が見込まれている模様だ。尚、同取引所は、向こう数年間にわたり、Fondcenterの売上高が2桁成長を遂げると予想している。
両社の提携に際し、ドイツ取引所のCEOであるTheodor Weimer氏、同取引所の執行役員兼クリアストリームの会長であるStephan Leithner氏、UBSのCEOを務めるSergio P. Ermotti氏は、それぞれ以下のようにコメントしている。
過半数に当たるFondcenter株の取得、及びUBSとの長期パートナー契約の締結は、信頼の置ける顧客関係の構築に寄与するほか、我が社が策定した成長戦略プランであるロードマップ2020の実現に向け大きく前進したと考えております。
Theodor Weimer, CEO of Deutsche Börse AG - Clearstreamより引用
Fondcenterの買収やUBSとの提携強化は、我が社のファンドサービス分野におけるプレゼンスの拡大に大きく寄与すると見ております。これらの買収や提携により、我々の投資ファンドディストリビューションサービスを補完し、より広範にファンド運用会社をカバーできるようになります。アセットマネージャーにとっては、UBS GWMプレミアディストリビューションネットワークにダイレクトにアクセスが可能となるほか、我が社のネットワークを活用することもできます。我々は、両社のファンドディストリビューション事業を統合し、シナジーを大いに発揮することが可能になると見込んでおります。
Stephan Leithner, Member of the Executive Board of Deutsche Börse AG and Chairman of Clearstream - Clearstreamより引用
我々は、長年にわたりクリアストリーム、及びドイツ取引所グループと強固な関係性を構築していくことを喜ばしく思っております。今回のパートナー契約を通じて、我が社のお客様により包括的なサービスを提供すると共に、株主の皆様に多大な価値を創出できると考えております。
Sergio P. Ermotti, CEO UBS Group AG - Clearstreamより引用
クリアストリームは、UBSとの関係を強化すると共に、Fondcenterを買収しディストリビューションサービスの充実を図ることで、更なる顧客取引の拡大が期待できそうだ。
release date 2020.01.24
2018年5月末、ドイツ取引所は欧州を代表する金融市場インフラ提供業者として、地位の強化を目的とした成長戦略プランであるロードマップ2020を策定した。同プランには、オーガニック(既存の経営資源を利用して成長を実現すること)な成長、M&A(企業の買収・合併)、新テクノロジーへの投資という、3つの戦略的注力分野が設けられているほか、年率5%以上の純営業収益増加などの目標も打ち立てられている。プランの公表から1年半後の2019年12月、ドイツ取引所は、ロードマップ2020に基づく経営が順調に進んでいるとコメントしており、更なる成長拡大が期待できそうだ。プランで定めた目標の達成を図るべく、ドイツ取引所グループ傘下のクリアストリームはアイルランドに新オフィスを開設したほか、クリアストリームはAusmaqを買収するなど、ファンドビジネスの拡大に伴い、積極的に業容拡大を図っている。また、ドイツ取引所傘下のXetraに医療用大麻ETFを上場させ、取引サービスの強化も行っている。同社がロードマップ2020を基に事業を運営し、投資家にとってより快適な取引環境が整備されることを期待したい。
作成日
:2020.01.24
最終更新
:2021.08.31
米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。
大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。
金融ライターとして独立後は、暗号資産およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。
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